Netflixの巧妙な策略(?)によって刃牙にハマってしまった
この世には「見る順番わからん」コンテンツがある。
シリーズとして単一のタイトルを冠しているものの、エピソードの独立性が高く必ずしも最初から見る必要は無いが、その反面関連性の高いエピソードは見る順番で大きく印象を変える…
要するにジョジョやスターウォーズのことである。
「刃牙」もまた、どこから見ればいいのかわからない。しかしこれは「どこから見るのが最適か」わからないという意味だけでなく、そもそも「順番がわからない」のである。
「グラップラー刃牙」やら「範馬刃牙」やら「バキ道」やら
規則性が見えそうで見えない…
どれが一作目なのかすら判別し辛く、
これが自分の中で何気に大きなハードルとなっており、ジョジョのファンなので多分刃牙も肌に合うだろう(安直)…と思ってはいたのだが順番を調べるというたったひと手間が面倒でこれまで手を出しておらず、そのまま「刃牙」シリーズの存在も正直言ってほぼ忘れていた。
しかしそんな筆者にも2023年7月、一つの転機が訪れた。
Netflixランキングの集計方法の変更により、なんとアニメ版「範馬刃牙」が地上最強のコンテンツとなったのである!
2期配信スタートのアニメ『範馬刃牙』Netflix世界ランキングで2日連続で首位!30カ国でも軒並み1位を獲得 | オタク総研 (0115765.com)
現在の集計方法は[総視聴時間÷コンテンツの時間]、であり直感的には「作品を最後まで見てしまう確率」と表せる。
この変更は従来の基準(総試聴時間)で不利になる短めの映像作品を救済する為の措置であると推測され、結果的にアニメ作品が上位に入ることはある程度必然ではあるが、
「推しの子」、「スパイファミリー」などのいわゆる「覇権アニメ」や
「鬼滅」、「呪術」など近年のジャンプ作品でなく
少し失礼な表現となってしまうが、チャンピオン連載の、往年の名作の感が強い「刃牙」が一位を取ったのは驚きだった。
ちょうど筆者は「セレブリティ」を視聴し終えた後だったのでネットフリックスユーザーとして「刃牙」を見るなら今しか無い!という心境にさせられた。
さて、肝心の順番であるが結局
「今配信されている部分が人気ということはここから見ればいい…ってコト?」
といういい加減な考えで「範馬刃牙」から見ることにした。(「バキ」(死刑囚〜神の子編)が配信されていることにその時は気づいていなかった)
刃牙シリーズのファンの方からするといきなりカマキリ戦見るの⁉︎と思われるかもしれない。
しかし個人的には刑務所編から刃牙を見るのは割と、いやかなりアリかもしれないと感じた。
長い前おきになってしまった。ここからはNetflix ランキングに従い、刃牙を刑務所編から見始めた人間がどのような感想を抱き、どのように刃牙にハマっていったのか、の記録である。
①刑務所編
一般常識として刃牙シリーズにおける
格闘漫画
「刃牙」という人が主人公
なんかとにかく父と闘う
くらいの設定は知っていたし、新規の視聴者に向けて最序盤の何話かはその設定を割と丁寧に説明していたため、特に違和感を抱くことは無かった。
勇次郎が恐竜並みにデカい象を倒していても
「まあ動物虐待的に見えないようにフィクションっぽくしてるんだろうな」
と真剣に受け止めていたし
刃牙が河原で(アイアンマイケルの)妄想や(妄想の)カマキリと殴りあい始めても
「インパクトある導入だな」
「象を倒すお父さんとの効果的な対比だな」
位にしか思わず、世間では迷シーンと名高いカマキリとのバトルも普通にワクワクした。
何故かルミナにその幻影が視えている現象に関しても
「ルミナくんは感受性が豊かなんだな」
と初めて見る故に素直に受け止めることができた。
最序盤からマウスが出てくるくらいまではカマキリ戦以外バトル描写があまり無いのだが
妄想で出てきたアイアンマイケル(本物)に偶然出会ったり
世間には知られていない刑務所の謎とか
究極の連携は口理論
素手の戦闘力は規制できない理論
など視聴者の興味を惹きつける要素が随所に盛り込まれており、名作と言われる所以がここにあるのだなとしみじみと感じていた。
特にこの章から見始めた視聴者には刃牙の細かい設定や背景が
なんかとにかく父と戦いたがっている
