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#01 友情なのか恋なのか、私はあなたが気になります!

一緒に生活して干支が一周するくらいまで経っただろうか。同じ部屋で生活を共にし笑って泣いて喧嘩して思い出をたくさん作ってきた。コーヒーを入れて朝起こしてあげると喜ぶ。寝起きが悪いからゆっくりでないと起きれない、シャケは嫌いだから夕飯に買ってちゃいけない。もし私たちが”男と女”だったら結婚していただろう。

<はじまり>

私は就職戦線を勝ち上がり、この4月から東京に上京し一人暮らしを始めた。初めての一人暮らしとあって母は手取り足取り、これでもかと言うくらいに家具や食器、備蓄食材などを準備し、父はカーナービも付いていない古いトラックを借りて荷物を全部詰め込み自分で調べた経路メモを基に田舎から東京まで引っ越しを手伝ってくれた。

引っ越しから1週間後、ずっと一緒にいてくれた母は仕事のため実家に帰り本格的な一人暮らしがスタートした。いざ、独りになってみると少し寂しいもので友達にメールを送ったり、パソコンでチャットをしたり、電話をしたり、独りという空間の中で心の孤独を埋め合わせていた。仕事が始まってもそれは変わらなかった。孤独から抜け出したいがために、同僚と毎日のように夜中まで遊んでいた。

その年のハロウィンの日、東京で初めて迎えるハロウィンとあって先輩のアイと2人で出かける事にした。アイリッシュバーで外人に囲まれながらテンションをあげ盛り上がった。

お酒が入ったテンションと、ハロウィンというお祭りの勢いに乗った私は後輩という立場を忘れ図々しくもアイに
「アイさん、誰か呼べませんか?」
と偉そうに聞いてみる。これまでも孤独の埋め合わせで人を増やせば楽しくなるという独自の方程式を作ってきた私はいつもの事のように言っていた。
「誰か探してみるね?」
っとアイは、外に電話をかけに出て行った。

<新しい友達>

しばらくすると、アイの学生時代からの友人サチが一緒に戻ってきた。身長が高く、笑顔が素敵。だけど、どこかイカツイ恐いイメージがある子だった。会社の同僚だが、私は見た事がなかった。
 「見た事ある!」
初めてあったサチに対して、私は見た事も会った事もない相手に照れ隠しのつもりで勢いよくそう発してしまった。今思うと何を考えていたのか分からない。

それから薄暗くシーンとした2軒目に移動し、3人でさっきとは打って変わって仕事の話をし始める。2人がいかに真面目なのか実感しつつも、私だけがこの後何をして遊ぼうかとオレンジジュースを飲みながら孤独回避を考えていた。私のプランはこうだった。3人で我が家で酒を飲み明かし東京のハロウィンを漏れなく楽しみたかった。そして、何より新しい友達のサチが来た事にテンションはかなりあがっていた。

「サチさん、一緒にうちにきますか?」
「うん、行く!」
そう答えたのはアイだった。結局、その夜はアイさんと朝、むしろ翌日の夕方まで一緒に騒いでいた。

アイと夕方までいたけれど、私はどうにか新しく知り合ったサチの連絡先を知りたかった。最後まで一緒にいたサチの事がずっと気になっていた。だからと言って、アイに「サチにお礼のメールを送りたいから」と連絡先を聞くのも変だと思ったし、アイにはメールが来ているだろうと思ったからアイには聞く事ができず、なんかお腹の虫が煮え切らない感じでずっと過ごしていた。

つづく

#小説 #エッセイ #恋愛 #LBGT



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