【小説感想】ハーメルンの誘拐魔 刑事犬養隼人**中山七里

映画「ドクターデスの遺産」の原作小説の3作目の作品。
今回は、2作目の「七色の毒」とは違って長編です。

この作品はとある少女が誘拐されるところから始まります。
今回のテーマはまた医療もの。
今回は子宮頸がんワクチンに纏わるお話です。
少女が誘拐された場所からは犯人が残した絵葉書が見つかります。
そこに描かれているのがハーメルンの笛吹き男。
その絵になぞらえるように、次々と少女が誘拐されていきます。

誘拐時の目撃情報も一切なし、遺留品も指紋も残されておらず、犯人の絞り込みも難航。
そんな中次々に誘拐は続きます。
計7人の少女が誘拐されたところで、それまで一切何の要求もしてこなかった犯人が1人10億円、計70億円もの身代金を要求してきます。

今回は本当に最後の最後まで、全然犯人が見えてこない展開で、続きが気になってどんどん読み進めてしまいました。
私は子宮頸がんワクチンの話題が持ち上がった頃既に大人だったため、「私には直接関係ない」と、あまり詳しく情報を受け取っていなかったため、具体的にどんなものなのか、そこにある課題や問題点などあまり知らずにこの物語を読みました。

文庫本のラストに載せてある解説では、今回のこのテーマと描かれている展開について、「いささか偏りがあると感じた。」と書かれています。
確かにその通り。
今回はある一方の視点でのみ描かれているから、その物語が全てではないし、善と悪はその者の置かれている立場によってどちらにも転ぶものだと思います。
けれど、だからこそ、どんなことに置いてもメリット·デメリットをきちんと理解し、判断していかなくてはいけないのだなと、今回読み終えて感じました。

ちょうど今、世界中が直面している新型コロナウイルスの問題においてもしかり。
近い将来、日本でもワクチンを摂取するかしないかの選択を、各々がしなければならない時がやって来るでしょう。
その時、なにも考えずに受けるのではなくて、きちんと副反応の情報も理解した上で判断したいと思います。
国からも、メリットだけでなくデメリットの情報もきちんと提供して貰えることを願います。

1作目も今回の3作目も、映画化された4作目のドクターデスの遺産も医療もの。
なかなか普段、何事もなく生活していると触れることのない難しい問題ばかりですが、全てにおいて他人事ではないんだからこの機会に少しそれらの事を考えるのもいいかなと。
この犬養隼人シリーズがいいきっかけになりした。

この後にまだシリーズが続くとして、今度はまた別の医療系をテーマにするのか、はたまた違うテーマにするのか、その辺も気になります。

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