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京都大学特色入試傾向と対策
【自己紹介】
私は、2016年(特色入試初年度)に京都大学経済学部に特色入試で入学しました。論文試験では500点中317点でした。これは(おそらく)この年度の最高得点になります。
推薦入試専門塾での勤務経験もあり、小論文カリキュラムを作成や、京都大学特色入試をはじめとした難関大学受験生の小論文指導経験があります。
TwitterID:@yc5sh4
【概要】
京都大学経済学部の特色入試で課せられる論文試験では、課題文が非常に長く、難解なものが出題されます。試験時間も3時間で3,000字という他の論文試験とは大きく異なった試験です。そのため一朝一夕の対策では到底対応しきれません。
【出題の傾向】
まず、最も特徴的なのは課題文の長大さでしょう。先ほども述べたように毎年課題文は長く、難解なものが出題されます。特色入試初年度の2016年度に公開されたサンプル問題は経済学部の特色入試の前身である、論文試験の2008年の過去問でした。この年はA4で13ページあります。特色入試に変わってからもこれと同じ、もしくはこれより長い課題文が課せられています。また、各設問の制限字数を合計すると2,800字にもなり、これは日本の大学入試で課せられる論文試験の中で最も多い字数です。
課題文はA、Bと二つ出題されます。Aの内容とBの内容を比較したり、一方の立場からもう一方の立場を批判したりするような問題が課せられます。京都大学経済学部の論文試験では経済学に限定した内容の課題文の出題はまれであり、政治や文化などを含んだ社会理論や社会哲学に関して問われることが多いです。
設問の数は3問から5問程度問われます。意見論述はそのうちの1問の場合がほとんどで、その他の設問は課題文の要約問題や説明問題など、課題文の読解力を問うような問題が一般的です。そのため、小論文の意見論述問題に慣れておく他に、現代文の力をつけておく必要があります。
【答案を作成する際にあたって】
要約問題や説明問題では、当然ではあるが解答者の解釈や意見は記述しないこと。要約問題や説明問題の枠を超えて解答してしまう受験生も少なくないです。また、京都大学の小論文では課題文が膨大であることに伴って、要約問題や説明問題などの課題文の読解力をはかる問題においても、他大学と比べて多くの字数が配当されています。そのため、課題文の最重要概念(論点)だけでは制限字数が大幅に余ってしまうことが多いです。したがって、最重要概念だけでなく、いわば第二義的な概念を解答しなければならないのです。
しかし、第二義的な概念は数も多く、どこまでを解答に盛り込むのか、選別の基準も難しくなってきます。さらにその論旨は複雑になりやすく、解答の構成を工夫しなければならない箇所も出てきます。第二義的な概念について設問の要求と照らし合わせながら取捨選択しなければなりません。
意見論述問題では、当然解答者の見解を論述することが求められます。課題文に沿って解答することが求められますので、そもそも要約問題や説明問題で失敗、課題文の読解を誤っていると意見論述で合格の答案を書くのは困難です。課題文に沿って解答していることを採点官にわかってもらいやすくするために、課題文の重要概念の表現はそのまま用いるとよいです。
対策
京都大学の論文試験で課せられる長くて難解な課題文を読解するための読解力を身につけなければなりません。これは小論文の勉強というよりは、現代文の勉強でしょう。現役生は普段の高校の授業をしっかり聞き、その他の受験生も参考書などを使って読解力を鍛えましょう。
意見論述問題では解答者の意見、見解を客観的で論理的に論述することが求められます。普段、自分の意見を論述するという機会は少ないかと思いますし、そのような経験を豊富に持っている受験生は少ないです。そのため、要約問題などに比べて差が出やすい設問になります。また、3時間という試験時間は長いように思われるかもしれませんが、難解な課題文を読解し、3000字近い量を解答することを考えると非常に短いです。このような、他大学では見られない独特な時間の感覚に慣れるためにも、意見論述問題に慣れるためにも過去問を解くのが一番効率的だと考えています。また、一度解いた問題でも二度、三度と解くことで一度目では気付かなかった課題文の論旨に気づくこともあります。
また、意見論述にあたってある程度の知識が求められます。しかし、専門的な知識が求められるわけではありませんから、政治経済や現代社会などの教科書に載っていることぐらいの知識は知っておきましょう。「現代の問題を挙げて」などのように何か社会問題を提示することを求められる場合もありますし、そうでなくても主張の根拠として具体的な事例を挙げることは小論文において非常に重要です。対策としては政治経済や現代社会の教科書や、市販されている小論文のネタ本などを読むことが挙げられます。そのほかにも、日本の論点などを読んでおくのもよいでしょう。また、京都大学 の論文試験ではかなり 深い 議論が 求められます。そのため、 社会問題の根本的な原因や背景となる考え方を知っておくことも重要です。少し古い本ですが、「小論文を学ぶ(山川出版)」を推薦しておきます。