翻訳記事:U20中国代表のウイグル族選手たち
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◆前書き
2023年3月にウズベキスタンで開催予定のU-20アジアカップ、U-20中国代表は予選を勝ち抜き、日本・サウジアラビア・キルギスと対戦する。
2強は兎も角、キルギスにはせめて勝ってくれ・・というところ
このU-20中国代表は22年にサウジアラビアで開催された予選を通過したわけだが、このチームはちょっと他の年代と比べ特徴がある。ウイグル族の選手が多いのだ。
新疆ウイグル自治区、その人口の半数近くを占めるウイグル族。民族的にはテュルク系で、中国以外に中央アジア、トルコ、中東、などに分布。イスラム教徒が多く名前や見た目も漢民族より中央アジアやトルコの方が近い。
http://www.cnta-osaka.jp/general/minority
こちらによると中国全土でウイグル族は1000万人超、中国はマジョリティの漢民族以外55の少数民族がいるが、その中で人口4位。1000万とはいえ中国の全人口では1パーセントにも満たないわけだが、
22年9月のU20アジアカップ予選・サウジアラビア戦のスタメン中3人。下記黄色枠がウイグル族。攻撃陣の主軸を閉めており、全8得点中7得点をウイグル族の選手が決めているのだ。
22年末のU19代表合宿メンバー。31人中6人(赤枠)が新疆出身のウイグル族
しかし人数のわりに主力の率が高い。
全人口の1%に満たないウイグル族であるが、新疆には新疆天山雪豹というプロクラブもありサッカーは盛んなところ。天山雪豹自体は2部最下位で3部に降格見込みだが、新疆出身の若者が他の中国内のクラブに渡っている。
今季中超(1部リーグ)優勝した武漢三鎮のトップチームに3人。
2位山東泰山の阿卜杜肉苏力-阿不都拉木(Abdurasul Abudulam)はリーグ戦1得点、U20代表10番の买乌郎(Mewlan Mijit)もリーグ戦でデビュー。
3位浙江FCの阿布力克木-阿布都沙拉木(Ablikim Abudusalam)は19試合2得点、、と上位の殆どのチームにウイグル族の選手がいる。
A代表は上海海港の木热合买提江·莫扎帕(Mirahmetjan Muzepper)が2018年にデビュー、22年E-1選手権ではU23代表の一員で長春亜泰の迪力依米提·土地(Dilyimit Tudi)今後A代表にもウイグル族の選手は増えるだろう。
というわけでU20代表のウイグル族の選手たちに着目した記事。
◆翻訳記事
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热合米图拉·雪合热提(Rehemitula Xuehereti),阿卜杜拉·阿地力(Abdulla Adil),希尔扎提·努尔(Sherzat Nur)……U20代表合宿のメンバーでこうした名前を見ると戸惑うだろう。チーム内で彼らはそれぞれ“米图拉”、“阿卜”、“扎提”と略称で呼ばれた方がしっくりくるようだ。
彼ら新疆の若者たちは名前や見た目が目立つが、ユニフォームを着ればすぐチームの一員となり、国のために戦う。U-20アジアカップ前最後の国内合宿で7名の新疆出身・ウイグル族の選手が招集された。こうした若い「新勢力」の背後には、西北の広大なサッカーの資源が隠れている。
2009年に木热合买提江·莫扎帕(买提江)が初めて新疆出身の代表選手となった(注:前述の通り彼のA代表デビューは18年。09年はユース代表入りを指す?)
