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競合に合わせてブラック企業になるべきか

「ウチも競合のように、みなし残業を活用してブラック企業になるべきではないか」という相談を受けました。

まず、みなし残業=ブラック企業、ではありません。固定残業代の前提となる残業時間を超過した分は、キチンと精算すべきです。

それは大前提として。
今回話したいのは、他社がやっているから自分もダークサイドに落ちていいのか?ということを、財務戦略の観点から考えてみます。

まず、この経営者さんは、なぜ長時間労働をしてもらったほうがいいと考えたのか?というところから紐解いていきます。

売上は増えている。社長の自分も忙しい。
だけど、手元のおカネが何故か増えない。

これが、その社長さんがブラック企業化を考えたキッカケです。社長さんから見れば、もっと社員に働いてほしい。給料に見合った働きをしていない。だから、売上が増えているのにお金が増えないと思ったんですね。

まず私が感じるのは、売上が増えるときはだいたい、お金は増えません!ということです。

売上が増えてるときには、こんなことがありますよね?

  • 増える業務を吸収するために、社員を増員する。採用広告が先行して必要になる。

  • 増えた社員に備品を供給する。

  • 教育のために、先輩社員の業務効率が下がる(同じ人件費で、さばける業務量が減る)

  • 運転資金が増える(仕入や人件費の支払が、売掛金の回収より早ければ、お金が出ていく)

だから、お金が増えない=社員の働きが悪い、と結論づけるのは早いんです。

そもそも、業務量に対して適切な人件費の基準があれば、社員の働きが悪いのかどうか、判断できます。

私が使う基準は、以下の2つです。

①労働分配率(粗利益÷人件費)
粗利益は、売上から変動費(仕入・外注加工費・運賃や水道光熱費など、売上の増減に合わせて増減するコスト)を引いたもの。粗利益÷人件費が50%を超えていると、人件費がかかりすぎです。50%を下回ると効率的ですが、下がりすぎると、社員の負担が重くなります。

②一人あたり付加価値(粗利益÷社員数)
粗利益を社員の人数で割り算します。フルタイムで働かない、パート社員、派遣社員は、ひとり=0.5人でカウントします。一人あたり付加価値が800万円を超えてくると、会社が黒字化することが多いです。

決算書、もしくは月次試算表を使って計算ができます。

本来ならば、会社の儲けの構造、お金の流れをしっかり分析する必要があります。どこでお金が足りなくなっているのか?

もしかすると、売上を増やそうと思って、利益率の低い案件を増やしているのかもしれません。それは、社員の責任とは言えません。また、誤った節税により、資金が流出していることだってあります。

会社のおカネの流れをしっかり把握できれば、正しい意思決定ができます。

という話をしてもいいのですが・・・それよりも前に考えることがあります。
ブラック企業になって、本当に成長を維持できるでしょうか?社員が疲弊して、他社へ移ってしまったら?コストを掛けて採用した社員がすぐに離職したら?

それよりも、ウチの会社は社員を大切にします!ということをしっかり訴求して、よい人材を集めるほうが、ずっと得な気がします。

私は財務の観点から経営戦略を作るのが得意です。
でも、それより大切なのは、会社のあり方だと思うんですよね。


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