ということくらいしか明かされていないため、その気質や考え方などが徐々に明らかになっていくカタルシスがあった。
また、この章の目的である「刃牙vsオリバ」実現のために刃牙がオリバという人物をあの手この手で挑発するのだが、この辺の、一見いかにも陽気なアメリカ人といった印象を持たせるビスケット・オリバという人間の陰湿な面が段々と露わになっていく過程では、人物描写の丁寧さに驚かされた。
世間的に「刃牙」というのは専ら突飛な設定や迫力のあるバトルが見どころのコンテンツとして語られているため、こういった「静」の魅力を充分に含んだ作品であるという事実が意外だった。
また、この章のヒロインと呼べるマリアのキャラ造形にすごく安心感を覚えた。
悲しい話だが、フィクションにおいてああいった風貌のキャラクター(特に女性キャラ)が悪玉でもなくしっかりと魅力のある存在として登場することは少ないのが現状である。しかも男性性賛美的な要素がどうしても強くなるであろう格闘技を主題とした作品であるにも関わらず、いわゆる「肉体的な価値」が低い(と本人は自認している)マリアの精神的な強さが尊ぶべきものとして扱われている部分に、インドア派女性として読みやすさというか、間口の広さを感じた。
「刃牙vsオリバ」でのシリーズ恒例のインタビュー形式もここで初めて見たため
「斬新な表現だなあ」
と思った。
②野人戦争編(ピクル編)
冒頭、一見どう考えても隠密行動する気なさげなコスプレみたいな格好の男が真剣に謎理論を駆使しながらで隔離施設に潜入するシュールなシーンがそれなりのボリュームを持って描かれる…
刑務所編を経て多少作品のノリに慣れてきたのもあり、このころには
流石にこれはツッコんで良いやつなのだと理解していたように思う。
それにしてもこの男なんか知ってるな…
どこかで見たんだよな…
( ゚д゚)ハッ!
これはネット上で親の顔より見た
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なってほしいと常々感じている
↑これとか
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の烈海王やないか!
あまりにも有名な素材キャラなので観光名所に来たような感慨があった。
そして烈海王がピクルハウスに到着するとそこには既に先客が…
と思いきやその先客が…と思いきやさらにその先客が…という天丼を6人分繰り返し、なにやら濃そうなキャラの渋滞が発生する。(さらにはまだ一人いたというオチ付き)
比較的少なめのキャラでストーリーを回していた刑務所編から考えると急にものすごい人口密度である。
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の独歩以外自分は知らなかったが、強そうなキャラが次から次へと出てくるシーンは実に少年漫画読んでるな~という満足感がある。
そしてこの時初めて
烈海王や独歩は「刃牙」のキャラなのだ!と知った。(素材ではなく漫画のキャラとして意識した経験が無かった)
逆にここまであの烈海王と独歩を使わずに物語を構成していたのだ、と気づいた。
そして「刃牙シリーズ」は本来彼らのような多彩で濃ゆいキャラクターが織りなす群像劇に近い漫画ではないか?という憶測が胸に湧き起こる。
もしそうなら、この仮定が正しければ、今まで普通に楽しんでいたキャラ数の少ない刑務所編はイレギュラー、というより作者の得意技をあえて封印した、作者である板垣恵介氏が持つ能力のほんの一部分、
言うなればお釈迦様の手のひらのほんの指先の部分だったのではないかΣ(゚Д゚)
そしてピクルハウスのシュールさに耐えきれず、ネット上で刃牙の感想を漁ると、そこには更に恐ろしい文言があった。
「刃牙は最大トーナメント編(旧アニメ2期)が頂点」
という理論である。
え?じゃあまさかネトフリの分はもう下り坂なのか?
今から始まるピクル編は刑務所編より面白く最大トーナメント編なるものはピクル編よりも面白いのか?
私は世の中で刑務所編より面白いコンテンツはかなり少数派だと思う。
そしてここから上となるともはや想像力の臨界点に近づいてくる!
ワクワクを越えてゾクゾクが止まらなくなりながら、視聴を続けた。
(続く)