私には夢があります ー「同期のサクラ」を観てー
録画したまま溜めてしまっていたドラマを観た。引き込まれるようにたった2日で。僕にも同期がいて、ドラマの登場人物たちと重なるところもあって、自分でも驚くくらいに毎話泣いてしまった。
お話のクライマックスで流れる森山直太朗さんの歌がずるい。絶対泣く。
このドラマの好きなところ。それは、きちんと人間のリアルが描かれているところ。(ここからはネタバレも含まれるので見たくない人は見ないでください)
サクラと同期の10年間を、1話1年で見せる構成になっている。第1話の冒頭でいきなりサクラが意識不明で病院のベッドに横たわっているシーンがある。同期がそれぞれお見舞いに来て、サクラとの思い出を振り返ることで物語が進んでいく。
大手ゼネコン花村建設に入社したサクラは、新人研修で一緒の班だった同期4人と出会う。
自分の弱さを受け入れられない菊夫、自分の居場所を探し続ける百合、自分を信じることができない蓮太郎、自分の価値を見失い勝ちにこだわる葵。
誰にも忖度せず自分の思ったことを口にするサクラの姿に、最初は戸惑いを隠せない同期だったが、嘘のない真っ直ぐな言葉によってそれぞれの価値観を変えられる。
しかしサクラのその性格は会社ではなかなか受け入れられるものではなく、希望していた土木部ではなく人事部への配属になる。
普通ならそこから奮闘して土木部に移って...と予想されるかもしれない。しかしこのドラマは違う。サクラは最後まで土木部に配属されることはない。
そして、サクラの1番目の夢であり、このドラマの軸でもある「故郷の島に橋をかける」という夢も叶わない。橋としての基準はクリアしているが、絶対に安全とは言えないという事実を地元のみんなに隠し夢を叶えることもできたが、サクラはそれをしなかった。
その後、サクラは祖父を亡くす。幼い頃に両親を亡くしたサクラにとって最後の家族だった。
サクラを支え続けた夢と最愛の祖父を失い、建築を愛するあのサクラが働く意義を見失う。サクラのバランスが崩れる。
変わり果てるサクラの姿に4人の同期は結託し、サクラはやっと「仲間とたくさんの人を幸せにする建物を作る」という自分の3番目の夢に目を向ける勇気を持つ。
しかしそんな中で交通事故にあい、脳挫傷で寝たきりに。冒頭の入院のシーンと繋がる。
重い脳挫傷で意識が戻るのは難しいと言われていたサクラは奇跡的に目を覚ますが、”解雇通知” という厳しい現実が待っていた。
再就職先を探していたサクラだったが、かつての人事部の部長が副社長になりサクラの歯に衣着せぬ物言いが今こそ必要と、会社に戻ることを提案する。
サクラが眠っている間、同期の4人は自分たちで選択し進んでいた。その姿にサクラはモヤっとした感情を持ち始める。嫉妬のような、焦りのような、サクラに感情移入して観ていれば同じように感じることのできるものだった。
そうした感情もある中で会社に戻ったサクラは、副社長の近くで働くようになる。副社長はサクラに「力を持て。」と言う。そうすれば、サクラの発言は通ると。
その言葉通り、力を武器に決して他人に妥協を許さなかった。しかし所詮それは副社長を武器にしていただけ。権力を振りかざそうとする姿は、サクラでありサクラでなかった。
副社長の策略により社長は退任し、副社長が次の社長となる。会社は外資と合併することになり、かつての人事部の指導係がリストラ候補となる。そのリストラを止めたいサクラは社長に進言するが、その代わりにリストラ候補を決めろと命じられる。
それがキッカケで、改めて自分の力とは何か考える。そして気付く。
「私1人では何もできませんでした。私の力は仲間です。優秀な仲間さえいれば素晴らしい仕事ができます。どんなに辛くても自分は決してひとりじゃないと勇気が出ます。それが私の力です。」
サクラが変えた4人によって、サクラ自身が気付かされ、それこそがまさに本当の仲間であり、彼女の2番目の夢だった。
サクラは花村建設を辞め、小さな建築会社に就職。
百合は女性のための会社を起業し、葵は花村建設で自分の思う本物のリーダーを目指し、2人は一緒に生きていくことに。菊夫は仙台のNPO法人代表として仲間を束ね、蓮太郎も小さな設計事務所に就職。
入社から11年、道はバラバラになったが、5人は自分たちの行く道を見つけた。
最後にサクラはもう一度、自分の夢を語る。
ひっじょーに(非常に)すんばらしい(素晴らしい)ドラマでした。
ここ最近観たドラマでもトップ級に良かった。最後が美しい。
働く社会人として、ものづくりの端くれとして、グッと来るところがいっぱいあった。働くって、夢があるって、かっこいいじゃんと思わせてくれた。
ありがとうございます、って伝えたい。
huluで全話配信されてるので、まだの方は是非観てください。
劇中でサクラが好きな言葉として紹介していた言葉で締めます。
サグラダ・ファミリアをつくっている時に、ガウディが毎日スタッフに言っていたとされる言葉。