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本当の失敗とは、挑戦しないことだ


失敗を評価する文化は大事じゃないのか

27歳で補正下着ブランドSpanxを立ち上げ、その14年後にはフォーブス誌で史上最年少のセルフメイド女性ビリオネアとしてランクインした、サラ・ブレイクリー氏がいます。彼女がSpanxを立ち上げる前、ファックスなどの事務機器の訪問販売をしていたことは有名です。それ以前は、父の仕事だった弁護士に憧れ、弁護士試験を受けるものの2度も落ちて弁護士の道を断念。ディズニーランドで働きますが、グーフィーの着ぐるみに入りたかったのに、身長不足で乗り物の案内係に配属。
 
当時のことをサラは次のように述べています。
 

「私はきっと間違った映画に出演しているんだわ。なんでこんなことが起こったの? こんなの私の人生じゃないでしょ?」なんて思っていたのを思い出します。「監督を呼んで、プロデューサーも呼んで。カット。こんなの違う」と大声で叫んでいました。

CNN Money

これだけ思うように人生が運ばなければ、卑屈になってしまうかもしれません。しかし、サラは土台が違いました。素晴らしい父の教えがあったのです。

子供の頃、父はよく私と弟に「今日はどんな失敗をした?」と聞いてきた。おもしろい質問だなと思っていた。そして、父は私たちの失敗を歓迎したの。1週間、失敗することがなければ、父はとてもがっかりしていた。私はよく「パパ! これをやってみたけど、全然できなかったよ」と話した。すると父は私にハイタッチして、「よくやったね!」と言ってくれました。

Business Insider Japan

 失敗したことを褒め、むしろ失敗しなかったこと、挑戦しなかったことを残念がっていた父の教えが染みついていたのでしょう。サラは、失敗の経験を生かして、起業したのです。ディズニーランドで働いていたとき、白いパンツに下着が透けて嫌だったことから補正下着を思いつき、ファックスの営業で断られることに慣れきっていたサラは、ダメ元で大物テレビ司会者に商品を送りつけて強引に売り込みます。その司会者はサラの生み出したSpanxを絶賛し、全米にその商品が知られるようになったのです。
 まさにシンデレラ・ストーリーですが、これは運によるものではなく、「失敗を恐れず、挑戦した」からこその成功なのです。

ピッチは失敗の宝庫だ

 日本でも有名なMBA、経営学修士。取得するためにアメリカのビジネススクールに留学する日本人も珍しくありません。ビジネススクールでは徹底して、ケーススタディを繰り返します。過去の事例を紐解いて、徹底的に学ぶのです。その現場では、成功したケースだけではなく、失敗したケースも学びます。
 私は、Entrepreneurshipを教えているので、少し手法が違います。徹底的にピッチを行います。ピッチとは、1分、3分、5分、10分という短時間で自分のビジネスをプレゼンするものです。
 ピッチは、起業家を目指す学生なら、誰しもがやるものです。当たり前のように日常的にやります。何度も何度も繰り返します。自分のアイデア、考えた事業に対して、共感を得ることを目的とします。ピッチを通じて共感を得て、自分に足りないリソースを何とか提供してもらうのです。
 私も夏休みに日本に帰国すると、日本の大学で集中講義を行い、学生に事業アイデアを練らせ、ピッチさせるというプログラムを実施することがあります。
  
 たった数分でビジネスを紹介しきれない?
 そんな短時間で練った企画なんて、穴だらけのはずだ?
  
 まず優れたアイデアなら、短時間でも伝わります。その秘訣については伊藤羊一氏の名著『1分で話せ』(SBクリエイティブ)から学んでください。どんなビジネスプランにも穴はあります。完璧なプランなんて見たことがない。まして短時間で考えたプランなんて穴だらけで当たり前です。では、なぜピッチを重視するのか。
  
 失敗してもらうためです。学生のピッチは失敗をする実験場です。企画の内容、話し方、どれをとってもだめなことのほうが多い。でも、何がだめだったか、身をもって知ることができます。レスリスクで失敗できる数少ない機会なのです。だから、私はピッチを重要視します。この本を読んでいて、すでにビジネスプランが頭にある人は、それを誰かにピッチしてみてください。そこで得られるものはきっと役に立つはずです。
  
「大事なアイデアを人に話したら盗まれるかもしれない」
  
 大丈夫です。盗まれるリスクよりも、そこで得られるベネフィットのほうが圧倒的に上回ります。


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