27歳の僕がこわいもの
海底。
幽霊。
鋭利なもの。
歯医者の音。
そして、
半年に一回の血液検査。
2019年、会社の健康診断で肝臓E判定と出た。
大きな病気をしたことはない。
不健康な生活…
それには少し心当たりがあった。
当時、自分の心が崩れる音が聞こえるような辛いことが起こった。
現実から逃げる方法を仕事とお酒しか知らなかった僕は、毎日ヘトヘトになるまで働いて、フラフラになるまでアルコールを体に流し込む生活をしていた。
そういえば検診前日の夕飯もチャーハンと瓶ビールだった。
完全にそれだ。
要再検査。自分の判断で必要ないと決めた。
お酒を控えればいいだけだと。
2020年、会社の健康診断で肝臓E判定と出た。
血の気がサーっと弾く感じがした。
お酒は控えていたはず。
焦った僕は検査をするために病院を予約した。
結果が出るまでの数週間。
生きた心地がしないとはこういうことか。
結果が出る日、先生の前に座ったら、今まで見たドラマのあんなシーンやこんなシーンが浮かんできた。
もしかしたら言われるのかもしれないと。
発された言葉は思っていたものとは違った。
「数値は確かに基準を大幅に超えている。しかし〜〜」
難しい用語を並べられて、詳しくは分からなかったけど、ある数値は高いがエコーも問題ない、それ以外の項目で引っかかるところもない。
原因が分からない、と。
お酒や生活習慣の見直しなど基本的な話をされ、また半年後に様子を見ることになった。
半年後、血液検査を受けた。
やっぱりある項目の数値だけが基準の倍近い数字が出る。
癌や他の病気の場合はこの項目だけでなく、他の項目の数値にも影響があるはずなのに、なぜか他は特に問題がなかった。
先生も困っていた、気がする。
そのまた半年後、年は変わり2021年。
検査項目を少し増やして血液検査をした。
この頃は半分良くなっているという期待と、どうせ変わらないだろうという諦めの気持ちだった。
結果は、変わらず。
しかし、数値の高い項目自体は、今すぐ命に関係あるものではないと言われ、安心…とは少し違うけど、自分の中で消化していた。
そしてまた半年後。
半年前にはあった半分の期待が、もう半分の諦めに押されていた。
採血で腕にアルコールを塗られる瞬間、結果を先生に聞くために診察室に入る時、椅子に座る時、一言目が発されるまでの間。
あんなに不安だったものに、全て慣れている自分がいた。
どうせ数値は変わらない、でも理由は分からない、そしてまた半年後、だろう。
「あれ、下がってるよ?」
いつもと違う一言目に、さっきまで落ち着いてたはずの心臓が急に慌て始めた。
何も言えないでいる僕を見て、先生は笑顔で、基準を少し超えてるけどこの数値なら問題ないね、よかった、そう言った。
そこで初めて、慣れていたと思っていたのは強がりで、実はまだ全然不安だったことに気付いた。
そして数値が下がったことに心から安堵している自分がいた。
結論として、なぜE判定になるほど高い数値が続いたのか医学的な理由は分からなかった。
でも数値が改善したその検査の2ヶ月前に僕は転職をしていて、それまでとは違い時間に余裕ができ、私生活でも心を修復する時間が持てていた。
科学的根拠は何もないけど、もしかしたら見えない何かがストレスだったのかもしれない。
それでも一度下がっただけ。
半年後にもう一度検査をすることになった。
2022年。
先日血液検査をしてきました。
結果はまだ聞いていません。
また上がってしまうのではと怖くなります。
だから聞く前にひとまず、記録としてこれまでのことを書いておきます。