書店ガールの「心意気」
またまた本紹介の「箸休め」。12月、仕事であれこれあって久々にドッと落ち込んでいました。そういう時、何か「元気が出る本」を読みたいな、と思い立って本を借りてくることがあります。以前読んだことのある本、これだったら元気が出そう、という本。
「書店ガール」(碧野圭)は、まさにそんな本。ええっ、ややくんこんな軽~い本読むのぉ?ストーリーやキャラ設定が明快で単純すぎない?って言われるかも・・・。でもしんどい時こそ単純さゆえに救われる、という気がします。
あらすじはこんな感じ。
理子は昔気質、アナログ派。例えば書店員の仕事シーンが出てきます。棚に並んだ本をどう美しく見せるか。
それに対して亜紀はまず黙って理屈抜きでやってみる、というより、「おっしゃることは分かるんですが、それってすごく時間かかりますよね~」と面と向かって反論するので、どうにも話がかみ合いません。
ところがストーリーが進むにつれて、ふたりは負けず劣らずの本好き、書店員の仕事愛では誰にも負けない、という共通点が見えてきます。
さらに、社内や業界の人間関係などを通して、亜紀はずるくて弱い男どもの理子への嫉妬、妨害を知り、これは他人事ではない、女だからってこの仕打ちはどうよ?と憤ります。それに立ち向かうために手を組むことになっていくのです。
この辺のストーリー展開はいかにも、って感じではありますが、逆にその分かりやすさが好きです。それに仕事愛、仕事への「心意気」っていうのが、ツボにハマるんですよね~。
亜紀の仕事愛の象徴的なシーンがあります。亜紀と、夫で大手出版社の編集者伸光、出版社の同僚や仕事で関わった漫画家を集めてのホームパーティでの会話がそれです。
儲けにつながるからやるんじゃなくて、純粋に好きだから、やりたいからやる、その「心意気」がいい。だけど、個人が頑張れば頑張るほど、組織に利用されてしまう、そういう構図がありますよね。僕もそういうジレンマに直面していたところでした。それでも「心意気」あっての仕事じゃないでしょうか。損得勘定では測れない何ものかがある。自分を支えるものがあって初めて頑張れる。単純なことですが、それを思い出させてくれます。
理子は店長の異動に伴って副店長から店長へ昇格。ところがお店は半年後に潰されると知らされる。店の収益性が悪いのです。自分は閉店の尻拭いをする役回りだったのです。おまけに本部の役員から「キミの悪い評判は複数の店員から聞いている」と聞かされ大ショック。いったい誰がチクったのか。味方だと思っていた同僚のうち、誰が敵か分からない。誰も信じられない。今まで自分がやってきたことは何だったんだろう、という思い・・・
理子は子どもの頃から行っていた近所の本屋さんに立ち寄ります。ここは理子にとっては「オアシス」。好きな本を選んでお店のおじさんと話してホッとリラックスできる空間。
店が閉店になってしまう話をすると、お店のおじさんに励まされる。「じゃあ、理子ちゃんの腕の見せ所だね。店を守れるかどうかは店長の手腕にかかっているからね。」「理子ちゃんならきっとできるはずだから」おじさんは、理子の父がしばしば来店して娘の仕事ぶりを誇らしげに話してくれたと打ち明けてくれます。父とは仕事の話なんてしたことないのに、いつの間にそんなことを・・・知らないところで支えてくれていた家族の存在に励まされる理子。さあ、やるしかない・・・
店の収益改革に立ち上がった理子と店員たち。あの手この手を繰り出すけど、僕が一番いいなと思ったのは、店長の理子が全員と面談したこと。30分とか時間をかけて、いいことも悪いことも、自分への批判や厳しい意見も含めて受け止めようとしたこと。これってとても大事なことだと思います。面談の結果、店員が理子を見る目が少しずつ変わってきます。みんなの意見を真剣に聞こうという理子の姿勢が、なにより好意的に受け取られたようです。 ああ、うちの会社もそういうことやってくれないかなぁ・・・。みんなのモチベーション上がると思うよ~。
みんなの努力のかいあって、目標の業績を見事クリア!しかし店舗廃止は既定事項、と本部に撥ねつけられショックを受ける理子。本部に辞表を出し、ひとりで飲んでいると、亜紀が現れ、みんながやってきて、「残念会」が始まります。みんな悔しくて悲しいけれど、笑顔です。店長のふんばりに感謝するみんなの笑顔。
・・・とても分かりやすいスッキリ感(笑)。でも僕はとにかく「仕事は心意気。損得勘定抜きの働きがいを求め続けるってことなんじゃないかな。」と強く感じます。そういうことを思い出させてくれる、このストーリーが好きです。