雑記 354 パンがなければケーキを

画像1 パンがなければケーキを食べればいい、とマリー•アントアネットが言ったと言われている。王妃が、庶民の困窮に無頓着で、いかに贅沢な暮らしをしていたかを強調して批判するためのたとえ話。
画像2 本当のところ、言ったのはマリー•アントアネットではなく「民衆はパンが買えずに飢えている」という報告を受けた、贅沢な暮らしに慣れたある婦人が 「それなら、(それより高価な)ブリオッシュを食べればいいではないですか」と返事した話が、人々の間を伝わるうちに、マリー•アントアネット悪の伝説になってしまったらしい。ブリオッシュは、パンより高価だが、パンがないときは、パンと同じ値段で売らなければいけない決まりがあったそうだ。
画像3 それはさておき、私の暮らしで、食事としてのパンがない時、代わりに、甘い甘いケーキやドーナツを食べることは無理だろう。ケーキが並ぶウインドウを見ると、自分が、チャールス•ディケンズの『クリスマスキャロル』に出てくる下町の貧しい子供になって、到底手に入れることのできない品をガラス越しに見る姿を想像することがある。でも、どんなに腹が減っていても、砂糖の塊のようなケーキは、生命維持の食糧にはならない。ケーキは別腹。食後の楽しみのひとつとして存在するが、パンの代わりにはならない。
画像4 世の中、贅沢になったものだ。あちこちの店のディスプレーも凝って、それぞれに美しい。見て美しいものは、心を満たす。どうしたって、贅沢な品々に慣れた大人にはなれっこないので、感動は日々新しい。毎月『家庭画報』を見て、庶民でよかったと思うのである。

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