aikoの新曲、『skirt』が難しすぎるので頑張って理解してみた
概要
2024年8月に発売されたaikoのアルバム『残心残暑』に収録されている『skirt』という曲を聴きました。休みの日に出かけた先のお店のBGMでたまたま流れていたのを聴いたんですが、あまりの不協和音ぶりに、まっすぐ歩けなくなるかと思いました。車の運転中だったら危なかったかもしれない。YouTubeでaiko公式チャンネルがMVをアップしてくれているので、皆さんもぜひ聴いてみてください。映像もめっちゃ可愛いです。おそらく水着と思しきシーンもあり、1曲通して聴く間に7,000回ぐらい「こんな48歳が実在するのか?!」という気持ちになります。
最近、ギターの練習と合わせてちょこちょこ音楽理論の勉強をしており、流行りの曲を聴くたびに「ふむ・・・。キーがこうでこういうコード進行ね・・・。なるほど・・・。」という、観客席で腕組みして(誰も求めていない)解説をするおじさん仕草をしています。実際のところ誰にも求められておらず、生活や仕事の何の役にも立っていないのですが、少しでもaikoに近づきたいという一心で『skirt』を素人なりにコピーしようと頑張ってみました。そのメモをここに書き残します。
曲の構成
skirtは、だいたいこんな感じの構成になっています。
1番〜2番〜間奏〜最後にサビがあって終わりという曲で、構成としてはよくある感じですが、2番までとそのあとで全然違う曲のように聴こえるのがこの曲のすごいところです。
なんかいっぱい構成があるように思えますが、イントロとAメロはコード進行が同じ、サビと後奏はコード進行がだいたい同じです。コード進行という観点だけで考えると、大きくは4つのパーツに分かれていると分類することができます。(※サビのコード進行は色々派生あり。)
それでは、ひとつずつ見ていってみましょう。
ちなみに、私が耳コピしている時のメモの全体像はこんな感じです。迷走のあとが見えます。(ちなみに、このメモは間違っています)
イントロ&Aメロ
まず面食らうところです。イントロ冒頭からめちゃくちゃ不協和音な感じがします。
それもそのはず、ベース音は F で、ピアノとギターのリフがずっと B - B♭ - A を往復しています。B♭ と A はFメジャーキーに含まれる音なのでそんなに違和感がないのですが、問題は初っ端にくる B という音です。F に対して B の音は増4度、トライトーンと呼ばれる音です。要するに不協和音です。PanteraのCowboys From Hellのギターソロの最初のところで登場する音の組み合わせですね。まず、一発目のこの音に違和感があります。「キーはなんなんだ?」となります。とりあえず、 ベースが F から始まり F しか鳴っていないので「Fメジャーキーなのかな?」と思うことにします。
ここにaikoのボーカルが入ってきます。「aiko、喉のチューニング間違えた?」と思うぐらい、音が外れているように聴こえます。よーーーく聴くと、メロディーラインの中で E♭ が目立っているような感じがします。歌詞で言うと、「いつも苦しかったの」の"し"のところ、「ちっとも楽しく」の"楽(たの)"の部分です。これもFメジャースケールのスケール外の音です。ボーカルのメロディーラインとしては、FメジャーというかFミクソリディアンっぽい音使いになっています。これらのことから、ベースとしてはずっと F の音が鳴っているけど、B♭メジャーキー?なのかな?いや、でもスケールアウトしてるような変な感じがあるから、Fメジャーキーの上でFミクソリディアンで歌ってるのか?となります。B♭メジャーとFメジャーは E に ♭ がついているかどうかの違いです。ボーカルのメロディを全部拾えればわかるのかもしれませんが、そこまでやってないのでぶっちゃけよくわかりません。ここは自信ないです。
Bメロ
「やっとaikoのチューニングが合った!」という気持ちになります。
ベース音の進行は多分こうです。
