忘れがたきタラの天ぷら
あまりにもこういう文章を書くのが久々すぎて。
初心者かというぐらい手探り状態なので、リハビリがてら思い出話を書こうと思います。
その夜のおかずは天ぷらだった。
母があげた天ぷらをつつきながら、夕食を囲む家族。
なんのきっかけかは忘れてしまったが、私が環境問題について熱く語り始めると、家族は「おお」とばかりに聞き入りはじめた。
みな、真剣な顔つきで私の話を聞いている。
こういうのもなんだが、ポンコツな私の話を家族が真剣に聞いてくれる機会はそんなにないので、私はかなりテンションが上がっていた。
家族の空気は完全に「いいぞ、いいぞ」になっている。
そんな熱い状況で話が佳境に入り、母も相槌を打ってくれた。
(と思っていた)
「そうよ!」
おお、かあさん、私の話をそんな風に熱く聞いてくれるのか。
(と思っていた)
「タラの天ぷら!」
母はそう叫び、椅子から立ち上がると、キッチンへと姿を消していった。
ぽかんとする私、家族を残したまま…。
熱かった空気は一瞬に冷め、私は続きを話す気力を失った。
あまりにも唐突すぎる母の行動に、ほかの家族も引いている。
「タラの天ぷら」をあげきったらしい母が、戻ってきたときは空気が冷めきっていて、今度が母自身が「どうしたの?」とぽかんとしている。
あとできいてみると、私の話を聞きながらも意識は天ぷらにとんでいたらしく、「タラの芽をあげるのを忘れていた」ということを思い出したらしい。
母はよく突発的に行動を起こす。
家族内で着いたあだ名が「思い付き婦人」。
わかっていたとて、誰が「タラの天ぷら」と叫ぶことを止めることができようか。
「人間、何を考えているのかわからんな」
私はある種の教訓を得ることとなり、私の心の中で「タラの天ぷら」は忘れがたいものになってしまったのだった。
#エッセイ
#執筆リハビリ中
#思い出話
#天ぷら
#唐突な母