会えるときに会っておく
この記事はアドベントカレンダー「みんなの北星」25日目として書かれました。
書いてみてどう考えても前振り部分が長いけど削りたくはありません。目次から本題に飛ぶことができるので,そちらもどうぞ。
きっと長すぎる前振り
出会いから
好きな歌手のひとりにKANさんがいました。「愛は勝つ」が中学生のときで「やまだかつてないテレビ」を見ていたのでよく目にしましたが,まあそれはそれでって感じで,中学生以降はフリッパーズ・ギターからオザケン,コーネリアスを中心とした渋谷系だったり,そこからホーンの効いたファンクが気に入ってジャズ研に入っていろいろ聴いたりしてました。
たぶん,次に見たのが窪之内英策「ツルモク独身寮」に「東京ライフ」の歌詞が引用されていたところです。
ツルモクの連載は1988年から1991年で「愛は勝つ」より前ですが,単行本で知ったと思うんで,曲としては後です。これも「良い曲だなあ」と思いました。
中学から大学にかけて,いろんな曲をレンタルして気に入ったらテープやMDにしていました。曲単位でも個人・グループ単位でも。何の気なしにベスト盤の「めずらしい人生」を借りたらどの曲もかなりツボにはまり,繰り返し聞きました。ビリー・ジョエルやベン・フォールズのようなピアノロックも好きなのでその辺なんでしょう。
「愛は勝つ」しか知らない人にオススメの曲リストをKANさんの大ファンのライター岡田有花さんが書いてくださるそうなので,まっとうな(とは?)曲紹介はこのぐらいにして,記事を楽しみにしておきましょう。
【12/29追記】公開されました!名曲揃い!
この3曲を聴いてほしい〜分析的シンガーソングライター
そう,シンガーソングライターなんです。
ひとつの特徴として,KANさんはいろんな曲を分析し,分解し,再構成し「いかにもその人っぽい」曲として出しています。それってただのパクり?と思うかもしれませんが,こんなのソングライティング能力が高くないとできません。その意味で渋谷系と似ているのかもしれません。
というわけで,そういう曲をいくつか紹介します。
まず私はなぜか聴くたびに笑ってしまう「エンドレス」。浜省です。でもKANさんです。
次に「車は走る」。槇原敬之です。あの時期のマッキー!となります。
最後に「scene」。これはミスチル(曲)とスキマスイッチ(歌詞)。歌唱法も当然「寄せている」のですが,楽曲の雰囲気をここまで持ってくるのって凄いなあと思うのです。
繰り返しますが,ソングライティング能力の高さがなせるワザだなあと。
本題 会いたい人に…
会いたい人に会わずに後悔した話
コロナ前の話ですが,6代目三遊亭円楽が札幌で落語をしました。落語は東京にいたときに寄席に何度か行ったりしたのですが,それ以上に実は円楽師匠は高校の先輩なのです。そんなわけで「一度は行かねば」と思っていて,縁がありチケットを手に入れたのですが,いろいろあり行くことができませんでした。
そのときは「まあまた来られることがあるだろう」ぐらいに思っていたのですが,「また」は訪れませんでした。
考えてみると自分も40代の後半を迎え,死を意識する機会が増えてきています。幸いにして下の子供も中学生になり,そこまで手がかかるということもなくなりました。これを機に見たい人,会いたい人には会っておくほうがいいという気持ちが強くなりました。
そして会ってきた
それまではコンサートの情報を知っても「ふーん」と受け流していたのですが,コロナ禍でコンサートそのものが当たり前ではなくなり,ラジオ,新聞などでKANさんに限らず気になる人コンサートなどがあると,積極的に行くかどうかを考えるようになりました。
そんな中,KANさんの2022年のツアー告知を見ました。さっそくチケットの抽選に応募し,当たったので行くことができました。
ツアーのことをまったく知らず臨んだのですが,とにかく楽しかったです。「まゆみ」とかよく知ってる曲もありましたし,上の「東京ライフ」も。最後にはその日にやった曲を全部繋いで振り返る演出まであり,かなり満足度の高いコンサートでした。
レビューを見ると,過去のアルバムから1曲ずつ出していたとのこと。なるほどー。
次は年明け(2023年)に弦楽4重奏とともにやると。これも行かねばと思いました。しかし,KANさんは23年の初頭に癌のため音楽活動をやめ闘病生活に入られ,11月に逝去されました。つまり,ツアーは私の行った2022年のが最後になったわけです。
これはこの数か月なんどか人に話していたものの,どこまでうまく言えるか分かりません。不快にさせるかもしれないと思いつつ。
亡くなる前のコンサートで会いたい人に会うことができた。その意味で私は運がよかった,よかったのだと思います。しかし,亡くなってしまったことはとても残念です。亡くなって1か月以上が経ちますが,このあたりの気持ちに整理がつかないまま過ごしています。繰り返しになりますが,
亡くなる前に会えてよかった。だけど,亡くなってほしくなかった。
これが正直な気持ちです。
これからまた同じようなことは有名人に限らずあるでしょう。なので,またこれから面倒とかまたでいいやとか思わず,ひとまず「会えるときに会っておく」。それを繰り返し,明日も生きていきます。
補遺 有名人の死と付き合う方法
有名人の死はたびたび報道でも流れますし,そのたびSNSは「盛り上がり」ます。最近は報道も配慮が見られるようになりましたが,ファンが有名人の死に遭遇したときどうするのがいいかについて情報がしっかり出ているとは言いがたいです。
同僚の髙橋あすみ先生がnote記事や発展させたサイトを公開し,情報を発信してくれています。
特にグリーフワークは重要だと思います。
私がこの記事を書いているのも,「その有名人への思いを文章や芸術で表現する」「思い出を振り返る」という作業の一環なのでしょう。
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