ドールステージめっちゃ良かったよって話
6/1から5日まで渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールにて上演された舞台「DOLL」を3日土曜日のマチネを観劇して来ました。その感想や思ったことをつらつらと書いていこうと思います。一部ネタバレを含みますので、まだ観ていないという方は京都公演をご覧になってから読んでください。
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さて、この舞台は玉梨ネコ氏の「リタイヤした人形師のMMO機巧叙述詩」を原作とする舞台作品。
今回は(も)西葉瑞希さんの他、絶狼でお馴染み藤田玲さん、レヴュースタァライトなどに出演されている岩田陽葵さんなどがキャスティングされています。
存じ上げてはいるけども舞台で見たことのないという方ばかりでしたし、初めて見る作品でしたし、初めて行く会場でもあり、何より私の友人が携わっていると知って、いったいどんな舞台になるのかとても楽しみにしていました。
・幕が上がった瞬間が好き
幕が上がれば舞台セットが見えて来るじゃないですか。やはり舞台は役者だけで完結はせず、舞台美術や音響や照明など何ひとつ欠けては成り立ちません。
その道のプロたちがさらに鮮明に物語を彩るセットの細やかな作り込みやその迫力が見れるのが、舞台が始まるそのワクワク感とも合わさって凄い好きなんですよね。
とくに今回舞台後方に設置された歯車のような、単眼鏡のようなモニター。人形から見た視線を映し出したりされていましたが、こうしてただ置いてあるわけではなくしっかりと劇中内でも活用されているのがいいですよね。
・流れるような早着替えと所作
「DOLL」においては現実世界と仮想世界ふたつを行き来します。なので、それぞれで格好が異なるのですが、舞台袖に消えたなと思ったら和装衣装から私服になっていたり、スチームパンク風の衣装からカジュアルな格好になっていたりと、「えっ、いつの間に着替えたん?」ととにかく衣装チェンジが早いこと早いこと。
舞台上でも衣装が変わったりしていましたが、アンサンブルの方々がスルッと脱がせたり、逆に着せたりとその淀みのない早着替えがほんと素晴らしかった。
それに合わせて、小道具として額縁のような枠がこの「DOLL」においては多用されていた。人がひとり潜れるぐらいのものから、車一台ぐらい入りそうな大きな物まで。
その額縁を用いて現実世界から仮想世界に向かうゲートのような役割であったり、テーブルを表したり、あるいはポップアップウィンドウを表現する。これをひとりないしふたりで交互に持ち替えたり手渡したりとするのだが、とにかくアンサンブルキャストのみなさん忙しいそう。このやりとりもきちんと息を合わせていかないと動きがぎこちなくなったり取り落としたりするであろうが、めちゃくちゃ稽古したんだろうなと感じさせるほどにスムーズなのが素晴らしかった。
・細かいといえば……
「DOLL」という名前だけあってこの物語は人形師のお話である。その人形もキャストのみなさんが演じるのだが、ロボットダンスのような、あるいは人形に魂が吹き込まれ今まさに自分の身体の動作を確認するような動きだったり、飾られている人形を表すようにピタッと動きを止めて佇む姿はまさに人形そのものであった。
舞台の幕が上がってすぐはまさにそんなシーンから入ったが、「あぁ、人形の話なんだな」と物語にスルッと入り込むことが出来た。
・キャストのみなさんの演技がほんと素晴らしい
今回、ボコボコに殴る蹴る踏み潰すと暴力シーンが多い。途中で小道具で柄の長いハンマーを用いるが、あれ少なくとも柄の部分はちゃんと木で出来てましたよね? 取り落とした時にちゃんと木の音がしたので「マジか」って思いながら見てました。
生半可な演技ではキャラクターの怒りや憎しみの感情は我々観客たちには伝わって来ない。悲痛な叫び声や苦悶の声、痛みに顔を顰める顔を見せられなければその痛みは伝わってこない。でも、見ていて痛々しいというかかなり心に来るものがあった。
とくに、ズィーク役の松本幸大さんの叫び声というよりも雄叫びをあげるような、その悲痛な声が凄かったなと。最後のカーテンコールの時とか声枯れていたのではないか? と心配になるぐらい、でもそれぐらい全力で挑まれていたんだなと感じさせる。
そのお陰で、劇中でいろはに対する憎しみや怒りや苦しみを持っていることが伝わって来た。ヴラァボォ!!
・殺陣も大迫力でカッコよかった!
今回、西葉さんことミコトが日本人形みたいでダボったい感じで「これで戦うの?」思っていたのですが、実際に動いているところ見ると全然そんなことなくって、なんなら靴はブーツだったりしたし、動いているの見ると全然印象変わりますね。9号とかもウェディングドレスのような衣装でしたが、裾が翻ったり、バク転した時の動きだったりめちゃくちゃカッコよかったなって。
欲を言えば、もっと藤田さんが戦う様を見たかった!! スーツ姿も仮想世界内での衣装もどちらもマジで佇まいからイケメン。そういや、舞台で見てた時インナーもっと透けてたというか網網な感じだった気がするけど見間違い?
・胸に刺さる問い掛け
作り上げる過程に固執するあまり完成した作品には興味がないんだね、所詮はゲームのデータ、壊れたら作り直せばいい、現実を見て……などなど少しニュアンスや言葉尻は違うかもしれないが、振り返れば自分たちにも当てはまるようなセリフがいくつも出てくる。
勉強するスペース確保するために掃除して満足しちゃうとか、欲しいキャラクターを出すために何万円も注ぎ込んじゃうとか、ちょっとボタン取れたぐらいでさっさと捨てて新しいもの買っちゃうとか、ついついそういうことやってしまっていないかと考えさせられてしまった(というか身に覚えしかない)
それらに通じるキャラクターたちの苦悩や目を逸らして来たことに向き合っていくその様に、見終わったあとの感情といったら今までにないぐらいだったと思う。
・もしこれを制作側の偉い人が読んでいたら……
「なんでキャストブロマイド出さないんですか??」
と私は声高に問いたい。いや、絶対売れますよ。ってか売ってくれ。
ほんと今回出演されたキャストのみなさん、アンサンブルからマスコット(?)のMONSAEMONまで、綺麗でカッコよくて可愛くって衣装とかもめっちゃ力入ってるなと感じさせてくれます。
アンサンブルの方々が身につけていたスチームパンク風の衣装とかも、インスタとかで上がるオフショ見てるとほんと造形が細かい。
衣装だって仮想世界と現実世界で二種類あるわけですし、それぞれで様々なポーズや表情を見せるキャストのみなさんを手元で形で残せるようブロマイドが欲しかったなーと思います。
・こんなにも拍手が鳴り止まない舞台は初めて
舞台が終わり、観客席から拍手が湧き上がりましたがキャスト全員が登壇しても拍手が鳴り止まなず、スタンディングオベーションまでする方がいらっしゃる舞台は初めてかもしれません。
でもそれだけキャストのみなさんの熱演や、この舞台に携わっている方々がここまで積み上げて来た結果なのかなと思います。
素晴らしい舞台をありがとうございました。
京都公演も、最後まで誰ひとり欠けることなく無事に千穐楽まで完走出来ることを祈っております。