経営理念やミッションは本当に必要なのか
ミッション・ビジョン・バリューが必要というのは耳タコだと思います。
経営理念を作ろう、というのも同じことです。
私もまず、中小企業の経営のセオリーとして抑えています。
しかし、本当にこれが役に立っているのか、疑問に思うことが多いです。
■ミッションって本当に作れるのか
経営計画を作るにあたって、ミッションを作りましょう、と言われて、
はじめて「ああ、そうなのか」と思った経営者が、
ミッションをすぐに作れることは、まずありません。
もちろん、作ろうと思えば作れます。
・どのように地域社会に貢献したいですか?
・10年後、どうなっていたいですか?
・どんなサービスを世の中に広めたいですか?
こういった、「設問」への答えを、組み合わせればいいのです。
でも、
そういう即席ミッションは、ほとんどの場合、空虚なお題目です。
それなのに、経営コンサルタントがこう言い出すわけですよ。
「せっかくできたミッションを毎朝、社員に唱和させましょう」
「ミッションを組織に浸透させましょう」
「ミッションを貼りだして、誰の目にも見えるようにしましょう」
残念ですけど、
唱和させたところで、ミッションに共感する社員は増えません。
言わされてる。負の感情が湧くだけ。
もしくは無心・無感情。事務的な儀式としての唱和です。
本当にやりたいことって、これだったのかなって思うんです。
■会社にミッションが必要だと言い出したのは誰だ?
組織にミッションが必要だと最初に言い出したのは、ドラッカーではないでしょうか。
明確かつ焦点の定まった、共通の使命(=ミッション)だけが、 組織を一体化させる
(ドラッカー5つの質問より)
全くそのとおりです。
会社を経営していればわかることですが、毎日問題と機会の連続です。
すべてを相手にしていると、いつもその場しのぎの仕事になってしまいます。
だからこそ、やることを絞り込む。やらないことを決める。
それも、社長一人ではなく、
組織の共通認識で行うためのガイドラインが、ミッションだ!
とドラッカーは言っているのだと思います。
■どこの会社か知らないけれど・・・・
次のミッションを読んで、どこの会社か、分かりますか?
・お客様を原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。
・私たちは”みんなと暮らすマチ”を幸せにします。
・お客様の毎日に一番の満足をお届けします。
せめて、どこの業界の会社かぐらいは分かればいいのですが、
全く分かりませんよね(笑)
どういうわけか、詠み人知らずなミッションが世の中に多いのです。
これで、組織は一体になるでしょうか?
やるべきこと、やらないことを判断するためのガイドラインになるでしょうか?
地域社会に貢献する方法なんて、いくらでもあるわけですよ(笑)。
その方法を絞り込めなければ、ミッションの本来の目的は満たされません。
■まずは、「なぜ」を考えてみる
社員が仕事に前向きに取り組める条件の一つとして、
仕事の意義・目的が明確になっている
ということがあります。
この仕事をするといいことがある。やるべきだ。
そう腹落ちしていれば、モチベーションは維持できます。
ビジネスの教科書にならって、
ハリボテのミッションを作るくらいなら、
戦略と戦術をしっかり理論立て、社員に説明するほうがよほど有効です。
ミッションなんて考えたことがなかった、という経営者には、
「5年後、10年後、会社をどうしたいですか?」
「なぜそうなりたいと思うのですか?」
「なぜそこを目指すんですか?」
「どうしてそこで勝てると思うのですか?」
とWhyを重ねて質問し、因果関係を整理します。
よそ行きの言葉で考えられたミッションよりも、むき出しの欲望に基づく、ウソのないビジョンと理論。
こちらのほうが、よほど説得力があります。
それを実現することで、会社が大きくなり、社員の給料もスキルも上がる。
じゃあ、なぜそのビジョンを実現するのか、ということを、
外部環境分析や内部環境分析の結果と組み合わせて、筋の通ったストーリーにするのです。
■人は私的な本音に動かされる
経営理念やミッションを作ることに意味がない、と言っているのではありません。
意味のない理念とミッションが蔓延している、と言っているだけです。
人を心を動かすためには、どこかで聞いてきたような話、借り物の道徳、ありきたりな言葉では足りません。
経営者が本当に思っていること、個人的に感じていることを軸にするべきです。
経営者が事業を成長させる理由には、お金持ちになりたい、という気持ちもあるでしょう。
でも、本当にそれだけでしょうか?
数あるビジネスの中で、なぜそれを選んだのか。
どうして、今やろうとしていることで成功すると考えているのか。
やろうと思ったけど、あえてやらなかったこととその理由はなにか?
最初は、まとまっていなくてもいいので、紙に書いてみてください。
言葉にすることが大切です。
やってみるとわかりますが、しっくりくる表現って、なかなか出てきません。
それでも、ぜひ自分で書いてみてください。
これを始めると、今までなんとも思わなかった新聞記事、広告のコピー、映画のセリフなどが、あなたのアンテナにキャッチされるようになります。
こうして、ぴったりな表現を探す過程が、とても大切なのです。
自分の気持ちと真剣に向き合わない限り、社員が共感するミッションはできません。
それまでは、無理にミッションを固めることはせず、
今やろうとしていることの理由や勝てると思う仮説を、繰り返し社員に説明しましょう。
そうやればうまくいくかもな、と思ってもらったり、今は検証の段階だからうまくいくかどうかはわからない、など、社員の方も理解してくれるようになります。
その方が、よほど誠実で浸透すると思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?