さて、手袋は見つかりましたか?(自問自答ファッション2年目を終えて)
ないものねだりの高望み
自問自答ファッションの門を叩いて、2年目を終えようとしている。
初めて書いた記事は。2022/09/25のこの記事。
今とは少し違うけれど、同じように悩んでいるわたしのあがきが見て取れる。
最初の記事で私の「自問自答」の指標として見いだしたのが、向田邦子さんの随筆だった。
「手袋をさがす」という文章の一遍について、改めてここで取り上げようと思う。
もしも上記の引用を読んで本編が気になった方が居たら、以下のベストエッセイが入手しやすく、また代表的な随筆が集められていることからおすすめしたい。
様々なエッセイの中の最後を締めるのは、「手袋をさがす」だ。
「ないものねだりの高のぞみ」
それは2年前の私に当てはまる言葉だった。
では私は私に問おう。
「あなたは自分の気に入った手袋を見つけることはできましたか?」
やはり2年前も暑かった。
急激に、季節を失ったかのように急に涼しい風が吹き始めたが、
しつこいほどの残暑は9月末の3連休まで残っていた。
2年前の私も同じようなことを書いていた。
毎年酷暑が高まっているように見えて実際のところは真夏のピークが去るのはこの時期で、やはり「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉は季節の変わり目を的確に捉えているのだなあと思う。
今年の夏は、一つ私服に課題を設けた。
「どうせ在宅勤務中にTシャツを着るんだったらグッズTじゃなくて少しでも好きなアイテムに変えよう」
Limi Feu、ギャルソン、ギャルソンオムプリュス。
合計4枚のTシャツは大変活躍してくれた。
オムプリュスは家でも外でも大活躍しすぎた結果、たくさんの洗濯で傷みが発生してしまい、来年も続投するつもりだったわたしはオイオイと泣いてしまうほどだった。
だが、おかげで「適当なTシャツと適当なボトムス」で過ごすことはなくなった。
毎朝その日の業務内容や打ち合わせのセッティングに合わせて服を選んで、仕事を続けることが出来た。
これは結構な成長だと思う。
が。
9月の頭に風邪を引いたことでパジャマしか着ることが出来なくなったことで心のガードが下がり、私の中で抱えていたファッションへの「不満」がだばだばと流れ出したアウトプットを続けざまに発した。
「好きなブランドを見に行くことが出来ない」のはただの夏バテによるファッション筋の衰えだと思っていたが、
そうではなくて「一人のちょっとした振る舞いが明確な嫌悪に繋がるきっかけ」があったということは自分にとって大きな発見であったし
同時にーー針小棒大かもしれないが私にとっての「許せないもの」が明確になったきっかけでもある。
はたと気付く。
「私はここまで、一つのブランドの思想に固執するようになったのか」
それは2年前にはなかった感情だった。
2年前、悩んでいたこと
2年前の悩みと言うことであきやさんの教室に申し込んだあとで送付するアンケートについて、そういやどんなことを書いていたっけ……と読み返してみることにした。
……具体性が……あるのか……ないのか……?
(混乱)
「靴とバッグがない」はなかなかの問題だった。
ホテルのアフタヌーンティ、記念日のご馳走。
「ちょっとええとこ」に臆さず行けるアイテムは服よりもまずは靴とバッグだと自覚していたのでなんとか見つけ出したかったのだ。
ちなみに「コンビニに行く普段着ですらどこか必ずゴージャスなポイントを抑えたい。」という願望は、「配偶者をコンビニに行かせる」ということで代替することができた。私は立ってる者は誰でも使う。
「豪華で」「贅沢な」「ウィットに富んだ」人間。
「気品がある」のは違う。「良く出来たまがい物」みたいな雰囲気を漂わせたい。
例えば自然の気まぐれで出来た一粒ずつ色や形が違うバロックパール、大きく切り出された飴で作られた偽物の宝石の指輪。
おいそこのおまえ!!!この二年でくそでかバロックパールばっかり集めることになりますよ!!
