僕がハリー続投を支持する理由〜アタッキングフットボールのこれまでとこれから〜
最近マリノスはUAEの地で大きな差を見せつけられ、リーグ戦では1位2位を相手に連続して逆転負けを喫しました。最大の目標に届かなかったし、J1だって気づけば(2試合未消化とはいえ)首位と18ポイント差。6月にしてタイトルレース復帰は非現実的な場所に追いやられています。
こうなると指揮官の去就に関する意思表示をする人も多くなるし、現時点の自分の考えを残そうと思いました。
※2024年6月18日執筆当時の考えです
ディテールにおいてカットが多いので、読んでみて気になった方はお酒でも飲みながら語らいましょう!DMとかでもお誘いいただければ喜んで行かせていただきます。対戦よろしくお願いします。きっと僕は日向坂46について熱語りを始めると思いますが…。
これまでの流れと現在地
ハリー・キューウェルに関する現時点の考察をまとめるとはいえ、何故そのように考えたかを伝えるためには、これまで歩んできた道のりへの解釈を示さないと話になりません。なので、長くなってうざったいですがアンジェとケヴィンのアプローチに関する考えを簡単にまとめるところから始めます。
アンジェによる最大化モデルの構築
アンジェ・ポステコグルーはマリノスにたくさんの武器を与えました。
「このケースならこの武器を使いなさい」と、ミクロなパターンに応じた"やるべきこと"を選手に授け、当初はそれらが(まともに扱えれば)有機的に繋がる状態としましたが、選手たちがすぐに実行できたわけではありません。その後スカッドに合わせて武器の使い方の多様性を認め始めると、これにより戦力の最大化に成功しました。
一方でスカッドへのアジャストによって生じる構造的欠陥は無視します。
選手たちには「これがアタッキングフットボールだから」という拠り所を与え、空いている穴に着目することをタブーとすることにより、試合では自らの土俵に引きずり込む戦略でゴールの山を築きました。
最小の修正で最大の成果を生むケヴィンのアプローチ
サッカーは変化します。
成功を収めたチームと対峙するにあたり、相手はマリノスの土俵に乗らないことをゲームの目標に据えたため、我々は所謂ジャンケン的な不利を強いられることになりました。また同時期にはチームの(もしくはリーグの)予算規模を主要因として、アンジェの最大値が出せないスカッドを持つことにもなりました。
そこでケヴィンの採ったアプローチは不具合修正にあったと思います。アンジェのデザインを大きく変えずに当初との乖離によって生じる穴を塞ぎ、それを強みに変える作業を続けました。小さな変化を加え続けることにより、気づけば前任者の就任した2018年からの5年間で優勝2回に2位1回という、クラブ史に残る中期的成功を手にします。
2021年の最終節に喜田キャプテンは言いました。「2位で満足できるチームではなくなっている」と。優勝争いに毎年参戦するために、大きな作り直しではなく適所の修正によって乗り切る必要があり、その目的において大きな凹みを生まないケヴィンのアプローチは正しかったと思います。
しかし変化は加速します。有力なブランドとなったマリノス産の選手は国内外クラブから引き抜かれ、またリーグ全体の戦術トレンドのようなものも移り変わりを迎えました。
そして2度目の監督交代
ケヴィンのアプローチはシステムの再構築ではなく連続的なパッチ適用にあったので、上述の通り大崩れしないという利点がある一方で、複数の課題を同時消化することには特化していない、というデメリットを挙げることができます。
競合がやり方を変え、自チームのスカッドも流動性を保ち続け、ついに2023年後半には目に見える決壊の日を迎えます。アンジェによる最大化モデルの使い回しでは、ひとつの穴を塞ぐ隙に別の穴から水が漏れるような状況に陥っていたと考えます。
ここでイケオジにバトンが渡りますが
・これまで苦手としていたような相手が国内に増加
