#65『トイレの話』Vol.1
今回は、『トイレの話』を取り上げてみたいと思います。
私のnoteの本来の主旨とは少し離れる話になります。私は、2021年の新年早々から入院生活を余儀なくされ、手術を経て入院生活が続いています。覚悟はしていましたが、腫瘍の摘出手術で、傷は痛みますし、酸素吸入でベットからは離れることができませんし、トイレに行くにしても点滴と常に同伴です。
4人部屋で10日余りが過ぎ、隣人のイビキなど各種ストレスにさらされていますが、その中で最大のストレスは『トイレ』です。
また、主旨に準えれば、『トイレ』は人類の歴史そのものであり、地域の歴史や文化に深い関わりあいを持つものということが出来ると思います。
行動範囲や情報入手にも制約がある中での断片的な『トイレの話』であることを御承知置き下さい。
「マヌカン・ピス」
ベルギーの首都ブリュッセルの中心にあるグラン・プラス広場から少しはなれた場所にある「マヌカン・ピス」は、観光名所のつです。観光客が数多く訪れるだけでなく、王様が衣装を送ったことがきっかけとなり、世界中から沢山の衣装が贈られることでも知られています。
「マヌカン・ピス」の愛称で親しまれている「小便小僧」の本名は、「プチ・ジュリアン」で、1619年につくられました。どうしてこの像がつくられたたかについては諸説ありますが、その一つは次の説です。「昔、戦場について行ったよちよち歩きの王子が、敵に向かってオシッコをしました。その態度に兵士たちは勇気百倍を得て戦いに勝利しました。」そのため、王子のポーズが平和の象徴とされました。
1987年には、「小便小僧」から少し離れた場所に妹の「ジャンネケ・ピス」の像もつくられました。
「カガネー」
12月に入るとヨーロッパの国々ではクリスマスに飾るツリーや人形を売る店が軒を連ねるようになります。スペインのバルセロナではカテドラル(大聖堂)を訪れる外国人観光客や地元の子どもたちも多く集まり、出店も賑わいをみせます。そのなかにこの地方独特のクリスマス人形の「カガネー」があります。
「カガネー」とは、「ウンコをしている人」という意味で、「ウンコ」までつくられている人形もあります。他にも「オシッコしている人」などの人形もありこれらはクリスマスに飾る人形の一つなのです。では、どうしてこうした人形を飾ることになったのでしょうか。その答えは次のようです。「クリスマスは、素敵なお祝いですが厳かで堅苦しい一面もあります。一方、「ウンコをしている姿」は、現実的で生活そのものの姿です。バルセロナ地ではこうした現実をしっかり見つめようとする意識や伝統がある」とのことのようです。
「窓から投げ捨てる」
スペインのカスティーリャ地方の都として栄えたトレドにもオシッコやウンコを「窓から投げ捨てる」風習があったことを窺い知ることができます。中世の街並みが多く残るトレドの道は、狭い石畳の路地が縦横に続いています。その道の真ん中には水を流れやすくするための溝がほられています。ただ、エチケットとしてまどから投げ捨てるとき、”気をつけて、水が行くわよ!”と掛け声をかけることになっていたようです。ヨーロッパの女性のハイヒールが登場したのは17世紀です。もしかすると糞尿を避けるために登場したのかもしれませんね。
「穴あき椅子」
ヨーロッパの石造りの建物には、トイレと呼べる場所がないところが多かったようです。フランスのヴェルサイユ宮殿にもトイレはなかったといわれています。宮殿には4,000人ほどが住んでいたといわれていますが、「穴あき椅子」が確認できているのは、274個で人数に対し余りにも少ないと言えるでしょう。使用人たちは外で用を済ませていたのではないかと考えられます。「穴あき椅子」は、時代や場所、地域により丸い椅子や四角い椅子など色々なものがあったようで、画家ヒエロニムス・ボスの絵の中にも描かれていますし、マドリードのプラド美術館の『悦楽の園』に描かれたもので知ることもできます。
「落とす」
ヨーロッパには、石造りの古い城が現在でも多くのこされています。お城のトイレは多くの場合壁から突き出た出窓のようなトイレがあり、そこから外に「落とす」方式がとられていたようです。『白雪姫』のお城のモデルになったスペインのセゴビアにある「アルカサル」は修理の際に取り壊されてしまったようですが、ドイツのシュタイナウ城などまだ多くの城で「落とす、出窓式トイレ」を見ることができます。また、日本の城では「熊本城」が出窓式トイレを使用していたことが明らかになっています。