雑記 370 大英図書館 ASMR
Windowsのスクリーンセーバーで、雨の音や焚き火の音などに映像がついている、そんなものに偶然出会い、それから、お気に入りのASMRを集めて、仕事の時にテレビに映して見ている。
私は、ニュースもドラマも、いわゆるテレビは見ないのだが、仕事中、部屋が道に面していて窓が開けられず、障子の白ばかり見ているのも味気ないので、スクリーンセーバーで、居ながらにして、家でないところで、仕事をしている雰囲気が味わえるのは楽しい、と言うことで、煮詰まって来ると、モニター代わりのテレビをつける。
初めのうちは、人里離れた山の粗末な小屋で、暖炉で薪が燃え、窓の外にひたすら雪が降る、そんなASMRを見ていた。手前のベッドは、極上とは言えないが、肌触りの良さそうな布団が掛かっており、疲れたら、いつでもそこに身を投じて、眠れる、という想像の世界に浸りながら、単調だが気の抜けない仕事をするのは、ただの四畳半で机に向かうのとは、一味違う。
どうせなら、大英図書館で、仕事をしてみたら、どんな気分だろうか。南方熊楠のお気に入りの席があった、と言うではないか。そう思って、王立図書館に辿り着いた。
南方熊楠という博物学者は、ロンドンにいた時、図書館にお気に入りの席があった、という。
大英博物館にも通い詰め、沢山の研究をした。
熊楠の話は、簡単には言えないほど複雑で、沢山あって、博物学者で、生物学者で、民俗学者で、明治時代の巨人である。
1867年に生まれ、現在の開成高校で学んだ。後の首相、高橋是清に英語を学んだ。
昔から記憶力は抜群であったが、興味のないことはやらず、数学で落第した。
そのまま勉強を続けることはつまらない、と見切りをつけ、親の許可を取って、アメリカへ。卒業はミシガン州立大学。
その後、イギリス、ロンドンへ。
博物館や図書館で見た本は、自宅に帰って、そのまま記録できたと言うから、記憶力はただものではなかった。
言葉も、20数か国語を理解したそうで、
彼流の、語学習得の極意は、
①対訳本に目を通し、
②酒場に出向き、周囲の会話から繰り出してくる言葉を覚える。
この二つなのだそうだ。
羨ましい。
それで、ひと気のない王立図書館を、私の部屋のテレビの画面に映し、
まぁ、障子の白を見ているよりは、なかなか気分がいい。
暖炉はパチパチ燃えているし、時折、外で雷が鳴ったり、雨の降る音がしたりする。
人に話しかけられることもないし、猫が過ることもない。
そうそう、南方熊楠は猫好きで、
飼い猫の名前は、必ず「チョボ六」で、
その猫を布団の代わりにして、抱いて寝た、と言う。
暑いから、と言って、服を着ないで家で過ごしたり、奇行も有名だが、猫好き、ということで、親しみが湧く。
でも、お近づきになるのは、どうかな。少し考えてしまう。
スクリーンセーバーストア、と言うところの動画を沢山保存して、普段はスクリーンセーバーとしては使わないが、仕事になると、部屋はたちまち、外国風景。
コロンブスが帆船に乗って海を行くようなものもあるが、船酔いしそうで落ち着かないので、もっぱら、夢の街で四季の移り変わりを感じて、今日も過ごした。