なりたかったものは大統領
あまりにもこういう文章を書くのが久々すぎて。
初心者かというぐらい手探り状態なので、リハビリがてら思い出話を書こうと思います。
私が小学生のころ、「将来なりたいものは何ですか?」を書く、という子供時代の通過儀礼的な授業があった。
自分は何を書いたのか全く覚えてないのだが、クラスの中の男の子が
「大統領になりたい」
と書いていた。なぜそれを知ったのかはあまり覚えていない。教室に張り出していたのか、先生が生徒の中からピックアップしていったのかはわからないが、それを知った先生が微妙な表情をしていた気がする。
「そうか、M君は大統領になりたいのか」
私はそれを聞いた時、大統領ってよくわかんないけどなんかすごそうだ、なんてビックなことをいうやつなんだ、という強烈な印象を持ったので、わりに大きくなってもそのことを覚えていた。
後で私も知ることになるのだが、日本は大統領制ではないので、大統領になることはできない。
それを知った私は、ある一つの疑問が浮かんだ。
「M君はなぜ大統領になりたいなんていったんだろう」
M君がそう夢を語ったときからすでに数年たち、私自身、転校もしていたので、M君にそれを聞くこともかなわない。そもそも私も自分の夢も忘れていたのというのに、M君がそれを覚えている保証もない。
想像するに、ドラマやニュースで見たアメリカやどこかの国のの大統領を見て、なんかよくわからんけど一番偉い人間に違いない、かっこいい、ぐらいの感覚で書いたのだと思う。
その時に総理大臣という選択肢はなかったのかと思うのだが、子供心に大統領というものが華々しく映ったのかもしれない。
これが本気の話だったら、M君は大統領制の国へ移民して国籍を取り、移民であるという偏見を乗り越え、政治キャリアを積み、国民から国の代表者として選ばれなければならない。
映画ができてしまうような話である。
そんな話はいっさいきかないので、M君はおそらくごく普通に日本で暮らしていると思われる。
たまにふっと思い出して、「大統領になりたかったM君はどうしているのか」などと考える。
結婚して家族をつくっているとか、もしかしたら会社や店などを起業してリーダー的なものになっているかもしれない。
そうだとしたら、せっかくなので、
「ここでは俺が大統領!」
などといって人生を歩んでくれればなあ、なんて思うのであった。