12/25「それでも夜は明ける」

〇観たもの「それでも夜は明ける」

●リンク:(Prime video)

●概要

1840年代、奴隷法が残る時代で、黒人バイオリン奏者である主人公は卑劣な拉致誘拐から奴隷へと身分を落とされる。そして12年もの間、白人主義の差別と虐待の下、人ならざる所有物として扱われ続けた。彼が生きた日々の苦悩と、奴隷法時代に生きた人々の生々しさを描く。

●感想(ネタばれあり)

印象的だったのは多くを語らず、農園の豊かな自然を背景に、主人公の佇まいを長尺で描くシーン。実時間にして1分を越えようかというほどの静寂のシーンは、作中時間経過が明示される描写がないながら、12年という時間の途方の無さを伝えていた。

裸体、傷跡、性的虐待が映画の中央に描かれ続けており、主体として奴隷法への反対ではなく、奴隷法のむごさを伝え続けている。だからこそ、物語上救いを与えた立ち位置にいる白人旅人の言葉も、どこか軽薄さが伴っていた。彼はずっと安全な場所にいたのだ。彼自身その自戒はあったが。

主人公の救いも、「元々自由黒人であったから」に終始するところが、作品としての誠実さを感じた。作中主人公に並んで仕打ちのむごさが描かれたパッツィーは救われない。奴隷法のあった時代に生きた、自由証明書のない黒人の救いは描いていないのだ。

終止誠実さが根底にあり、物語の構造がテーマを描くためにあった。間違いなく楽しんだり感動を得るための映画ではない。それでも、普段実感しがたく、見過ごしがちな感情を想起させる映画だった。

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