かわるに、かあらん~高知県地方創生プロジェクトにかけた男たち~
REVIC(地域経済活性化支援機構)から派遣された主人公が、高知県のとあるまちの観光を立て直していく物語。
タイトルは、高知の方言で「変わろうとしているんだから、きっと変わっていくだろう」という意味だそうです。
マンガであっという間に読めてしまう内容。地方創生プロジェクトが、実際に現地でどのように進められていくのかを知るのにはいい入門編の内容だと思います。
(少し話がうますぎる気もしますが、実話のようなので、現実はこんなもんなのかな?と。)
地域資源は豊かなのに、観光客が減っていき、宿泊施設が廃業していく現実を目の前に、東京のREVICから派遣された主人公の言葉。
「しいて言えば…、いろんな要素がバラバラ…。要素ひとつひとつが同じ方向を向いていない。全体をまとめる統一したコンセプトがないんです。
観光エリアとして認知度を上げてブランド化するには、それをはっきりさせる必要がある。「何を」「誰に」「どのように届けるのか」。それが立っていないと、既に認知されているほかの観光エリアに負けてしまいます。」
実際に地元の観光事業に少し足を突っ込んでみて本当にそう思う。個々の要素は良いのものがあったとしても、それらがまるで繋がっていない。受け手として見たときに、一つのものとして見えてこない。
まず必要なのはマーケティングですね!
「WHAT:何を」「WHO:誰に」
「HOW:どのように提供するのか」
2W1Hを考える。それがマーケティングの基本です。
マーケティングって、それだけじゃないのになぁ~、というツッコミは置いておいて、基本的には本当にそう思う。
誰にこの観光地の魅力を伝えたいんですか?数ある魅力のうち、どの魅力を伝えたいんですか?どうやって伝えるんですか?
残念ながら、それに明確に答えられる人がほとんどいない…。
観光で一時代を築いた過去が逆に仇になって、とりあえず良い場所だから、昔人気のあった場所だから、情報発信さえちゃんとすれば、昔みたいに観光客が戻ってくるんじゃないか?って…。そんなに甘くはないと思います。
昭和の時代のように、「私をスキーに連れてって」が流行れば、みんなスキーをする、テニスがテレビで取り上げられれば、みんな高原リゾートでテニスをする、人面魚が出たといえば、みんな人面魚を見に行く。(笑)
そんなに単純な時代じゃなくなっています。顧客ニーズがあまりにも多様化しすぎて、「モノ」から「コト」へのニーズ変化が激しすぎて、通り一辺倒のアプローチではお客さんの心に響かなくなっています。
「何を」「誰に」「どのように届けるのか」。
そしてマーケティング的に2W1Hを整えた上で、さらに必要になるもの。
訪れた人とこの土地を感情的に結び付けるストーリー性です。この土地で、観光客それぞれに、かけがえのない物語を作ってもらうんです。
観光客は単に、綺麗なものを見た、美味しいものを食べた、いい買い物をした、もちろんそれも大切ですが、それだけではこの「心の時代」には本当の意味では満足しないと思います。
心が豊かになった、日常がよりワクワクするものになった、忘れられないひとときになった、そういったそれぞれの物語をいかに感じてもらえるか、それが大事なんではないでしょうか?
提供側としては、そういった物語が作られやすい環境、感じられやすい状況を、いかにセッティングできるかが勝負の分かれ目になるのではないでしょうか?
この歩みが、地域で働く人々に浸透し、次の世代に繋げてもらえるように。そして、それを受け継いだ彼らが、このまちの未来を創ってくれることでしょう。
最終的に大切なのは、地元の人たち。地元の人たちがどれだけ自分ごととして取り組んでいけるか。そしてそれをどれだけの人が受け継いでいってくれるか。
やっぱり東京とかから来る人達は一時的な効果しか出せなくて、最終的にはそれをずっと継続していくのは、まちの最終形を追い続けるのは、そのまちに住む人たち自身。
地元の人たちが、自分の住むまちのために、どれだけ本気になれるか?にかかっているのだと思います。
そして、そのまちの未来のためには、多少のいざこざや、過去の軋轢を乗り越えて、どれだけお互いに譲歩しあい、まちの未来のために力を合わせられるか、そこにかかっているのだと思います。
「変わろうとしているんだから、きっと変わっていくだろう」
この本のタイトルの通り、まずは「変わろう」と本気で思うこと。そこからすべての変化は始まっていくと思います。
長野県茅野(ちの)市に住みながら、仕事のメインは東京です。ファイナンスやマーケティング、自己啓発や脳科学・心理学、素敵な言葉が散りばめられた小説やエッセイなどレビューしながら、自分が日々感じていることを綴っていければと思ってます。田舎LIFEの良さも伝えられたらいいな。