デッサンは絵が上手い必要がない
今年に入ってすぐ、友人に「デッサンはおすすめ」と勧めたら是非やってみたいと言われたので彼の友人も呼んでデッサン会というワークショップをやりました。
きっかけはこばかなさん(https://twitter.com/kobaka7)がTHE GUILDで開催していたもので、それを真似したものです。自分でもやってみて気づいたこともあるのでメモしていきたいと思います。
手始めに、デッサンを他人に勧めると自分は美術はダメだからとか絵心がないので、と80%くらいの人にいわれて敬遠されるので、そんなことないと思う理由をかいてみます。
ワークショップの流れ
時間や参加者の具合で抜き差しありますが、だいたい3〜4時間くらい。慣れてない人がいたらウォーミングアップに観察スケッチを間にはさみます。
1. デッサンそのものの説明。
2. 鉛筆や練り消し使い方や、基本的な技法の説明。必要であれば適宜練習してもらう。
3. 実際にデッサンをする。
4. 時間がきたら全員の作品を並べてひとりずつ講評。
デッサンで大事な点は2つ
自分の場合、2つの点を気をつけて講評しています。
1. 観察しているか?
2. 描いているか?
「観察しているか?」とは、モチーフの形状や色を正確に捉えているか、模様や凹凸などをきちんと見ているかです。
思い込みで見ることなく目の前の事実にきちんと目を向けてもらうことが重要です。
次に「描いているか?」とは観察することで得られた情報をどれだけ伝えられているかです。
写真みたいにピクセル的な複写ではなく、色、形状、立体感、模様など、3次元の情報を紙に写し取れること、それらしく見えることが重要です
僕の中で、デッサンとは観ることと描くことの往復のなかで、本人が対象に向き合い、何に気づくことができて何に気づけていなかったのか認識する作業だと思っています。
デッサンをするのに絵がうまい必要はあるか?
本題ですが、個人的には絵がうまい必要はないと思います。
デッサンで鍛えるのは画力だけでなく、「対象から読み取る」能力と「読み取った情報を伝える」能力です。
画力とは、読み書きの精度=解像度を上げるための一種の技術です。絵が上手ければより正確に伝わるし、自身に対してのフィードバックの精度も上がります。
ただ、少なくとも絵が上手くなくてもデッサンをすることは可能で、ものを作る人や考える人にとって有用なスキルを伸ばすトレーニングになると考えています。
逆にこのトレーニングを続けることで、ものをみる解像度は確実にあがるし、描くスキルも上がるので、美術系の学校に行っていなくても、結果的になって画力は向上するでしょう。
実際に上記の考え方を教えながら描いてもらえば、エンジニアや総務、サウンドデザイナーのような人でも、十分に作品を完成させることができました。
デッサン見えてくる思考パターン
もう一つ、講評していくなかで、その人のものの見方や性格が、絵の進め方や作品に出てくることに気づきました。
思い込みが先行しているタイプの人は、りんごや玉ねぎをまん丸に書いてしまいます。また影の細かな表情とか、皮の模様の変化などを適当に書いてしまいます。
模様やディティールに興味が強い人は模様を書き込むことに夢中になってしまい、時間内に描き終わらなかったり、色や形状をおそろかにしがちです。
進め方についても、アタリを素早くとれる反面粘り強さに欠ける人がいたり、こだわりすぎて全然かたちを取れない人がいたりしました。
仕事や普段の生活にもこういう「思考の癖」が現れているのかも、と思うとそれもまた興味深いなと思いました。
デッサンをやってみたいと思った方へ
継続してやっていきたいと思うので、興味を持ってくれた方はぜひ声かけてください。3人くらいと少し広い部屋があればどこでもできます。ひとまず材料費と交通費くらいいただければ横浜〜都内であれば駆けつけますので。
メール:yd.niku@gmai.com
Twitter:https://twitter.com/doke
描け!
デッサンといえば、東村アキコさんの「かくかくしかじか」がおススメです。
東村先生の大学受験のお話なのですが、絵画教室の先生のとにかく「描け!」という哲学が自分の高校の時の先生の教えにも通じている気がしてすごく心に沁みました。
絵画教室でずっとティッシュ箱をかいているおじいちゃんのくだりが好きです。
やっぱ手を動かして何か考えるのは楽しい。