見出し画像

大学パーマネント職を得るためにした12のこと

 大学のパーマネント職の獲得は,普通の就活と違いHow to本が無く,周りに対策を相談できる人も少なく悩むところも多いと思います(私は悩みました).また,研究職という職種上そもそも「研究成果で勝負しろ!!」的な雰囲気もあり,「パーマネント職につきたいんだ!!」と公言することも憚られる雰囲気があるかもしれません.
 しかし,私はしっかり腰を据えて教育研究活動を展開するために,パーマネント職を計画的に狙うことは悪いことではないと考えていました.
 そこで,そのような考えのポスドクや博士課程の皆さんに向けて私が実際にポスドク~任期付き助教の間に実施して,効果があったなと感じた12の対策をnoteにまとめました.これは別記事「大学パーマネント職の選考の特殊性を理解して対策」で説明した独自の分析から,具体的なアクションとして実施した内容です.この12の対策以外も行った対策がありますが,それらは分野や各大学に特化した対策なので省いています.また,紹介する一部の内容は所属する研究室のPIの先生の方針をまず確認して,その中で実施するべきだと考えます.
  

1 目標を明確に

 良い研究をしたら確実にパーマネント職が舞い込んでくる時代ではないと考えます.なれたらいいなというフワフワした状態は,自身も周囲も具体的な行動に移せないので,より明確にすることを心掛けました.また,パーマネントならなんでもいいわけではなく,大学それぞれの特徴を理解して,どの大学の,どの学部のどの学科で具体的にどんな教育研究を自分がしたいのかイメージして具体的な目標を決めました.もちろん,どんな採用枠が出るかは完全には予想できませんが,毎回出てきた採用に応募するという受け身ではなく,あの大学のあの学科に行きたいんだという強い動機がないと,私はモチベが続きませんでした.私の場合は,デザイン工学分野で研究を継続したかったので,それが許されるだろう大学学科,例えば法政デザイン工学部,慶應SDM,慶應SFC, 東京電機システムデザイン工学部などをメインターゲットにしていました.また,ターゲット(目標)学科まで決めれば,在籍する先生の年齢(退職年)から,いつ公募がでるかはある程度予想できます.
 

2 相手を知る

 公募に受かるためには,一般的に書類審査と面接審査の2つを通過する必要があります.面接は基本的に1回ですが,候補者が2名でて決めきれない場合は面談としょうして2回目が行われることも稀にあります.まず,書類審査を通過するには,その大学,学部,学科の求める要素を満たす必要があります.公募が出る前に予想できなくても,過去の公募内容,大学のWebページ,および公開されている公募用の必要書類などから,どういう考え,能力を求めているか予想しました.その分析により自分の得たいポストを獲得するために必要な研究(業績)と,自分のやりたい研究が必ず一致するとは限らないはずです.やりたい研究とその目標公募で評価される研究を切り分けて双方行いました.評価される研究とは,その公募分野で何とか学など,名前のついている分野だと考えました.学会のセッションでも人数が多いところです.それだけが専門だと多くのライバルと比較した際に甲乙つけがたいと考えたので,独自色として自分のやりたい研究も行いました.
 

3 顔を売る

 書類選考の際に一番困るのは,審査する先生,あるいは審査する先生の知り合いの先生の誰にも知られていない状況だと考えました.日本の雇用形態では,正規雇用は職務遂行能力がなくともクビにすることが極めて難しいです.大学のパーマネントの審査は,「おもしろそうな人」だけを理由に採用されることまずないと考えました.1学科10名程度ですので,信頼できる人,つまり輪を乱さない人,人柄,挨拶のできる人,面倒な学務も積極的にこなしてくれそうな人,理想ばかり言わずに現実を見て対応できる人という,あるいみ研究とは関係ない能力も見られていると予想しました.
これらを面接だけで伝えるのは極めて困難です.そのため,審査する先生の中に候補者を知る人がいなければ,審査する先生がお知り合いの先生や,候補者の専門領域で著名な先生に,候補者について紹介を依頼します.このお知り合いからの紹介段階でも自分が誰にも知られていなければ,かなり選考過程で不利になると考えました.そこで,対策として顔を売ることにしました.もちろん,人格まで変える必要はないですが,自分というキャラクタを理解してもらうには,面接より以前に多くの先生方に自分を知ってもらう必要がありると考えました.そこで,国内,国外の会議になるべく多く参加しました.その際,ダークスーツでは行きませんでした.なぜなら,日本(機械,ロボット系)はダークスーツが本当に多いからです.なるべく,学会に私とわかるTPOギリギリ?かもしれない服装でいきました.印象に残る,顔を売って,顔,名前,キャラ,研究分野をセットで記憶してもらうことを優先しました.
 
 

5 学生を育てる.丁寧に面倒をみる

 そもそも教員なので,自分の研究より学生を優先すべきというスタンスをパーマネント職を得る前から実践すべきと考えていました.
学生のモチベーションが高い状態の研究力は爆発的です.チーム全体が円滑に進んでいれば,不必要な手間がかからないので,結果的に自分の手もあきます.学生も論文を出してくれるので,共著も増えました.

 

6 論文や学会に出る意義を伝え続ける

 学生にとって論文や学会は卒業や修了に必須要素ではないです.面倒だなと思えば,それだけのことです.しかし,学会発表や論文投稿を準備する過程や,その結果も必ず学生の将来に役立つものと私は確信しています.そのことを何度も何度も学生に伝えました.そして,学生が主体的にこれらの活動をしてくれるように,モチベを高めました.これは5と同じで,結果的に学生に対する卒論や修論などの指導が効率化され,共著の業績もより増えやすくなりました.
 

