
ヒンディー語の曜日を覚えたい
Duolingoを惰性で続けていたところ連続日数が900日を超えてやめられなくなっている。
最初に何語をやっていたかは忘れたが、確か1年前ごろからヒンディー語に切り替えており、ダラダラ進めている。
Duolingoのほかはニューエクスプレスをちょっと読んだくらいなので進行速度はすさまじく遅いが、読めなかった文字が読めるようになるという快感は大きく、シンプルに楽しい。
椎名林檎のアルバムジャケットとかのデーヴァナーガリーが読めたりする。
今は英語でいうと中一の冬ぐらいのレベルだと思う。
進行形とか未来形とか比較級とかは使えるけど、関係詞を使ったゴリゴリの文は難しいなというレベル。
ヒンディー語に関して困っているのが単語がなかなか覚えられないということである。
単語が自分の知識とあまり結びつかない
自分がこれまでそれなりにやったのはフランス語と中国語(普通話)とほんのちょっとのスペイン語だった。
漢字を使う中国語では意味の予想がつかないような単語に合うことは当然少ないし、フランス語やスペイン語もちょっと語源を調べると、「あー英語のこれと同じ単語から来ているのか〜なるほど〜」みたいな単語だらけで、すでに脳内にある英単語と結びつけながら語彙を増やしていくことができた。
ヒンディー語も語派は違えど、なんやかんやでインド・ヨーロッパ語族だし、結構語源が共通するものもあるのかなとかいう甘っちょろいことを最初は思っていた。
いざ始めるとその希望をことごとく打ち砕かれる。
もちろん数詞とか基本語彙とかでラテン・ギリシャ系の単語と共通するものはいくつかある(というかそもそもサンスクリットとこれらが似てたのが比較言語学の始まりだったと思う)
だが大半は調べても、 「ペルシャ語のこの単語からきているのかあ」とか「そっかマラーティー語のこの単語と同語源なのかあ」とか一般人の脳内に全くない単語と結びつくにとどまる。
曜日をなんとか覚えたい
そして中1の冬レベルとか言っておいてどうかと思うが、未だに曜日を覚えられていない。
日曜日 रविवार ravivār ラヴィワール
月曜日 सोमवार somvār ソームワール
火曜日 मंगलवार maṅgalvār マンガルワール
水曜日 बुधवार budhvār ブドワール
木曜日 बृहस्पतिवार bŕhaspativār ブリハスパティワール
金曜日 शुक्रवार śukravār シュックルワール
土曜日 शनिवार śanivār シャニワール
これがヒンディー語の各曜日である。-vārが「曜日」に相当する。
ちなみにヒンディー語では/v/と/w/は区別しないので、どっちで発音してもいい。まあむしろ/v/と/w/を区別する言語ってのが英語とフランス語くらいしかないような気もする。
木曜日に何があったのかわからないが、二度と忘れないようにしっかり語源を調べて頭にいれていきたい。
惑星なんてどう考えても由緒正しそうなので、さすがに既に知っているような基礎的な単語となんらかのつながりはあると信じたい。
あまりあてがないので信憑性はさておきwiktionaryで確認していく。
日曜日 रविवार ravivār ラヴィワール
サンスクリットのरविवार (ravivāra)からの借用語。
रवि (ravi) は太陽という意味で、印欧祖語の*h₂rewi-からきてるよう。
ここで*h₂rewi-が英語とかフランス語のあの単語とつながってるんだなーみたいなのがあると覚えやすいが見つからないのが悲しいあるある。
ちなみにस्वर् (svàr)という太陽を表す別のサンスクリットの単語はsunとかsolと同根だった。おしい。
月曜日 सोमवार somvār ソームワール
これもサンスクリットからの借用語。
सोम (soma)は月の意味でシンプル。これも印欧祖語まで遡れるが、英語とかフランス語とかには結びつかない。
火曜日 मंगलवार maṅgalvār マンガルワール
サンスクリットのमङ्गल (maṅgala) が固有名詞として火星を指して、形容詞でluckyのような意味があるらしい。
