難しいということ|「ということ。」第15回
この記事を書くにあたって、「あちゃ、テーマがざっくりすぎる」と後悔した。文章を書くとき、私はたいてい、書く前にプロットを作る。頭の中で、はじめにこれを書いて次に話をこう展開しよう、結論はこうかな、といった具合に。だからこの記事を書くために、私はまず、「難しい」の定義を狭めようと決めていた。
なのに。noteを開いた瞬間、ふと高校時代の塾の先生を思い出した。カバによく似た、数学の先生だ。彼は、数学は芸術だと言った。複雑な数式の解が1になれば「美しい……!」と言って、自分の板書に興奮する。先生としては凄腕だが、変人だった。
そんなカバ先生の口癖は、「困難は分割せよ」。数学者のルネ・デカルトが『方法序説』で記した四つの法則のうち、「難問の一つひとつを分割すること(Le second était de diviser chacune des difficultés …)」を意訳したものだ。
「困難は分割せよ」。数学の授業では、難解に見える問いを、二つないし三つの問いに分けて解き進めることをそう呼んだ。当時は聞き飽きていた口癖だが、私がこの記事を書くために決めたことは、紛れもなくそれだった。
思い返してみれば、日々の生活の難しい局面で、私は自然とそれを実行している。
仕事のタスクが増えてきたら、締め切りやボリューム感などを考慮して優先順位をつけたり、あるいは手当たり次第、一つずつ消化する。家事が溜まっていたら、とりあえず洗濯機を回し、服が洗われているいる間に炊飯器をセットして、ついでにリビングの床を掃く。もちろん、私が有能なわけではなく、多くのひとが無意識にそうしているはずだ。
高くそびえ立つ壁や、目視できないほど遠くにあるゴールに向かってすることは、まず、たった一つのアクションだ。誰だってそうだろう。「困難は分割せよ」。まさに、その通り。
つまるところ、難しいことって、だいたいは複雑なのだ。複雑だったり、膨大だったりする。だから、最終的な目標に行きつくためには、下位目標を設定する必要がある。
例えば、こうだ。
最終的な目標:あの人と付き合いたい!
↑
下位目標1:告白する/させる
↑
下位目標2:ちょっとだけボディタッチする
↑
下位目標3:二人で遊びに行く
↑
下位目標4:グループで遊びに行く
↑
下位目標5:毎日1回会話をする
↑
下位目標6:名前と顔を覚えてもらう
↑
下位目標7:声をかける
あくまで一例だが、どうだろう?
難しいこと。何が難しいかなんて人によって違うし、環境にもよる。一概にこうとは言えない。だけど、デカルトの(カバ先生の)この言葉さえ忘れなければ、「まあ、何とかなるんじゃないかなあ」と、私は思うのだ。
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