半音下降はaikoの曲でよく見られる進行です。(※個人の見解です。)これを解読するのがaiko研究の基本、という気持ちで向かい合ってみます。
ベースだけ追っていると D - C# - C - G と聴こえるのですが、ギターの音に集中して音源を聴いていると、 ベースが C - G のところ、ギターは F - G と弾いているようにに聴こえます。D のあとは確かに少し音が下がっていて、そのあとは F - Gsus4 - G と進行しているように聴こえました。ギターのコードとして整理するとこうなるんじゃないかと思いました。
わかりづらくて申し訳ないんですが、" - "(ハイフン)が小節の区切り、ハイフンなしでコードが連続しているところは同じ小節内でコードが切り替わっていると読んでください。" ( ) "(かっこ)はコードのテンションを表します。
すみません。"G7(9,#11)"のところはChatGPTの力を借りました。ChatGPT、無料版でも十分すごいです。これ、耳コピ革命になるかもしれない。それはまた別で書きます。
それはさておき、Gから見た #11th(ハッシュタグじゃないよ) は C#(プログラム開発言語じゃないよ) です。これは、耳コピしたベース音の C# と一致します。"G7(9,#11)"は、C# をベースとするコードを転回したもの、と捉えれば間違っていないような気がします。
かつ、Dm - G7 というのは、Cメジャーキーにおけるツーファイブ進行(Ⅱm - Ⅴ7)に当てはまるので、ますますそれっぽく思えてきます。音楽理論を完全に理解した気分になってきます。
あれ?さっきB♭メジャーキーかFメジャーキーかもしれないと書きましたが、もしかして、ここはどっちでもなくて、Cメジャーキーに転調している?ということに気が付きます。。
Cメジャーキーに転調していると考えると、最後のコードの G はドミナントの役割を持つコードであり、かつツーファイブ進行の途中でありますから、トニックである C のキーに戻りたいという気持ちをひしひしと感じます。「はい!自分、Cに戻りたいです!戻れます!やらせてください!」という声が聞こえます。Cメジャーと考えて良さそうです。
さあ! C に戻るんでしょうか?続きのコードを見てみましょう。ベース音を元に、ギターのコードを取ってみます。
B♭メジャーか!?と思うけど違うんですよね。この感じだと、Fメジャーキーが近いような気がします。実際に曲を聴いてもらえればわかると思いますが、 Csus4 - C のところ、終止感が弱く、いかにも「これからサビに行くぞ、盛り上げてくぞ!!!次のコード、いくぜ!!」という感じがします。それもそのはず、C は Fメジャーキーにおけるドミナントの役割を持つので、他の誰よりも「 F に戻るぞ!」という力が強いわけです。F に戻れば解決感が出て、曲としてのまとまりを感じるはずです。どこかでもこんな話を聞きましたね。
一旦、ここまでのコード進行を整理してみます。
イントロ & Aメロ ・・・Fメジャーっぽい。たぶん。
Bメロの前半・・・Cメジャーっぽい。G から C に戻りたい感じで終わる。
Bメロの後半・・・が、Cには戻らなかった。Fメジャーに転調したっぽい。 C から F に戻りたい感じで終わる。
「G から C に戻りたい感じ」とか「C から F に戻りたい感じ」がよくわかんね〜、という人は、合唱コンクールとかでやってる、ピアノの音に合わせて「チャ〜ン(気をつけ)、チャ〜ン(礼)、チャ〜ン(戻る)」ってやつを思い浮かべてもらうといいです。あれでいう、「チャ〜ン(礼)」の後に、全く違う音が鳴る、みたいなことが起こっているわけです。礼をした後、ずっこけそうになるわけです。最初と最後の「チャ〜ン」がトニック、礼をするときの「チャ〜ン」がドミナントのコードだと覚えておいてください。
さあ、ここまできて、サビはどうなるでしょうか。いよいよちゃんとトニックに解決するんでしょうか?