मञ्ज् (mañj, “to be bright, cleanse”)が関連してるようで、古典ギリシャ語のμάγγανον (mánganon, “charm”)につながるっぽい。
古典ギリシャ語にさえつながえれば、ラテン語経由でフランス語に受け継がれて英語に入り込んだりしてほしいところだが、名詞のmangle(動詞のmangleとは語源が別)という聞いたことのなさすぎる単語に着地した。洗濯後の絞り機とかプレス機ようなものを指すらしい。
水曜日 बुधवार budhvār ブドワール
サンスクリットのबुध (budha) 水星からきている。
情けないことにここではじめて気が付いたが、budhaに由来している。
この関連語の目覚めさせるという意味の動詞であるबोधति (bódhati)の過去分詞こそが「ブッダ; 目覚めた(もの)」であった。
週の折り返しに来てはじめて調べ甲斐を感じた。
ちなみに印欧祖語の*bʰewdʰ- (to be awake, to be aware)が、ゲルマン祖語で*beudaną (提供する)と意味が変化し、最終的に英語のbidとかforbidにつながっている。
こういう既存の知識と結びつけて忘れづらくする行為こそが求めていたものであり、全部こんな感じだったらいいのになと思う。
ただ対面でちゃんと先生から教わっていたら「ブドワールのブドはブッダと同じ単語から来てるんですよ〜」とか一瞬で知ることができていた気はする。
木曜日 बृहस्पतिवार bŕhaspativār ブリハスパティワール
明らかに見た目が浮いているのがこの木曜日である。
長さからして複数の単語が組み合わされていそうで期待がもてる。
サンスクリットのबृहस्पति (bṛhaspati, "Jupiter")からきており、 बृह् (bṛh, "to be thick. to increase")の派生語と पति (páti, “lord, master”)から構成される。
बृह् (bṛh)は印欧祖語の*bʰerǵʰ- (to rise, high)に由来しており、これはブラフマン(梵)につながる。*bʰerǵʰ-を下るとラテン語のfortis (強い)になり、英語のforceとかイタリア語のforteとかおなじみの単語につながる。
ちなみに*bʰerǵʰ-は、ゲルマン祖語で*burgz (要塞、都市)になり「-ブルク」とか「-ベルク」とかカンタベリーの「ベリー bury」とかの語源になっている。
पति (páti) はヒンディー語でも夫を意味する超基礎語であり、こちらは印欧祖語の*pótis (master, husband)に由来する。
この子孫であるラテン語の possō (be able to do)は、英語のpowerやフランス語のpouvoir、スペイン語のpoderなど、第二外国語を数コマやるだけでも触れるような超基礎単語の元になっている。
木星は「強い+主人」というわけで、巨大なイメージまんまである。
金曜日 शुक्रवार śukravār シュックルワール
金星を意味するサンスクリットのशुक्र (śukrá) に由来する。
一応同根の古典ギリシャ語やラテン語の単語は見つかったが、知っているような単語に結びつくものは見つけられなかった。
土曜日 शनिवार śanivār シャニワール
土星を意味するサンスクリットのशनि (śani)に由来し、शनैस् (śanais, “slow moving”)に遡れるが、これと同根の既知の単語は見つけられなかった(頂いたコメントを元に修正)
とりあえず2つは覚えられそう
調べる前の予想では、1個くらいしか知っている単語と結びつかないのではないかと思っていたが、意外と2つは結びつけることができた。
イコールではないが、ブドワール(水曜日)のブドがブッダと同根で、ブリハスパティワール(木曜日)のブリハスパティが強い主人的なイメージをなんとなく得られた。
天体の知識がゼロのため、水星がなぜ「目覚めさせる」につながるかが全然わからないが、これは今後の宿題にしたい。
*語源に関してはwiktionaryのざっくりした記載に頼っているので詳しい人は教えてください。