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エンゲージメントを向上させる意外なアプローチ|聴き合う組織をつくる『YeLL』のnote

こんにちは。エール代表の櫻井です。

タイトルにもありますが、エンゲージメント向上にあたって見過ごされがちなアプローチがあります。結論から言ってしまうと「社員のセルフ・アウェアネスを高める」という方法です。今日は、前回の続きとして、その見過ごされがちなアプローチについての私なりの見解を書いてみます。

いきなりですが、YeLLの中で実際にあったやり取りのシェアから始めてみます。

ある大企業のマネージャーの方が、YeLLのサポーターとの1on1の中で「部長のやり方が気に食わない」という話をしました。
「やり方が気に食わない」の解像度を高めていくために、サポーターは質問をします。
「やり方が気に食わない、というのは具体的にどういうことですか?」
するとその方は「いつもメンバーに積極的な意見を出せと言うくせに、最後は結局自分の意見を押し通すんですよね。だから、意見を出す気がなくなるんです。」と。
サポーターはもう少し突っ込んで聴いていきます。「◯◯さんは、自分の意見がもっと出したいということなんですか?」
すると「いやー、自分の意見が出したいということではなくてですね…。というよりは、意見が出しやすい雰囲気になれば、多様なアイデアが出てくると思うんです。個別に聞くと本当はみんなアイデアを持ってるんですよね。それが出てくれば、もっとチームが良くなるはずなんです。」とそのマネージャーの方は言われました。
そして「ウチの会社でも多様性の尊重、多様な意見の尊重、ということは昔から大事にしていて、そこが好きで入社したんです。」と言われました。

エンゲージメントの一つの要素として「理念共感」があります。
理念共感度アップの施策を考える際、組織の理念や考え方をどう社員に浸透させるか?という組織側からのアプローチを考えることが多いと思います。
それももちろん効果的ではありますが、社員個人側からのアプローチも非常に有効です。
その具体的な方法が「セルフ・アウェアネスを高める」というものになります。

セルフ・アウェアネスという言葉自体に馴染みがない方もいると思いますが、上記のマネージャとサポーターのやり取りのように、不満を掘り下げていくと価値観に気づくことがあります。
これがまさにセルフ・アウェアネスです。自分自身のことに気がつくことです。

少し私なりに理解をしているセルフ・アウェアネスについて書いてみます。

【参考】
「セルフ・アウェアネス」はハーバード・ビジネス・レビューの書籍EIシリーズのタイトルの1つにもなっています。その中で、人材開発・組織開発の研究をされる立教大学の中原先生は「セルフ・アウェアネスは2020年代のリーダーにとっての必修科目となるだろう」と書かれています。
スタンフォード大学経営大学院の顧問委員会75人に「リーダーが伸ばすべき、最大の能力は?」と尋ねたところ、答えはほぼ全会一致。それが「セルフ・アウェアネス」だったとも言われています。
元GE(ゼネラル・エレクトリック)のCEOジャック・ウェルチさんが退任する際、「あなたが20 世紀最高の経営者と呼ばれるようになった理由は?」という記者の問いに対して答えた一言が「セルフアウェアネス」と答えたと言われています。

まず「セルフ」とは何かから。

例えばですが、緊急事態宣言化で20時を過ぎてもお店で食事をしている集団を見たとします。
それに対して「こんな状況なのにあり得ない!けしからん!」と思う人もいれば、「飲食店も大変だし、飲んでる人もたまには飲みたい時もあるよな」と思う人もいると思います。
また『鬼滅の刃』を見て、涙腺が崩壊をする人もいれば、「なんでこれが流行るのか分からない」という人もいるんだと思います。

これはインプットされる情報(飲み会・鬼滅)が同じでも、情報を処理するフィルターが人それぞれ違うことによって、異なるアウトプット(感情・思考・行動)が生まれてくる、ということの一例になります。

このフィルターがまさに「セルフ」の一要素だと考えます。
この「セルフ」は大きく3つの構成要素「価値観」「信念」「セルフイメージ」で成り立っていると私は考えています。

図示するとこんなイメージです。

セルフ例_01

セルフ3つの構成要素

【参考】
安宅和人さんは、インプットとアウトプットの間の情報処理を「知覚」としてこちらで紹介されています。
https://industry-co-creation.com/lifestyle/46282

仕事をしていても同じようなことがたくさんあるのではないでしょうか。
社長の年頭挨拶を聞いて「よし、やるぞ!」と思う人もいれば、「また理想ばっかり語って、現場のこと分かってないな」と聞き流す人もいる。
お客さんからお叱りのメールをもらい「これは即対応した方がいい内容だ。まず一本電話しよう」とすぐ行動する人もいれば、「これは対応方法をじっくり考えた方が良さそうだ。週明けにお返事をしよう」と思う人もいます。

セルフ例_02

この違いも同じくセルフというフィルターが違うことにより起きます。
このフィルターがどんなものであるか?に気づくことが、セルフ・アウェアネスのうちのとても大きな要素の1つだと私は考えています。

こちらで書かれているJT(日本たばこ産業)さんの事例も、セルフ・アウェアネスが高まることで、組織課題を自分ごと化できたことの1つの事例かと思います。
エンゲージメントを高めようとする時に、組織の理念・考え方・方針などを分かりやすい形で言語化し、社員に伝えていくことはもちろん大切です。(下図の左)
一方で、個人のセルフ・アウェアネスを高めることでエンゲージメントを高めるという方向性からのアプローチがあることも見逃してはいけない観点なのではないかなと思っています。(下図の右)

セルフ・アウェアネス

ここで、セルフ・アウェアネスが高まるとどんな指標が改善されるのかも併せて見ておこうと思います。

YeLLでは、前回記事で上げたToMo指数や、その他にも各種指標(理念共感度、Well-being、プレゼンティーズムなど)をYeLLの実施前と実施後で取得しています。
また、wevoxなどのエンゲージメントサーベイの実施前後でスコア比較をするケースもあります。
YeLLを活用し、働く個人のセルフ・アウェアネスが高まると、これらのスコアが改善されることがデータからも見えています。

ここまで、個人のセルフ・アウェアネスがエンゲージメント向上に効きますよ、というお話をしてきました。
もちろん、アウェアネスが高まればあらゆる問題を解決できる、というわけではありません。
しかし少なくとも、個人においても、組織においてもアウェアネスが課題解決の一歩目であることは間違いないのではないか、と私は考えています。

次回は、このシリーズの最終回として「社員の多様性を活かす4つのポイント」について考えていこうと思います。


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