トーナメント(MTT)でアベレージが変わると、UTGのハンドレンジは変化するのか?
今回は、ポーカーのトーナメント(MTT)において、アベレージが上がることでUTGのオープンできるハンドレンジは変化があるのか?
またある場合、具体的にどこの部分に変化があるのか?をまとめていこうと思います。
この深掘りをしようと思った背景をまず説明します。
これまでオープンするハンドレンジは、ポジションによってある程度固定し、相手によってハンドレンジを微調整する形でプレーしてきました。
しかしFTやITMに差し掛かったり、ターボトナメで終盤に差し掛かると、ハンドレンジを一気に絞り、オープンに対してオールイン(以下、AI)が飛んできた時に対応できるハンドでのオープンをする様にしていました。
また、Aハイで先にAIを仕掛けてコールしにくい状態を作っていました。
ただこれだと、強いハンドが配られるまでSB・BBを消費する時間も長くなり、ハンドが来ないとスタックが削られ続け、結局広いハンドでAIをしなければならなくなり、強いハンドにキャッチされるというケースが増えてしまいました。
そこで、こういったプレーの固定概念を一度GTOから検証してみようと思ったというのが背景です。
今回の条件は下記の通り。
GTOwizardの結果を参照すること。
9maxのMTTであること。
プリフロップのみを検証対象とすること。
各プレーヤーもGTOに準じてプレーすること。
スタック差がある場合は、UTGよりもスタックが深いプレヤーがIPにいること。
1.スタックがフラットな場合のUTGオープンレンジ比較
ここでは、各プレイヤーがアベレージでスタックを持っていると仮定します。
アベレージは、100bb vs 50bb vs 25bb vs 15bb vs 10bb とします。
先に結論を書くと、各アベレージごとのオープンレンジは下記の通り。
アベレージ別オープンレンジ
100bb = 14.7%
50bb = 15.4%
25bb = 17%
15bb = 14.1%
10bb = 15.6%(AI 11.4% + open 4.2%)
なんと、最もオープンレンジが広くなるのは25bbの時でした。
そして、アベレージとUTGオープンレンジはリニアに変化するのではないというのがいちばんの驚きです。
それでは細かく各アベレージごとのオープンレンジを見ていきましょう。
1.アベレージ100bbのとき(14.7%)
まずは、アベレージ100bbにおけるUTGのオープンレンジ。
これが最もスタンダードなUTGオープンレンジかと思います。
2.アベレージ50bbのとき(15.4%)
このときはアベレージ100bbのとあまり変わりませんが、特徴は以下の通り。
44や、A3sといった弱いハンドのオープン頻度が下がる。
AJo、ATo、KQo、KJo、Q9s、98sのオープン頻度が上がる。
きちんとポストをレンジで戦えるのであれば、マージナルなハンドでもオープンする頻度を増やせるということかと思いますが、100bbのレンジをそのまま使っても問題なさそうです。
3.アベレージ25bbのとき(17%)
前述の通り最もオープンが広いアベレージです。
特徴は以下の通り。
44はオープンできなくなる。
T8sと98sというスーテッドコネクターのオープン頻度が上がる。
AToとKJoがオープンできるようになる。
なぜこうなるのかというと、IP(例えばBTN)からレイズされる率が下がり、さらにコール率が減るためだと思います。
具体的に、まずは同条件でUTGオープンに対してBTNのレンジを見てみましょう。
ここでのBTNのレイズ率は3.7%(49.2cmb)、コール率は15.3%(202.57cmb)となります。
それに対して、アベレージ100bb時のUTGオープンに対するBTNの戦略を見てみます。
ここでのBTNのレイズ率は5.4%(71.65cmb)、コール率は19.4%(257.23cmb)となります。
つまり、アベレージが浅くなってくると、IPといえどもアグレッションを上げにくくなることから、UTGのオープンレンジを広げることができるということかと思います。
参考
