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「原価」を正しく理解すればもっと受注できる

先日、顧問先(製造業)の経営者さんに、売上アップの施策について相談されました。私はまず、既存の納入先にもっと商品を売ることを考えたのですが、社長さんからこんな返答を受けました。

「そうなんですよ、オオタケさん。納入先のA社さんから、もっと取扱商品を増やしたいとオファーがあったんですけど、見積もりが合わなくて、お断りしたんですよ」

「先方の希望価格と、貴社の見積もりは、どのぐらい差があったのですか?」

「先方は1500円を提示してきたのですが、こちらの原価を積み上げると、1800円だったのです。これでは原価割れですよね」

確かに、単純に比較すればそのとおり。
でも、これだけでは判断できないんですよ。

原価を変動費と固定費に分けて考える

原価は、変動費と固定費に分けて考えないと、採算割れかどうかの判断ができません。

  • 変動費:販売数量・製造数量に応じて増えたり減ったりする費用。材料の仕入、水道光熱費、運賃など。

  • 固定費:販売数量・製造数量がゼロでも発生する費用。人件費、工場の家賃など。

こうして原価を2つに分類し、変動費よりも高い金額で売れば、利益が出ます。固定費は製造しなくても発生します。だから、稼働を上げれば回収できるのです。

たとえば今回の事例だと、原価は製品1個あたり、1800円でした。社長さんに内訳を聞いたところ、材料や運賃などの変動費は1100円。工場の人件費や家賃などの固定費が700円でした。

1300円で販売すると、1個あたり200円の粗利益が出ます。固定費を増やさない(人を新しく雇わないなど)で販売数量を増やせば、どこかで回収できますよね?

すごくシンプルな例にします。

この会社の固定費が、会社全体で7000円だとします。
取り扱うのは製品Aのみ。変動費は上記の通り、製品1個あたり1100円。

Aを10個作った時、製品1個あたりの固定費は、700円(7000円÷10個)です。

これが、1800円という原価の内訳です。

ここで、1300円でいいから受注して、35個販売すると・・・

1個あたり200円の粗利益が稼げて、35個で粗利益は7000円です。でも、固定費は7000円ですから、会社としては損益トントンです。

原価割れで販売しているのに、赤字にならないんですよ。

からくりはカンタン。固定費は10個売っても、35個売っても、50個売っても、会社全体では7000円で変わらないから、売るほど儲かるんですよ。

だから、単純に原価割れだと判断するのは、とってももったいない。

今回ご相談いただいた社長さんの会社は、まだまだ工場の稼働率に余裕があるとのことでしたので、変動費が回収できる売価であれば、受注したほうがいいですよ、とお話させていただきました。

原価を見積もって、1個あたりの金額を計算すると、作るほどコストがかかるように錯覚してしまうんですよね。固定費は、数量に関わらず変わりませんから、想定販売数量×粗利単価>固定費となるなら、儲かるのです。

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