■2019年中国プロリーグのレギュレーション概要(外国人枠、サラリーキャップ、U23枠等)


■2019年シーズン中国プロリーグのレギュレーション概要

12月20日に中国足球協会は中超(1部相当)中甲(2部)中乙(3部)のレギュレーションを発表

・実施期間
中超は2019年3月2日に開幕し、11月30日に閉幕する。延べ270日間は2008年に現行16チーム制となって以来最長。
その主因はカタールW杯予選控えるA代表や、東京五輪予選控えるU23代表の合宿時間を確保するためと思われる。

・外国人選手枠
2018年と同様。中超は登録4名、試合出場は3名まで、噂されたAFC枠の復活は無かった。中甲も現状維持の登録3名、出場2名。

チーム数

2020年の中甲は現行16→18チームに拡大するため、2019年中乙は3位までが自動昇格になる。中甲の14位、15位、は中乙の4位、5位とプレーオフを行う。
・中国人選手
登録人数は従来の25人+自クラブ育成選手&21歳以下2名の27人に
・U23枠
こちらも継続し先発11人中最低1名はU23選手(1996年以降生まれ)を起用、それを含めて1試合で最低3人以上U23選手を起用すること。

2018年は外国人選手起用数を下回ってはならないであった。外国人選手を3人フル起用するなら同数の3人以上起用、逆に外国人選手起用が2名なら2名で済んだのが、関係なく3人以上!となったので厳しくなったといえる。(まあ余程のことがない限り外国人を3人起用する可能性が高いのでほぼ変わらないという見方も)

また各種ナショナルチームにU23選手が招集された期間は、その人数分減免される。これは2018年もリーグ戦期間中にアジア大会や軍事キャンプがありその期間は減免またはU23枠が撤廃された。


・支出制限&サラリーキャップ
今年の会議で注目されたのはこちら

・各クラブの年間支出額制限、中超は2019年は12億人民元(約195億円)→翌年11億元→21年9億元、他リーグについては写真を参照。

仮に2019年に中超→中甲降格すると許容予算が12億→2億と1/6になる

・また支出のうち人件費が占める割合も以下制限が

    2019年  2020年  2021年
中超  65%         70%       65%
中甲  60%        65%       65%
中乙  55%        55%       65%

・赤字額の上限

    2019年  2020年  2021年
中超  3.2億      2.9億  2.7億
中甲  0.7億      0.6億   0.5億  (中乙は設定なし)

・ボーナス制限

ACL: 勝利給600万/1試合、引分け給200万/1試合
中超: 勝利給300万/1試合、引分け給100万/1試合
中甲、中乙決勝ステージ: 勝利給100万/1試合、引分け給30万/1試合
中乙レギュラーシーズン: 勝利給30万/1試合、引分け給10万/1試合

念のため、全て日本円でなく人民元(現在のレートで1元=約16円)である。

広州恒大らのボーナス乱発は日本でも報道されているが、近年は下部リーグでも昇格や降格かかった大一番に数百万元、数千万元のボーナスをぶら下げるケースが増えている。

・サラリーキャップ

中国人選手の年俸上限は1000万人民元(1.6億円)ボーナス、税別、ただし2019年アジアカップまたはカタールW杯予選に参加する代表選手は+20%を容認する。

バブル化で中国人選手の年俸も高騰しており、一説には武磊の年俸2800万人民元(4.5億円)との報道もある。クラブの支出のみならず、代表選手の欧州移籍やハングリーさを失う要因ともされていた。

勿論選手としてはたまったもんじゃないだろうが・・

目的としては昨年来の外国人枠削減、移籍金上限などから繋がる過剰な給与やボーナスの高騰を抑え、健全なクラブ運営を促す・・みたいな感じかと

■個人的感想

協会としてはリーグの発展よりも、各クラブの経営安定と自国選手の保護を重視する姿勢は変わらない。(要は外国人選手獲得や給与のために人民元が流出することを防ぎたいのか)

既に今年も中乙では資金難を主な理由としてシーズン途中に脱退したり、終了後にスポンサーが撤退したり(寧夏)、解散表明したクラブ(深圳人人雷曼)のような事例が発生。それを防ぐためにも某消費者金融のような「身の丈にあった投資を!」「マネーにもマナーを!」という保護政策は理解できる。

AFCの発表では2018年中超各クラブの人件費支出は累計6億9600万US$(Jは2.4億$、豪州は0.3億$)2017年の中超の累計赤字額は7億US$に上ると言われる。今年優勝した上海上港の親会社であるSIPGグループの2017年上半期財務諸表では、上海上港は半年で5.7億人民元の赤字、広州恒大は2017年年間で12.4億人民元の赤字。

各クラブ(というかオーナー、スポンサー企業)はサッカークラブを通じて利益を得ようとしているのでなく、自社の宣伝道具として利用している節がある。サッカー事業単体で儲けようという考えは薄い(この点はヴィッセル神戸の楽●と似通っている)
イチ経営方針として理解できるが、それはサッカー界の為になるとは限らない。それによるクラブの破産、選手の失業、ファン離れといった面を防ぐために協会が苦心しており、その点は大いに賛同したい。

また、「陰陽合同」即ち2重契約の撲滅など契約へのチェックを強化する向きは大いに賛成。いまだにフリー移籍が事実上なく前近代的な状況が改善されることを期待したい。

しかしU23枠の存続は残念。この方策は正直ク●

前述の代表招集時等の減免について、2018シーズン終盤戦では撤廃されていたが、たまたまそれがリーグ最終盤と重なったあったこともあり、恒大、上港らはU23のしがらみなくベストメンバーでの勝負が漸く見れた。真のリーグ戦がやっと始まった感だった。単純に2016年と比較して外国人が1人減り、それ以上に経験薄いU23選手を起用せねばならないと考えると、その分パフォーマンス、エンターテイメント面の影響はある。国内とACLのレギュレーション違いにより両大会でフォメやスタメンが異なる事態。真の実力以外にU23選手がどこまで戦力になるかも大きく影響してくる、だから順位予想が意味をなさなくなる。

U23選手を前半で早々交代させたり、後半ロスタイムに投入して「ノルマ」を消化するクラブが多く、真の戦力となっている若手は少ない。そもそも有能な選手は自力で使われるようになるべきなのだが・・

一例として第9節の上海上港1-2北京国安戦の上港のスタッツ↓
上海上港(433):1-颜骏凌;4-王燊超(85’24-雷文杰(U23))、5-石柯、28-贺惯、23-傅欢;8-奥斯卡、6-蔡慧康、10-胡尔克;37-陈彬彬(U23)(29’11-吕文君)、9-埃尔克森、7-武磊(92’36-俞豪(U23))

まずU23枠で陳彬彬が先発、彼もA代表デビューするなどそれなりに有望で実力ある選手なのだが前半29分で交代。その後ホームで逆転され追う立場の上港だが、24歳以上の実力ある攻撃的選手を起用できず、外国人選手を3名起用しているため残る2枠はU23選手に費やさねばならないためなかなかカードをきれず、終了間際立続けにU23選手を投入。ロスタイムにはエース武磊を下げている。本来のベストな陣容、采配で試合に臨めなくなっているし、上記のような使い方ではU23選手もろくな使い方されない。

他にはA代表またはU23、U21のナショナルチームがリーグに参加するとの噂もあった、これは流石に今回は実現していないが、これまでの傾向から何があってもおかしくない

まあ決まったことは仕方なくやってみないと分からない点はあれど、くれぐれも朝令暮改の繰り返しは避けて欲しいものである。


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