・アンジェモデルにおけるコアとなる選手の減少
・短期における最大目標であるACLがすぐに再開される
・過密日程が確定している状態
という、非常に難易度の高い状態での引き継ぎになりました。
ハリーキューウェル続投を支持する理由
長ったらしい振り返りは終え、本題に移ります。結構疲れてきたので、此処から先がめっちゃ薄く短くなるかもしれないです。そうなったら察してください。
ACLに向けた良アプローチ
バトンタッチ時点での状況を踏まえ、ハリーはフォーメーション変更を含む改修に踏み切りました。目前の大きな課題はチャンス構築の減少や大外クロスの増加。それを解消するにあたり、短時間で成果を生むための手法として間違いないものであったと考えます。
選手の特性を見抜く能力
「この仕事をやったことあるかはわからないけど、やり方さえ教えれば特性的に絶対できるよ」を見抜くのが上手だと思います。代表的なのは榊原彗悟をピボーテに、植中朝日をインテリオールに起用しているところでしょうか。
またタスクを絞ることにより宮市亮のパフォーマンスは緩やかに向上していますし、(エウベルの問題はあるものの)直近では井上健太が左ウイングで大きな改善を見せ、プレータイムを伸ばしつつあります。昨年は右ウイング出場時に比べて500倍くらい窮屈にやっていたポジションで、です。
試合中の修正が好み
スタジアムでも実験をしないといけないという状況が逆に強制してくれているのかもしれませんが、試合中の修正に幅と具体性があると思います。元有名選手系の監督ってこういうの上手い人多いイメージあります。ジダンとか。
特筆すべきはリーグ開幕のヴェルディ戦やホームの蔚山戦。中盤の並びや両翼のキャラクターを柔軟に調整しながら戦えるところは一定の評価ができると思いますし、それぞれのプランが具体性や説得力を示していたと思います。
アタッキングフットボールという宗教の継承者
アタッキングフットボールを宗教と表現するのは使い古されていて微妙ですが許してください。イケオジは紛れもなくアンジェ派閥なので、解釈を変えることさえあれど、アタッキングフットボールから離脱するとは考え難いです。
いまやトップチームだけでなくクラブ全体でどっぷりと漬かっているこの新興宗教。影響力は絶大です。特にリクルーティング面において渡辺皓太、西村拓真、藤田譲瑠チマあたりの有力選手獲得に大きく貢献しており、現時点で抜け出すことは得策に思えません。
これから何を期待するか
現時点で支持すると言っても、もちろん状況が変わればスタンスも変わります。今後のハリーに寄せている希望を残します。
モデルの再構築
僕が望むものの大半です。アンジェ最大化モデル以来のグランドデザイン再設計を望みます。
とはいえ日程的には厳しい連戦中です。ここは着手まで少しの猶予を見て良いかもしれません。もし、この連戦を用いたデザイン設計という離れ業を成し遂げたら最高です。一生ついていきます。養子として引き取ってください。
強化部との強固なリレーション構築
現有戦力だけを用いた不具合修正ではなくデザインの引き直しをするのであれば、選手獲得において監督の意見が尊重される必要性はより高まります。これから先は強化部の体制も不透明な部分もあるかと思いますが、新モデルに必要な選手が加わることを願います。
エラーの減少
試合中の修正が上手いとか書いといてあれですけど、細かい交代ミスが目立つので、なんとかしてほしいです。浦和戦の榊原インテリオールとか、蔚山アウェイのピボーテ交代遅れとか蔚山ホームで山根陸の一瞬サイド配置とか。失点や敗戦に直結しそうなエラーが散見されています。
僕がもっとも伝えたいこと
マリノスサポーター主催のDJイベントに2度目の出演をします。7月27日、場所は渋谷です。チャージフリーです。前回もすごく盛り上がった楽しいイベントなのでぜひ来てください。
フライヤーもめちゃくちゃかっこいいです。欲しい方には渡せるので声かけてください。