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パイナップルという自身の妥協点を反映する果物
台湾パイナップルを買った。今年に入って2つ目だ。
ずっしりと重くて、とげとげしていて、スーパーのレジ袋に入れて持って帰る時、袋が破けないかといつもひやひやする。
おまけにその独特な形状のため、他の食材との詰め方が掴めず、パイナップのためだけにレジ袋を買う始末だ。
だいたいいつも、買ってから4日くらい放置している。
自分の家に、台所に、丸ごとのパイナップルがあるという光景が好きだ。
家に何か置きたい人はパイナップルを買うといいと思う。
見応えもあるし、なんだかリッチに思えるし、食べると美味しい。
5日目くらいになると、だいぶ熟してきて近くを通るだけで匂いがわかる。
いよいよ切るかぁ〜〜という気持ちになる。
気合を入れなければならない。
なぜならパイナップルは切るのが難しいからだ。食材の中でトップ3に入る難しさだと思う。だから丸ごと買った時は切るだけで30分くらいかかってしまう。
切りながらいつも思う。なんでこんなに切りにくいんや、と。
あのトゲトゲはなんなんだと。
このトゲトゲがない品種って無いのかと。
(少し調べたらあのトゲトゲが花の一つ一つらしくて、実は花の部分が生長して作られているとか。そりゃそれを無くすなんて無理な話だよね、ごめんなさいと思った。気になる人は調べてみてください。)
あのトゲトゲを削ぐのが一番難しい。
切りながら、色んなことを考えて、その結論が出てしまうくらいには時間もかかるし、なんなら皮に行くにつれて甘くなるから、一番甘い部分が一番切りにくいという人間が食べるのにむいていない構造をしている。
しかも甘い部分は大抵熟しているから、果肉が柔らかく、下手に切ってしまうと水分は多く出てしまうし、形も崩れてしまう。
さらに言えば、切ってお皿に入れる時、一番甘い柔らかい部分が大抵最初に切られてお皿に入って、最後の方で硬い芯をお皿に入れるから、芯に潰されてさらに水分が出て形が崩れる。(私のせい)
皮を厚く剥けば美味しい実の部分が多く失われ、皮を剥かないと、口の中でイガイガが暴れる。
甘い部分を求めて、削いだ後の皮のイガイガに沿って包丁を入れれば、ハムスターが食べるかのようなサイズのパイナップルが出来上がる。
本当に欲しいものはなかなか手に入らないのだと、人生の厳しさを感じさせる。
文章だけでは伝わらないだろうから、ぜひ読んでくれた人は一度切ってみてほしい。私の気持ちがわかると思う。
とにもかくにも、切りながらこんなに不満が出てくる果物はパイナップルしかないと思う。
でもこの不満を超えてしまうくらい、パイナップルは美味しい。
だから買ってしまうし、嬉々として部屋に置いてしまう。
食べるまでの過程を通して、こんなに気分の上がり下がりが生まれる果物だからこそ、
パイナップを切る時、自分の精神状態と欲と向き合っているのだと感じる。
どこまで食べたいか、どこまでの切り落としなら許容できるか、どこまでのイガイガなら口に入っても良いかと思えるか。
自分はどのくらいの状況であれば妥協できるのか。
こちらに問いかけているような錯覚を覚える。
なんていう果物なんだ。
私にとって、パイナップルはそういうたべもの。
おわり