この時に新疆サッカーは注目を浴びてから十余年。今や多くのクラブ・リザーブ・年代別代表チームに新疆出身者がいる。“扎提”は「普段の試合でも、キャンプでも、どこでも同郷の選手と出くわす」と語る。
ボランチの希尔扎提·努尔こと“扎提“は3部相当の 湖北青年星に在籍、兄の“艾散“は中甲(2部)新疆天山雪豹のDFだ。2人の息子がプロ選手になったことは両親にとって喜ばしいこと。「U-20代表入りしたと聞いて両親もとても喜んでいた。」と扎提。「子供のころ魯能足校に在籍したがホームシックで一度喀什(カシュガル)に戻り学校へ通った。でも兄の影響で1年後サッカーを続けることを決意した」
(注:魯能足校は山東泰山の運営するサッカースクール。前述买提江もここの出身で山東でデビュー。)
热合米图拉·雪合热提こと”米图拉”は攻撃的MF。米图拉は今日までサッカーを続けられたのは親の支持が大きいと語る。父はサッカー好きな体育教師で早くからコーチを探し、9歳で米图拉を魯能足校に送った。「姉もサッカー好きで良く夜通し欧州CLを見てる。姉や父とビデオ通話するときも、家の事以外はサッカーの話ばかりだ」。
米图拉は、新疆のサッカーの雰囲気や基礎は全中国No.1だとみている。「何年か前グラウンドが少なかったころ、伊犁,喀什、ウルムチといった新疆各地で多くの人がストリートサッカーに興じていた。新疆には私と同じくサッカーが好きで、もっと才能がありながら、地元を出られず専門的トレーニングを受けられなかった子供が沢山いる。」
米图拉は扎提より1歳年長で、1年先に魯能足校入りし、U-20代表で再会した。長春亜泰に在籍するFWの阿卜杜拉·阿地力こと”阿卜”は扎提と同じ喀什(カシュガル)出身,2人は子供のころ学校の試合で知り合った。阿卜は「言葉や飲食週刊の違いで、小さいころから地元を離れサッカーをするのは難しい。新疆出身の選手が増えたのは、恐らく我々が比較的早くに地元を離れ、生活をし、トレーニングを受けてきたからだと思う」
新疆で草サッカーを続け、天賦の才能を育てられなかった子供たちと比べ、米图拉はサッカーを生業にできとても幸運だと語る。「家族の支持が無ければ不可能だった」阿卜の家族はU-20代表入り後、両親と2人の兄は1試合も欠かさず見ている。
米图拉は魯能足校で9年在籍、2022年初に浙江FCとプロ契約をした。相対的に阿卜と扎提のキャリアは波乱があった。この年代は試合が少なく、クラブコーチの要求も異なり、3人はリーグ戦で出場機会に恵まれなかった。ただ幸運にもU-20代表で成長する舞台を得た。
今世代のU-20代表、キャンプ時間は平均150~200日、期間中多くの試合もある。米图拉は「U-20代表入りし、自信を得た。中国内の同年代の”10番たち”の中で最も優れた選手という自信だ。また運動能力や試合経験も得られる」。
扎提は、U-20代表の雰囲気はとても団結しており、出身やクラブを問わずとても良く融合している。またコーチ陣の邵佳一(ShaoJiayi)杜震宇(DuZhenyu)といった先輩たちから多くの学びを得られると語る。
(注:邵佳一は現役時代日韓W杯出場、ドイツ1部/2部で168試合出場。杜震宇は07年中超リーグMVP、共に元代表)
このU-20代表に新疆出身者が多い現象について、選手当事者はそれぞれ違った見方をする。
阿卜は「ウイグルの選手はより戦術に合ってる」との見方に賛同。ウイグルの選手的フィジカル、激しいプレースタイル、強い闘志、技術。これらはスペイン人監督アントニオ(Antonio Puche)の求めるものと合致する。「コーチ陣は、僕たちの明るく外交的性格がチームに積極的に作用すると考えたんじゃないかな」。
米图拉は「特徴ある選手を使うのが起用の原則であるべき」としたうえで、ウイグルの選手は似ていてもそれぞれ異なるテクニックのスタイルを持つと考える。「以前里帰りし伊犁で友人たちとフットサルをしたが、アマチュアであっても多くの上手な選手がいた。ウイグル人だからといって皆同じでない。」 多くの同郷がU-20代表入りしたことは誇らしいだろう。だが彼らは同時に出身地や民族で選考基準が異なるわけではないと理解している。「我々は1つのチームで、僕はその中の一員だ。この点は軍事トレーニングで更に強くなった。(注:U-20代表キャンプの一環として、軍事トレーニングがあった)」
今年3月のU-20アジアカップ、ウイグルの若者たちは強敵に対してモチベーションを高めている。
阿卜は「我々が団結し、ベスト4入りしてU20W杯出場権を勝ち取りたい。これが今年最大の目標だ」扎提はもっと激しく「アジアの舞台で遭遇した相手を滅ぼしていき、勝ち上がっていきたい」と語る。
過去の対戦やビデオから、同組の日本やサウジの実力も把握している。「予選でサウジと対戦したが(注:0-1)次回は勝てる自身がある。日本は個個人能力もチームプレーもとても強いが、勝機がない訳じゃない。キルギスはレベル・スタイルともにサウジと近く、決して油断できない」
どれだけ大きなことを言っても結果が伴わねば意味はない。U-20アジアカップまで2か月前後、阿卜は「より件名に練習し、ゴール前でのフィニッシュを磨く必要がある」と理解している。
スタミナ強化も今回キャンプの主要目的で、他にも多くの試合を観戦し、真剣にトレーニングすることだ。「中東遠征時、多くの試合経験を積み、緊張感に慣れることができた」
邵佳一も意義を強調、“スタミナは全ての技術・戦術の基礎。十分な体力が無いと何もないに等しい」という。スタミナ豊富な米图拉も油断せず、より強化することで「試合時に全ての力を発揮し、良い成績を得られる」という。