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雑記 1031 静かな別れ

酔芙蓉。朝白く開花。近所の家の庭にあった。
短歌によく詠まれる花だ。
朝白く咲き、時間と共にピンク色に色付く。
夕方には、さらに赤くなって、まるで酒を飲んで酔っ払った顔のようだ、ということで、「酔芙蓉」と言う。
酔芙蓉、遅く開花したものは、赤くなるのも遅い。
次の日、また、白く咲く。
これは、柏葉紫陽花。近所の家の大きくはない庭に、紫陽花と酔芙蓉とシンビジウム、いずれも、選りすぐりの素晴らしい株があり、ご主人の自慢だった。それが今年の夏の初め、酔芙蓉が蕾をつけた頃、バッサリと切られてしまった。紫陽花も、驚くほどぞんざいな切り方で短くなっていた。その後も、また、めちゃくちゃ切った、という感じで木々は根元近くまで短くなっていた。
今日驚いたのは、再び茎を伸ばして花をつけようという酔芙蓉も、来年までお休みの紫陽花も、何と、根こそぎ掘り出して、ブルーの袋に詰め込まれ、捨てられていた。
何となくは分かっていた。この家もそう。
植木の好きな人の庭が殺伐とするのは、つまり、そう言うことなのだ。柏葉紫陽花の家には年老いた猫もいたが、近頃姿を見ない。ご主人が箒を持って家の前を掃き、庭の手入れをする時に、玄関の奥からヨボヨボと出てきて小さく鳴いた。「あら、知らなかったの、亡くなったのよ」と今日聞いた。庭は、木が邪魔だと、跡を継いだ人が仰っているそうだ。花いっぱいの玄関先が殺伐とするのは、多くは、そう言うことなのだ。
ご主人の自慢だった、大きな吊りシノブ、捨ててあって、要らないと言うので、貰い受けてきた。
こちらも、干からびていたけれど、何とか復活できるといい。

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