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熱源

好きなアルバムはと聞かれてパッと思いつくのがcinema staff「熱源」である。リリースは6年も前だし、それ以降リリースされた曲もあるのだが、ここは思い切ってマイフェイバリットアルバム「熱源」の解説してみよう。


「熱源」ここが好き

①演奏が最高
演奏がバチバチかっこいい。シネマのバンドサウンドは、打ち込みでは表現できない人間臭い、有機的なところが好きなポイントであり、「熱源」は特にその部分にこだわっているように感じる。細かいアレンジも良い意味で無駄が多く、演奏に注目して聴きこむと未だに新しい発見が得られる。

②歌詞の世界観
シネマの歌詞のスタイルは年代によって差が見られる。初期はクールな単語の羅列みたいなフィクションチックな歌詞が多く、メジャーデビュー後はメッセージ性を意識した歌詞が増える。両方にシネマの良さがあると思う。そして「熱源」の曲はその両方の要素を併せ持っている。

③10曲入り
個人的にアルバムは10曲がベストだと思っている。それ以上多いとアルバムの全体像が掴みづらくなる。アルバムに世界観が生まれ、それが崩れない絶妙な曲数が10だと思う。「熱源」は衝動的、激情、バイタリティ溢れる曲というコンセプトが一貫しているので、アルバム単位で聴きたくなる。10曲というのはアルバム単位で楽しみたいときにちょうど良いサイズ感だと思う。

④曲順のバランス
前半(ハイテンポ、高エネルギー、まさに熱源)~中盤(歌い上げるミドルテンポ)~後半(再度ボルテージを上げ、ロックバラードで完結)のフローが完璧。ただの曲の集合ではなくストーリーとか流れが感じられるアルバムがいいよね。

⑤全曲トレーラーが良い
全曲トレーラーにアルバムの世界観が凝縮されている。これを聴けば「熱源」が分かる。


各曲感想

①熱源
ドラムがテクい。パワフルだが地に足をついたロックミュージック。ギターが強く歪んでいてノイズに近く、ポップス志向の前作から意識的にモードを変えたことが分かる。歌詞はただ鼓舞するだけでなく、内省的な部分があるのがシネマらしいし、それがあるからこそ共感が大きい。

②返して
変拍子を交えながらも疾走感のある曲。アレンジが超絶シネマオリジナリティ。1番と2番でアレンジがガラッと変わり、1曲の中でストーリーがあるようにも聴こえる。大人のいる居心地の悪い世界から脱出する的なフィクションの歌詞がこれまた良い。

③pulse
ゴリゴリのベースから始まるダークな雰囲気の曲。これまでにも明るい曲、暗い曲、様々あったが、この手のダークファンタジーチックな曲はあまりなかったと思う。進撃の巨人のEDテーマ「great escape」と雰囲気が似ている?何なら両MVはロケ地が同じ。

④souvenir
曲のテンポは実は1~3曲目までとさほど変わらないが、歌詞の表現が暖かく、開放的なコード進行と相まって、1~3曲目までのアッパーチューンに比べて優しい世界観。音に対して詩を詰め込みすぎないので、歌が伸びやかで心地よい。

⑤メーヴェの帰還
Aメロ~Bメロ~サビのようないわゆるポップス的進行は使わず、目まぐるしく曲が展開していく斬新な曲。どこか戦争を思わせる歌詞の描写が緊迫感を醸し出している。ちなみにナウシカが乗っている小型飛行機の名前が「メーヴェ」らしい。

⑥波動
バラード的な優しい歌だが、実はかなり複雑なアレンジが採用されていて、他の激しい曲の中にも上手く馴染んでいる。この手の6/8拍子のミドルナンバーはシネマの得意とするところ。生命誕生の幸福感がテーマの美しい1曲。

⑦el golazo
シネマのアルバムに1曲入っている、"肩の力の抜けた曲"枠。海外サッカーのことを歌っているのは分かるけど、その界隈に明るくないのであんまり何を歌っているか分かっていない。ツインギターのアンサンブルが聞いていて楽しい。

⑧diggin'
ミドルテンポが続いたところへバイタリティの高い曲を投下するこの流れでテンションが上がる。タイトなドラムとベースでAメロを展開し、パワフルなサビでボルテージをぶち上げる。サビ後半の裏で鳴っているギターリフは屈指の名フレーズだと思う。

⑨エゴ
熱源はハイテンポで有機的な曲が多い中、この曲はハイテンポでありながら、同じフレーズの繰り返しや一定のドラムフレーズなどどこか無機質、機械的なな印象のある曲。拍子が取りやすいので、分かりやすくノレる。MVを見ているとお腹がすく。

⑩僕たち
シネマメンバーの一部が参加していた別バンドの曲のシネマアレンジバージョン。原曲の邪魔をせず、シネマらしさをプラスしたリードギターのアレンジが秀逸。後半に向けて徐々にテンションが上がっていき、アウトロでは強烈なノイズとともにアルバムを締めくくる。


総括

全体的に激しくも抒情的、このコンセプトが一貫して存在し、曲ごとそのアプローチが少しずつ変わってストーリーを生み出す。打ち込みではない、人間の奏でる人間らしい有機的なギター、ベース、ドラムのサウンドを味わいたいなら間違いなくこのアルバム。

ここまで読んでくれた人はいるのだろうか。もしいるのなら、トレーラーだけでも聴いてみてください。

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