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鏡よ鏡、私は私。

5000円分、朝晩鏡に向かい合って気づいたこと。

かいまりさんとムンプラさんのインスタライブを見てから5000円化粧水法をやっている。
吸い込む感覚が楽しいので毎日続けられるし成果も感じられている。
(始めてから顔の白さが増してきた。THAT'S透明感)
10回分、鏡をのぞき込んでると今どこがあれているのか、ざらつきがどこにあるのか徐々にわかってきてどう変わってきているのかが判断が付くようになってくる。
「手を当てる」だけでここまでいろいろと分かるのってすごいな、と手のくぼみを顔に当てて考えていたとき、ふと思った。

例えば肌の質感だとか、手の大きさだとか。
私は生まれ持ったものでケアをしているけど、画面の向こうにいる別の人はまた違う質感の肌と大きさの手で同じことをやっているのだろう。
私はてのひらと指が大きく長いので一回で頬とオデコまでカバーできるけど他の人は?
当たり前だけど同じことを、違う人が、別々のタイミングで取り組んでいる。

自問自答ファッションもそう。
人それぞれの価値観で、何を大事にしたいか、コンセプトを立ち上げてファッションを構築してきている。

「私たちは同じようでそれぞれに違う」

当たり前のことだけど、私はこのことを実感する度にほっとする。
私は私、あなたはあなた。
あなたのことはしらんけど、同じ根っこを持っているというつながりがある。
あなたの意見がNot for meだとしてもそれはそれこれはこれ。
あなたの居場所はちゃんと存在しているし私はあなたを否定していない。
これは逆もしかり。別に私は何を言おうが何を着ようが誰かに居場所を奪われることなんてない。

ああなんてこの世は優しいんだろう!!
鏡の前で頬に手を当てて私は崩れ落ちそうになる。

「毎日地獄や」とつぶやきながら生活をしているけど、実際のところはそんなに悪くはない。
私が白いコートを買っても、それを帰り道に早速汚してしまっても
呆れて「だから言ったのに」と批判する人はいない。
買った服の値札を見て顔をしかめる人だっていない。
着たい服を選んで着ていたら正面から似合わないと堂々と言う人もいない。
『私がしでかしたことをまるで自分のことのように取り上げて嘆き悲しみ怒る人がいないという』幸福!!

呪縛のように、過去のことがさざ波が如く戻ってくることがある。
家のくすんだ水色をした棚、会社の給湯室のコーヒーのにおい、落書きだらけの机の上、気づいたら居た病院のベッドの上、あの話をしてきた時の表情、いまだにあの人と似た背格好と顔をした人を見つけると固まってしまう瞬間があること。

悲しいことに過去は消せない。
過去いた場所と距離を置くことはできても過去は消せない。
だから時折、波のように思い出が押し寄せる。

私が一番ファッションを何も考えてなかったのは二度目の上京をした時。
着の身着のままでやってきた東京で、GUで一番安いTシャツを何着か買ってそれを着倒してた。
自由で、自由を得た分恐怖があって、徐々にズタボロになっていく心と体とくたりとした薄い生地はよく合致していた。
色なんてどうでもよかった。形も。
「ぬののふく」でちょうどよかった。

自分のことがどうでもよくなればなるほど、服装がだめになっていくことに気づいたのはこの辺りからだった。
ファッションとメンタルは(私は)直結している。
服を制御できているときは自分を制御できている。
つまり今はーー比較的安定している。そういうことだ。

在宅勤務でも極限状態以外の時は、メイクも服もちゃんと毎日整えて、誰の目に映らなくても飾るようにしている。
それはあくまで自分のメンタルを整えるためだ。

私はきっと、誰かのためには纏えない。
私のためだけに服を纏うことしかできない。
でも人には人の分だけ、纏う理由があることは知っている。

もう仕事場に何を着て行っても怒る人なんていない。
あんなに言われたことは忘れてもいい。
私は今日紫紺のネイルで出勤して人前に出ていた。それでも特に何もない。
そのことに安堵して大泣きしそうになる自分がいる。

決して、満たされない家で育ったわけではない。
ただ少し、私の持っている価値観が家族と違う形をしていたというだけだ。
家族が考える「当たり前」が理解できなかった、それだけの話だ。

たまに、ごくたまに、幸せな家族描写を見たりすると
「ああそれが当たり前に与えられた人が作ったものなんだな」と思うことがある。
体調が悪い時の心配の仕方で、その人がどんなふうに優しくされたのかがわかる。
そういうものに触れると泣きたくなる瞬間がある。
決して満たされない家で育ったわけではない、価値観の違いというだけで大きくついた傷はふさぐことがまだ時間がかかる。

でも私はとっくに大人になってしまった。
30代後半、丹念に鏡の前で5000円分の化粧水を肌に吸い込ませながら考える。
私は私のケアを自分でしないといけない。
丹念に丹念に、これからも時間をかけて。
指の腹でしっかりとやわらかく触れながら。

強くもないから周囲と協力して生きていくことしかできないけど、でも私は私のために生きていたい。
そのためにはやっぱり、装うことがどれだけ心を強くしてくれるかと思う。
似合う色と言われたリップを付けた時の肌の鮮やかさを思い出しながら。
試着室で一生脱ぎたくないほどの運命の出会いの服を着た瞬間を思い出しながら。

私は私、あなたはあなた。
自分を看取れるのは、私にとって自分しかいないのだ。

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