サビ
こちらも、まずは耳コピしたサビのベース音を辿ってみましょう。
残念ながら、F に着地しませんでした。AメロやBメロとは雰囲気が違うベース進行になっています。どちら様ですか?という感じですね。
また転調してると思われます。
上のベース音の表記については、アルファベットがいっぱい書かれていてなっていてなんのこっちゃ、という感じなのですが、私は Aメジャーっぽい とい感じました。トニックである A は最初しか登場しないのですが、ドミナントの E に向かう動きが強く、最後に D - E と進行してトニックに戻りたい感じを出しているのを感じるためです。A に着地したいのを感じます。
細かいところを解説します。まずはこの部分。
正直、ここがコピーしていて難解なところでした。今もあんまりよくわかってない。ChatGPTくんがそういうのもアリっていうから、そうなんだなと思うことにしました。
Aメジャーキーだとすると、F# はスケールに含まれる音として理解できます。が、G と F についてはよくわかりません。いずれも一瞬で過ぎ去ってしまうのでパワーコードでええやんという気もします。が、あえてコードを表記するならこうなるんじゃねぇかなあというのを書いてみました。
その結果がこうです。
G と Fm はダイアトニックコード外ですが、A - F# というベースの進行をなだらかにするために別のキーから借用してきたんじゃないかと思われます。クリシェ進行ってやつなのかもしれません。よくわかりませんが、ややこしいテンションが鳴っている感じもしないし、ほぼパワーコードみたいなもんだし(※個人の見解です。)、それでいいやということにしています。
2行目以降は E に向かう連続したドミナントモーションと考えられます。割とよくある進行なんじゃないかなと思います。が、ここも E から A に解決しません。
ここはギターはシンプルにオクターブ奏法で弾いているようなので、細かいコードは取ってません。
E から F# に行き、 D まで半音下降し、また E で終わります。ドミナントのEで終わって、そのあとは果たして・・・。
最後のコードについて少し解説します。ベース音としてはおそらく E なのですが、ギターはあんまり E の音を強調していないように聞こえます。多分、F , A , B あたりの音が鳴っていて、あんまり馴染みのない「F-5(エフマイナスファイブ)」というコードなんじゃないかと思います。これ、イントロで不協和音って言ってた音の組み合わせです。ここからまたイントロのパターンに戻るわけです。
そこからまたベース音が F になり、例の不協和音が続きます。ここでアレンジが少し変わります。ピアノに変わってストリングスが前に出てきます。キーやコード進行は1番と同じですが、雰囲気が変わってきますね。
ここまででもう一回キーの移り変わりを見てみましょう。
イントロ & Aメロ ・・・Fメジャー
Bメロの前半・・・Cメジャー
Bメロの後半・・・Fメジャー
サビ・・・Aメジャー
転調しまくりですね。本当にそうなんでしょうか?誇張なしでこの曲を100回は聴いているんですが、「わかった!」と「何も分からん」を繰り返し続けています。聴けば聴くほど自信がなくなってきます。
間奏
2番のサビまでは1番と同じなので割愛します。(上に書いた通り、アレンジは違います。違いを楽しんでください。)
1番のサビ同様、トニックに着地することなくまた終わるのですが、その後の雰囲気がガラッと変わります。
各パート、急に力強くなり、A - G - F - E と進行します。さっきまでずっと着地してくれなかった A にようやく着地します。ここで安定感がようやく出てきた!ギターはパワーコードっぽいです。パーーーーッ、パッパラー!と大胆不敵な感じで金管楽器が入ってきます。聞き慣れた「aikoのロック系の曲」の感じが漂い始めます。
ギターソロ
一気にロックの感じが出てきます。これ、ギターソロはAmペンタを弾いてますね……。
2番サビ → 間奏で、Aメジャーから同主張のAマイナーにまた転調したと思われます。ここにきて、ド王道のロックっぽい感じに展開します。唐突感があるようにも思えるんですが、サビで F と G が出てきてましたよね、あれが効いてて、あんまり違和感なく聴こえるんですよね〜。サビの方では調性感を曖昧にして揺らいだ感じを出しつつ、間奏で一時的にAマイナーに行くのも違和感ない感じになってるんですよね〜。(たぶん。)
ソロの終わりのベース音は A ですが、ギターソロのフレーズは C# で終わります。ここでまた Aメジャーへの切り替わってるっぽいです。
大サビとその後
ギターソロの後、「花を食べて生きていたよ」という衝撃的な歌詞とともに、またサビの進行に戻ります。ここ、ボーカル・ギター・ドラムだけになります。拙者、ギターソロ終わり〜大サビ前の、シンプルにコードを弾いているギターが目立つパート大好き侍に候・・・。
その後の、「火照ったまま過ごしたあな」(ブレイク)「た」(ッターン!!)のところ、めちゃくちゃ気持ちいいのでぜひ聴いてください。ここで「あな」と「た」を跨らせるaikoのセンス、すげーよ。いつ息継ぎすんねん。ここでようやくこれまでの鬱憤が全部晴らされたような、視界が一気に開けて青空が見えたようなそんな晴れやかな気持ちになります。これまで散々ドミナントで引っ張りながらトニックへ解決せず転調、解決せず転調、解決せず転調を繰り返して蓄積されたフラストレーションが一気に爆発するような、そんな爽快感があります。良杉謙信、良杉晋作です。
コード進行としてはこれまでのサビと変わりませんが、一気に跳ねたリズムになり、金管楽器がスウィングするスカっぽい裏拍ノリノリの感じになって「あっ!いつものaikoの楽しい系の曲だ!」という感じがしてきます。ここからはもう音楽理論とかはどうでもいいので、楽しんだもん勝ちです。
強いていうなら、最後のコードがちょっと変わるってとこですかね。
これまで、サビ終わりは
という何とも不穏な感じでしたが、最後だけは
で終わってます。いいですねぇ〜。ちなみに最後の(超かっこいいキメ)をギターで弾くときは 5弦解放 & 3f〜6fまで半音上昇、みたいなところを使うと、意外と簡単です。
全体のコード進行をまとめておく
ここまでかなりバラバラにコード進行とかキーの移り変わりを書いていたので、一応一箇所にまとめておきます。(間違っている部分もあると思うので、あくまで参考レベルに。)
いざまとめると、また自信がなくなってきた。
歌詞について
というところで、キーとかコード進行はこの辺にして、軽く歌詞についても触れようと思います。歌詞もかなり難解で、ここについては過去文献への理解みたいな部分も必要になってくると思うので、あくまであっさり触れる程度にしておきます(?)