でもなりたい像は変わっていないかもしれない。
最近は開き直って札束ハンカチ芸(a.k.a.東MAX)をやるようになったけど
やっぱ自分の根本の育ちが「贅沢者」なのだ。
だけど一代で財を成した家の育ちなので元から生まれが良いわけでもない。
なので自分の「豪華で贅沢な」気質は歴史や家系に裏打ちされたものがない「良く出来たまがい物」であることを痛感している。
だからこそ、不均等だったり人工の煌びやかさを愛してしまう。
本物のダイヤが似合わなくてもいい。正直、ハイブランドの中でもことジュエリーはマジでよくわかっていない。
(……だし、2年間で少しも興味が湧かなかった分野でもある……)
でも自分が好きな石や形は分かってきた。
それを満たすには、均一な美しさのハイブランドジュエリーよりも、クリエイターズブランドの方が合っていることはなんとなくわかってきている。
……意外と芯食ってるじゃんお前、よくやってるよ。
教室当日にして、まさかのコンセプト爆誕。
自問自答ファッション教室に参加する当日の朝に更新したnoteについてのあきやさんのツイート、私も今振り返って爆笑しています。
「いや一人で勝手に教室でやることやっちゃってるから!」
その分当日は心に余裕を持って受講することはできましたが……。笑
割と自分で掘り進めることが出来ていた9月末から11月頭の自問自答活動。
その中で「こういう人になりたい」という例で出て来たお二方のアーティストは確かに今も「なりたい」んですよね。
ミッチーや岡村ちゃんみたいにセルフプロデュースの鬼になりたい!!
あとこの前久しぶりに忌野清志郎のライブ映像見たけどやっぱかっこいいじゃん……?私も翻したマントを執事に持って貰ってライブを始めたい!!
これも9月講演会の「自作自演力」になるのかな~?
……ん?私よ、果たしてそこまで「後ろに居ること」を望んでいますか?
なりたいのはミッチーよ?岡村ちゃんよ?清志郎よ?
あなたはあの時なることが出来なかった照明スタッフになりたいかもしれないけど
自ら輝く「自家発電」ができる人になりたいんじゃないの~~~?
このあたりは少しずつ「表に出たい」という気持ちが出て来ていますね。
今やANNパーソナリティになって月9ドラマの主人公のモデルになりたいとか言ってますからね。ええもっと図太く生きましょう。
でもね、ボヘミアン・ラプソディのライブエイドシーンで照明スタッフの男の子達が
嬉しそうにイントラに座ってライブを見ているところもすきなの。
裏方の楽しさもわかっているのよ……うん……。
手袋を探し続ける幸せ。
2年間、試着旅を重ねて色んなアイテムを目にすることが出来ました。
試着をして、時には「どうしてもこれじゃないといや」と購入することも出来ました。
たくさんの服とお別れしました。たくさんの服を迎え入れることが出来ました。
髪の毛の色を変えました。髪の長さも変えました。
「ではあなたのクローゼットや靴箱にこれさえあればと思える一品はありますか?」と聞かれたら。
「……まだありません」と答えそうな自分がいます。
恐らく、「私は満たされたら終わり」と分かっているのです。
渇望して動いている間、心が一番躍動しているのです。
私の欲望は果てしなく、その欲を受け止めるように毎年新しく生み出されるクリエイティブな商品が店先に並びます。
自分にとって特別な何かを手にすれば満たされると思っているときは確かにありました。
だとしてもわたしはきっと。
「もっといいものを。今よりよいものを」
とせせこましく毎シーズン伊勢丹のフロアを動いて回ってしまうのでしょう。
たとえどんなに年を重ねても。
いっそアドレナリンとドーパミンで生きて枯れてもまた一興。
ファッションと向き合って2年経ちましたが私はまだ、自分の手袋を見つけることが出来ていない幸せを楽しんでいます。