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雑記 279 猫のお見送り Taxi GO away
2021年12月31日、9時過ぎは、風も強くなって雪が降り続き、底冷えがした。
大晦日は、私達は誘われて京都中京区烏丸御池のホテルに行き、友人達とロビーで紅白歌合戦を見ながら、飲んだり食べたりしていた。
ホテルのロビーは、全面ガラスで、外の様子がよく見える、雪は止む様子もなく降り続ける。
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烏丸小池といえば、京都市の中心部で、道幅の広い小池通りは、夜とは言え、ほどほどの交通量があって、雪は積もりそうにない。
紅白歌合戦の中継で、清水寺の舞台の前で歌う女性歌手がいて、清水寺本堂の屋根の上は雪が積もって白くなっているのが見えた。
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紅白が終わったら、八坂神社のおけら詣りに行こうか、どこそこの寺に除夜の鐘を撞きに行こうか、と話が出る。
例年鐘撞きをやらせてくれる寺も、コロナのせいで、
お坊様が鐘撞きをするのを、見学するだけ、
とか、
夜10時から決まった人数だけ(108人だろうか)、
とか。
制限が多くなった。
来る人が自由に鐘撞きが出来る、矢田寺は、昨年から、鐘撞き棒を仕舞ってしまい、寺に鐘の音が響き渡ることはない。コロナ対策とは言え、何やら面白みに欠ける大晦日。正月の風物詩、蛸薬師の大根炊きも、中止だと言う。
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京都の冬は寒いわぁ、と言って、つい先日まで小樽で働いていたと言う人は、室内でダウンコートの襟を掻き合わせ、首元まですっぽり埋めて、温かい焙じ茶を飲んでいた。
建物の防寒の仕方が違うのだそうで、
こんなに寒い風が吹き通る空間、京都を甘く見たわ、
と笑ったが、顔は本当に冷え切っているように見えた。
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それぞれ夜中の予定もあるので切り上げ、我々は帰ることにした。市バスは11時台にもあるが、こんなに雪が舞っていては、タクシーかな、と。
GOというアプリに必要事項を入れ、送ると、
後何分で到着、と返事が来る。
時間ギリギリまでホテルの玄関先の暖かいところで待ち、そろそろ、というところで、外に出た。
と、寄ってきたタクシーは、そのまま扉を閉め、走り去った。
勘違いしたかな?
あれではなかったのかな?
道の反対側に停車しているタクシーがあったので、もしかしたら、と思って見に行ったが、違った。
しばらく待つが、数分で来ると言ったタクシーは来ない。
さっきのタクシー、女の人が乗って行ったみたいですよ、
とホテルの人が言う。
女の人なんかいたっけ?
私道路に出た時、女の人なんて見ませんでしたよ。
スマホを見ると、私達は、既に、呼んだタクシーは乗車中ということになっていたので、やはり間違いが起こったのだろう。男女2人と書いたのに、女の人ひとりを乗せる?
新しく呼ぶしかない、と言うことになった。
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雪の中で傘をさしても、雪は風に吹かれて横向きに飛んでくるので、あまり役には立たない。
慣れないアプリのため、
えーと、えーと、
と、まごまごと画面操作しているうちに、遠くから空車が来て、アプリを使わず乗れた。
その半日後、大晦日にホテルで一緒だった人たちも交え、また、2度目の、本当の新年会をしたのだが、
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ビルの陰から、猫が出てきて、
タクシーに乗るまで、後ろで座っていましたよ、
と一人が言い、
そうそう黒い猫がちょこんと座っていたの、私も見た、
ともう一人が言う。
野良猫などいるように見えないビルばかりの街の中で、寒い夜、雪の降る中、ホテルの入り口付近で私達を見送ってくれる猫なんているのだろうか。
お見送りの猫のことは、後で知ったのだが、夢物語のようで、今でも、不思議な思いにとらわれる。