「スカート」というモチーフ
曲名が『skirt』なので、当然ながら曲中にも「スカート」というモチーフが複数回登場します。特徴的なのは、サビ終わりに毎回このワードが登場するというところです。
1番サビ・・・「そのスカートは2度と履きません」
2番サビ・・・「見えてくるわ スカートの中」
ラストのサビ・・・「スカートは揺れる じゃあまたね!」
どうでしょう。回を追うごとに、感情が移り変わっているのを感じませんか?私(※30代男性 妻子持ち 35年住宅ローンあり)はそう感じます。
さらに特徴的なのが、サビの後のコード展開が毎回違うというところです。
1番サビ後・・・「そのスカートは2度と履きません」⇨ イントロの不穏な感じに戻る。
2番サビ・・・「見えてくるわ スカートの中」 ⇨ 間奏へ。場面転換。
ラストのサビ・・・「スカートは揺れる じゃあまたね!」 ⇨ フィナーレへ。
どうですか???もう少し喋らせてください。
転調と歌詞の関係性
この曲は度々転調を繰り返していると思われる、と上の方で書きました。転調が行われる部分と歌詞の関係性を見てみましょう。
わかりやすいところから行きます。
最初の転調が行われるのは、AメロとBメロの間です。1番と2番のBメロの歌詞を見てみます。
1番Bメロ ・・・「だってさよなら2人の世界に邪魔は付き物 日々歳を重ねていく幸せをホウキで掃いた」
2番Bメロ・・・「だから汚れた2人の世界は再起不能と 感情のまま鍵をかけたことを悔やんで泣いた」
わかりますか???
転調したところに、接続詞が置かれているんですね!!!
だんだん冷静さを失ってきました。なんというか、転調と歌詞が連動していて説得力がある、そんな感じがします。
合わせて、それぞれのサビの歌詞も見てみましょう。
1番サビ・・・「夢中になって何もかも見えないなんて恥ずかしいと鼻で笑う」
2番サビ・・・「それって都合がよくないか だけどあなたの気持ちを離したくなくて」
どうですか??????
AメロやBメロで自分で言っていたことを自分で鼻で笑ったり疑念を投げかけてみたり、独りで一貫性なくふらふらと思い悩んでいる感じがしませんか?恋に悩んで逡巡する様が、曲があっちへこっちへ転調することによって表現されている、そう思えませんか!?!?なんなんだこの48歳は?!?!(※30代男性(妻子持ち 35年住宅ローンあり)の個人的な見解です。)
最後、1番のサビで「そのスカートは2度と履きません」と言い切っておきながら、最後の最後が「スカートは揺れる じゃあまたね!」となっているのが非常に味わい深いですね。曲の調子としては、そのスカートとともに再び前に進んでいく決意ようなものが感じられます。実際はどうなんでしょうか。「じゃあまたね!」には何が込められているんでしょうか。
「こんな星さようなら」「花を食べて生きていたよ」と、「星」「花」というモチーフが登場するのも少し気になりました。「星」「花」ときて、収録されているアルバム名が『残心残暑』とくると、どうしても『花火』をイメージしてしまいます。しかし、これについては今の所これ以上語れることがないのでこの程度にしておきます・・・。
ということで、今回は30代男性(妻子持ち 35年住宅ローンあり)が、48歳女性(既婚)が作曲した楽曲を考察してみたという記事をお送りしました。note初投稿なんですが、やり方合ってますか?
音楽的なところについては、素人がなんとなくの知識で書いているだけなので、間違っているところは多々あると思います。あんまり当てにしないでください。それでは。
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