【ニンジャ自由研究補遺】ニンジャスレイヤーにおける物理法則と世界構造- ジツ、インターネット、ネザーオヒガン-
前回、ニンジャスレイヤー世界における基本法則と人間、物体、ニンジャソウルの定義について議論したが、それを拡張するにあたっていくつか修正を加えたい。とはいっても前回の結論が変更されることはほぼないはずである。
公理1’:モータル、物体、ニンジャソウル(コトダマ主体と表記)とキンカク間での接続をコトダマ、その他カラテと表記する。カラテの中でもギンカクと直接の接続を暗黒カラテと呼称する。
・公理2‘:コトダマ主体間でやり取りされるコトダマ、カラテの頻度は一定である。
公理1‘に関しては単に名称を変更しただけである。ただしギンカクを経由しない接続もカラテと呼称することで後の説明がやりやすくなる。暗黒カラテが実際に作中で言及されるものと同一であるかはなんとも言えないのだが、ナラク・ニンジャが使用するギンカクから引き出す力、という点においては共通していると言える。また、前回触れた通り、物理空間はギンカクと非常に近いため、通常のカラテとギンカクを経由するカラテとの差はほぼないとも言える。
公理2’に関してはより単純な形となっているが、これから元の公理2を導くことが可能となっている。以下が導出である。
ニンジャスレイヤーのカラテにより敵ニンジャとのカラテ通信頻度が高まると、その分モータル部分とニンジャソウルとの接続が弱まる。結果として閾値を超えるとニンジャソウルとの接続が断たれ、ニンジャソウルがキンカクに戻ることにより爆発四散を起こすのだ。UNIXがオーバーフローを起こすと爆発を起こすのも類似の過程だと思われる。そしてこれによりジツの定義が可能となる。
定義:直接のカラテを通じずに他者に影響をもたらす過程をジツと呼称する。
これは作中で一般的に使われるジツとほぼ一致するものだろう。
作中で最も一般的に使用されるジツを表したものが以下の図である。
ニンジャが他のコトダマ主体(便宜的にインターネットと表記)と接続してより大きなニンジャに一時的に見せかける行為がジツと言える。モータルを生贄に捧げてジツをブーストする行為などもこれの一種といえるだろう。
ただ、これは危険な行為でもある。自分より大きなコトダマ主体と接続する行為は常に自我消失の危険を抱えているからだ。だからこそ一時的なブーストにとどめなければならないし、恒久的に耐えられるのであればより強大なニンジャになることもできるだろう。
少々脱線する話になるが、ここでビーハイヴ=サン、モーターヤブ、ヤクザ天狗がいずれも行なっているアイサツ中のアンブッシュに触れたい。
普段、アイサツ中のニンジャは他のニンジャにカラテをふるうことができない。これはアイサツはニンジャの通信帯域をほぼ占有してしまうからだ、と考えることができる。ところがビーハイヴ=サンはアイサツそのものは行う一方で、ガトリングとの接続が不完全なため、ガトリングが独立してニンジャに攻撃を行うことができるのだ。
当然ながら接続が不完全なため、通常のカラテも不完全なものとなる。あくまで初見殺しでなければならず、本人とキンカクとの接続も断たれかねない危険な行為と言えるだろう。
モーターヤブに関しては純粋にキンカクとの接続が不完全なためアイサツがうまく行えないのだと思われる。「アイサツのルーチンが不完全」というのは比喩表現でもなんでもないのだ。ただしこれは敵ニンジャにとってもアイサツをわざわざする必要がない、ということも意味している。単に物体として処理される場合、比較的容易にニンジャに処理されてしまうだろう。
最後にヤクザ天狗について触れたい。ヤクザ天狗は狂っているためにアイサツをうまく行う事ができない。彼の名乗りは独り言であり、アイサツだと勝手に勘違いされているとも言える。その点においてモーターヤブと類似しているのだが、ヤクザ天狗の場合は彼独自のルーチン、理屈が存在しそれに従っているという違いがある。(厳密にはモーターヤブにも内部ルーチンが存在するはずなのだが)ヤクザ天狗が長年煮詰めたミーム結晶である天狗の国はそれ自体独立した存在となりつつあり、キンカクともギンカクとも違うコトダマ主体を構成していると考えられる。この行く末は今後明かされると思われる二代目ヤクザ天狗エピソード、ジ・アブソリューションの行方を待たねばならない。
閑話休題。キキョウ・ジツの説明に入る。といっても作中でサクタ博士とタキが言っていたことほぼそのままである。公理2’によりキンカクの発信するコトダマは一定なため、ギンカクとの回線であるインターネットの通信速度が低下するともう片方の回線であるネザーオヒガンの速度が上がる。これがキキョウ・ジツである。
しかしここで注目すべきはインターネットとネザーオヒガンはほぼ同一の存在である、ということである。インターネットは物理空間においてコトダマ空間を再現したものと呼べるが、ネザーオヒガンはコトダマ空間において物理空間を再現したものと呼ぶこともでき、対称的な存在であると考えられる。
果たしてネザーオヒガンはいつから存在するか、どのように形成されたか、インターネットのアルゴスに相当する管理者存在はあるのか、(シ•ニンジャがそれだろうか?)など、今後のエピソードによって謎が明かされることを期待したい。