化生たちの街
キミは、ばつの悪そうな顔をして
「頼まれごとには弱いのよ」
と、ため息をついた。
「断ろうとは思うのだけれど」
もしかすると、ボクらは似たもの
同士なのかもしれなかった。
そもそもの出会いからそうだった
と、ボクは思い返す。
あの日、すれ違うはずのないボク
らはすれ違い、互いの瞳を覗きこ
んだ。
運命だったのかもしれなかった。
……偶然のなせる業なのかもしれ
ないことに、そんな意味を乗せる
のは、無意味なのは知っている。
ボクは幻視る。
キミは幻聴く。
得意な事は、まったく違っていて
なのに、同じように内に抱える物
が確かにあった。
「しょうがねえな」
……ボクは精一杯の悪態をつく。
「ごめんね」
キミは、寂しそうに笑う。
「行くぜ」
陰陽の理想的な組み合わせなのだ
と、アイツは冷たい微笑みを浮か
べて言うと銀色の猫の頭を撫でた。
視る者と聴く者
「希有な組み合わせですね」
……ほうっておいてくれ、と今な
ら言うだろう。
だけど
「お前に頼まれると、断れねえよ」
ボクは重そうなヘッドフォンをつ
けたまま申し訳なさそうにしてい
るキミを促し、二股に分かれた尾
を揺らした。
狩りだ。
#陰陽の理
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