7 学生の金銭負担を限りなく低くする

 学生が研究活動を積極的に行わない理由は,興味がないという理由だけではないと考えています.生活費がない状態では研究どころではなく,バイトが忙しくて,やってられない学生も多々います.そんな学生に,なんでもっと時間かけて研究しないのか?と言っても何も解決しません.
研究に学生が集中できるように,学内外の奨学金について種類やルールなどを熟知して,それらを学生に紹介する,出し方や書き方をアドバイスしました.その他,学内の様々な補助金の存在や学生ならできる節約術など,ありとあらゆる方法で,学生の金銭的負担を可能なかぎり低くする方法をアドバイスしました.結果的に学生は時間を確保できるようになり,研究を自主的に行うようになっていくと思います.私自身の研究に集中できる時間を確保できたと思います.
  

8 学生の就活の相談に乗る

 これは7と似ていますが,就活が長引くと,学生は研究できません.また,研究なんてやってても無駄という事実とは違うネガティブな雰囲気が研究室の先輩から漂うと,就活前の学生も怖くなりインターンや謎のセミナーに不必要に多く足を運ぶようになります.これは避けたい状態です.学生が即時に就活が終わるように,業界研究,行きたい会社を学生の希望から提案する,エントリーシートの赤入れなど,就活の手助けも積極的に行いました.結果的に,5,6,7と同じく,自分の研究の時間も増やせたと思います.また,研究をしていても自分の行きたい会社を狙える研究室だという雰囲気をつくることは様々な面でプラスになったと思います.
 

9 論文業績の質だけにこだわり過ぎない

 より高いレベルの学会に参加したい,高いIF論文に採択されたいと願う気持ちはみな同じです.あくまで個人的な意見ですが,パーマネントの審査では,1本のレベルの高い論文よりも,複数の論文と,定期的な学会活動のほうが評価されると考えました.理由は審査する先生は複数で,全員と完全に専門が合致することはないと予想したからです.専門が違う先生には,その論文が投稿されている学会誌のレベルは伝わりづらい可能性がありますが,論文数は誰でも差を認識できると考えました.
そこで,論文の質と量の双方を考慮しました.例えば,難しい国際会議だけに応募していると,採択されなければ年間の国際会議数が0になります.そうではなく,難しい国際会議に全振りせず,このネタは確実に今年に発表して国際会議の実績を獲得するなど,緩急をつけて論文投稿や対外発表を行っていました.
 

10 ラインナップをそろえる 

 論文数だけがパーマネント職の審査基準ではありません.大学ごとにルールが違いますが,例えば,ある大学公募の書類審査を落ちた後「海外にて1か月以上研究していた経験が書類通過の最低条件」と,コッソリ教えてくれました.審査では論文のIFだけでなく,学会活動や受賞歴や競争的資金の獲得状況などの総合的な力がみられています.それらのラインナップをそろえるよう意識しました.具体的には,レベルの高い賞,レベルの高い競争的資金だけではなく,あらゆる賞にめげづに沢山応募するようにしました.
 

11 公募を出しまくる

 私はポスドクの際から身分不相応でも准教授や講師などパーマネントに応募しつづけました.出すのはタダ(紙代と郵送費だけ)です.同じ講座の公募に3回出したこともあります.これは2つの狙いがありました.
1つは,システムを理解する慣れのためです.教員公募選考の流れは就活とは違います.ほぼ皆初めての経験です.まずどのように審査選定されるのかをよく理解する必要があると思い,どんどんチャレンジしました.大学ごとに違いも多く最初は戸惑うと思います.数をこなせば,通過する書類と通過しない願書の差が理解できます.2つ目が,顔を売るためです.公募に出すことは,自分が職を求めている人だということを,アピールすることにつながります.さらに,著名な先生に研究について(無理矢理でも)見て頂くチャンスです.私のしょぼい発表を,通常の学会で著名な先生がみてくれる可能性は低いですが,公募審査は必ずみてくれます.その公募に受からなくても,次につながる可能性があると考えました.また,これは余りポジティブな理由ではないですが,全ての公募が本当に選考しているか,実は既に採用者が決まっている出来レースかが表面的には分かりづらいから,数を打つしかないという事情もあります.細かな事情は割愛しますが,必ず公募したことにしないと任意の人を採用できないというルール上の課題を抱えている大学が多々あります.そういう大学は,採用する人を決めていても,公募を出します.これに応募しても受からないのですが,出さないと分からないので,結局数を出すことにしました.私は合計で40数件応募しました.
  

12 引き際をきめておく

 大卒新卒採用の就活との違いは,期限的な終わりがないです.お金持ちなら問題ないですが,自分や(あるいは家族)の生活に影響すると考えました.いくら努力しても,運要素は0にできません.努力して能力があってもパーマネント職を得られる確約はないです.そのため,自分の中でリミットを設けて,その先の出口戦略を決めておきました.私の場合は,34歳(35歳の年)までに,パーマネントになれなかったら,諦めて企業への就活も行うと決めていました.期日があると,そこから逆算して計画が立てやすいですし,締め切りがないと頑張れないのが,人間(私)・・・・


分野によって異なるとは思いますし,ご自身のお考えもあると思いますが,少しでも参考になれば幸いです.もちろん,ここには書けることしか書いてないので,他にもやったことはあります.どの世界にも裏があるので,ご自身の分野の事情をよくよく調べることを強くオススメします.

公募の申請書を書き続けるのは,精神的に相当つらいと思いますが,
めげづに頑張ってください!!



いいなと思ったら応援しよう!