なお余談ですが、BBはアベレージが浅くなればなるほどディフェンスレンジが広がるので注意してください。(結構ここを知らない人も多いです。)
例えばアベレージ100bb時のBBのディフェンスレンジは以下の通りで、59.5%(788.51cmb)でディフェンスします。(スートは全てディフェンス対象です。)
これに対して、アベレージ25bb時は次の通りで、67%(888.01cmb)でディフェンスします。
結構な頻度でディフェンスが必要になるのでぜひ覚えておくことをおすすめします。
4.アベレージ15bbのとき(14.1%)
こちらは100bbの時とオープンレンジ率は大差ないのですが、内訳を見ると大きく変化しています。
具体的な変化は次の通り。
66以下はオープンが推奨されない。
A2s、A3sはオープンできない。
J9s、T9sのオープン頻度が下がる。
ATo、KJo、Q9sのオープン頻度が上がる。
ここからわかるのは、ESが小さくなることから、マージナルなハンドを避け、強いハンドに寄せてオープンしているということです。
また、まだAIが推奨されていないことにも注目です。
この辺りのポストフロップの戦い方は別途調べていこうと思います。
5.アベレージ10bbのとき(15.6%)
この段階にくると、オープンではなくプリフロップからAIをする割合が全体の73%を占めます。
GTO上は、マージナルなハンドと強いハンドを一部レイズに回し、それ以外を全てAIに回すということになります。
なおAI時のA含有率は約45%(= 68cmb/150cmb)となるので、UTGからのAIにはAハイの可能性が高いことを念頭に、コールするのかAIをかぶせるのかを検討するのがいいでしょう。
2.IPにスタックがカバーされている場合のUTGのオープンレンジ比較
ここでは、UTGよりもIPのプレイヤーがUTGよりもスタックを持っている場合のオープンレンジを検討します。
ここでは、50bb vs 25bb vs 15bb の3つのケースを検討します。
アベレージ別オープンレンジ
50bb = 16%
25bb = 15%
15bb = 14.1%(AI 3.3% + open 10.8%)
1.アベレージ50bbのとき(16%)
検証したスタック差は、UTG:29bb vs BTN:125bbです。
これは先に検証した、「1−1.アベレージ50bbのとき」とそんなに変わりないレンジです。
もう少しレンジがタイトになるかと思ってい他ので意外な結果でした。
ESから考えれば、「1−3.アベレージ25bbのとき」と同じようなレンジ構成になっていることから、ESによるように思います。
2.アベレージ25bbのとき(15%)
検証したスタック差は、UTG:30bb vs CO:63bbです。
今回はどちらもアベレージを超えています。
「1−3.アベレージ25bbのとき」と比べると、マージナルな部分(A6s、A3s、T8s、98s)が一部削られているのがわかります。
ESが浅くなっているので、ドローを追いに行くハンドを削っているという印象です。
3.アベレージが15bbのとき(14.1%)
検証したスタック差は、UTG:15bb vs UTG+2:30bbです。
この場合、オープンレンジ14.1%の内訳が、AI 3.3% + open 10.8%となります。
AIが少ないのが気になったので、UTGが2bbオープンした際のUTG+2のレンジを調べてみました。
そうすると次のスクショのように、コールはほとんどなく、残っているレンジの2/3ほどをAIが占めました。
さらに、UTGからAIをした際のUTG+2のAIレンジは次の通り。
AI or Foldとなり、かなり強いハンドのAIを受けることとなります。
アベレージが低くなってきた際は、IPにスタックがカバーされている場合AI頻度が上がり、かつその際のレンジは非常に強いものになっています。
そのため、UTGからAIをするのではなく、オープンしてAIを受けたらフォールドを検討するというアクションになるのかと思います。
以上が検証結果となります。
今回はポストフロップに焦点を当てたので、今度はポストフロップに焦点を当てて検証してみようと思います。