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北明翰留学日記 #11 ー得たものだらけ.ー

早いもので,帰国前にイギリスで過ごす最後の週末を迎えた.実はまだ修論を書き上げても課程を修了したわけでもないのだが,大学のAuthorised absenceという制度を利用して日本に戻ることにしたのである.

Authorised absenceは大学が公認する休暇のことであるが,講義を受け終わった留学生がイギリスにいなくても論文を書けると大学から認められた場合にも使うことができ,帰国後再度イギリスに戻らなくても単位等の条件を満たせば課程を修了することができる.その場合は,大学がStudent Visaのスポンサーシップを中止するので,その後の就労などの権利も失うことになる.

卒業後どこで働くか非常に悩んだが,現在日本の企業でアルバイトをさせてもらっていることや,いくつか新しいことにチャレンジしたいこと,イギリスのテストエンジニアの給与レンジがそんなにいいかというとそんなこともなかったこと,物価の高さに伴う暮らしにくさを感じていたこともあり,帰国という選択肢になった.

渡英してからちょうど10ヶ月.全然あっという間だったという感覚はない.長かった.

1ヶ月目は英語が下手すぎて喋るのが恥ずかしくてたまらず,講義は毎回緊張していたように記憶している.そもそも勉強したことのない分野なので,予習復習にしっかり時間をかける必要があり,講義資料以外にも大量の本を読んでいた.最初の哲学の講義で4000ワードのエッセイを書く宿題が一番大変だった.だが,このときにいろいろ文献を読み込んだおかげで今かなり楽なのは言うまでもない.

生活のリズムがつかめて,仕事をしていないことに飽き始めたのがだいたい半年くらい経ってからだった.英国以外のリモートワークでも週20時間を超えないアルバイト雇用ならVisaの問題がないとわかり,仕事も少しずつさせてもらうようになった.

その間,食事や天候に順応したり,寮の共用部をとんでもなく汚くする隣人に絶句したり,夜中の騒音に苦情を言ったりして過ごした.人のことを気にしないのはお互い自分の権利を主張し合うだけで楽ではあるので,まあそういうものかと思いつつも,何度言っても改善されないときは多少辟易する.もちろん,いかに丁寧かつ嫌味を込めた主張ができるかを研究するという密かな楽しみを得たのも確かではあるのだが.

だがなんと言っても一番の収穫は,世界は思っていたほど遠いものではないという感覚を得たことだろう.また日本以外の場所で生活や仕事をしてみたいし,その心理的なハードルはとても低くなったと感じている.

修論の提出まであと2ヶ月,人生2つ目となる修士号をちゃんと取りたいと思う.指導教員もとても応援してくれており,ありがたい限りだ.

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