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No.020ヤギさん郵便「恋せよ乙女」


高校の数学の先生は、いつも白衣を着ておられました。
定年間近の白髪の先生は紳士的で、Xをエッキスと発音されていました。

卒業する私たちの最後の授業は、エッキス先生の歌でした。
黒板に歌詞を書いて、アカペラで歌ってくださいました。
第一次世界大戦中に流行った歌です。

いのち短し恋せよ乙女
あかき唇あせぬ間に
熱き血潮の冷めぬ間に
明日の月日はないものを



大好きだったおばさんは、90歳を過ぎても同世代の女性から嫉妬されるような魅力のある人でした。
80、90歳を過ぎたおじいさんおばあさん達が何をしているんだか。
おばさんの話にあっけにとられて大笑いしていた私に、
おばさんはしおらしい顔つきで
「弥生さん、男と女は死ぬまで男と女やで。」と言い放った。
「‥おばさん、カッケー。カッコイイってこと。」

はるかむかし乙女だったおばさん達の唇はまだあかく、熱き血潮が冷めていない話。
いや、乙女だった頃の感情を思い出したのかもしれないけど。

No.015 「恋をする」を読んで、先生が歌ってくれたことを思い出しました。
恋するを恋愛に限定することなく、
“「やりたい事や好きな事をする」って「恋する」ことと同じこと”
とすると、歌の解釈も変わってきます。


90歳をすぎて、80代の男性と立ち話が盛り上がったくらいで嫉妬されたらたまったもんじゃないけれど、立ち話をしてるだけで嫉妬されるくらい魅力的に年を重ねていきたい。


佑美さんのNo.015 「恋をする」はこちらからどうぞ

おばさんの話は
No.016 ヤギさん郵便「声」にも書いています。


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