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大草原の小さな家??

 すっかり「書評のコーナー」しかもカタイ本ばかり、になってしまっているので、少しは箸休めを・・・?
 ふと思い立ってむらとしょ(村の図書館)から「大きな森の小さな家」(ローラ・インガルス・ワイルダー)を借りてきました。なんでかって?いや、つい最近、友達に「休日の朝ごはんは薪ストーブの上でホットケーキ」って写真を送ったら「ややくん家って、大草原の小さな家みたいだね」と言われたもんだから(笑)。「どこがぁ?全然似てないじゃん!」と笑っちゃうんだけど、結構そんな風に人は見るんだなぁ、と思います。他にも「ややくん一家はインガルス一家みたい」と言われたこともあるし、「アルプスの少女ハイジ」とか「北の国から」とか、いろんな人からいろんな田舎暮らしのイメージをいただいたことがあります(笑)。全然違うんだけどなぁ・・・。まあ、いいや。
 さて。僕が子どもの頃TVですっかり有名になった「大草原の小さな家」シリーズですが、その第1作である本作、気軽に読めるサイズです。でも中味はなかなか濃くて味わい深いのです。西部開拓者、大きな森の中で暮らす一家の日々を3人姉妹の真ん中のローラの眼を通して描いていますが、その家族の愛情と絆、さまざまな日々の暮らしの描写・・・驚き、感動、発見、の連続です。
 一家の暮らしは正真正銘の「自給自足」。家はお父さんが建てちゃうし、服はお母さんが作っちゃうし、野菜や麦の栽培はもちろん、卵も取ってお乳も絞り、バターやチーズも作り、豚も飼い、鹿だって熊だってお父さんが銃で撃ってきちゃうし、獲ってきた肉はぜ~んぶ燻製にしたり、塩漬けにしたり、ヘッドチーズにしたりしちゃうんだから。秋の終わりには屋根裏部屋と地下の食料貯蔵穴倉は美味しい食べ物ではちきれんばかりになっちゃうんだから・・・!!
 しかも、そのひとつひとつの描写が詳しいこと!ローラがいかに眼を皿のようにしてお父さんやお母さんがすることを息をつめて見ていたことか!目に浮かぶようです。
 例えば燻製のやり方。今どきだと一斗缶を使ってスモーカーを手作り、なんてあるけど、ローラのお父さんはがらんどうになった木のうろを切り取ってその内側に肉をぶら下げる。そして「なんといってもヒッコリーの煙が一番だ」「ヒッコリーでいぶしたハムほどうまいものはないからな」なんてセリフが出てくると、もう読んでいる方も生唾が出てきちゃう。
 例えばバターの作り方。作り方も興味深いのだけど、面白いのはバターが出来上がってから。出来上がったバターを型で抜くのだ。お母さんがバターを木の型に詰めて抜くと、ほらできた、イチゴの実と葉っぱの形がついたバターがころんと出てくるのだ。美しい!!自給自足するだけでも大変なのに、バターをこんな美しい形にして食べているなんて!本当に日々の暮らしひとつひとつを丁寧に丁寧に描いているな、と感心してしまうのです。
 夜はローラにとって一番楽しい時間。だってお父さんが一緒だから。晩ごはんの後、お父さんがわなの手入れをしたり、銃をきれいに手入れしたり、鉛を溶かして弾をこしらえたり、そこでもお父さんの妥協のない丁寧な仕事ぶりがローラの観察の眼を通して描かれています。銃はいつでも撃てるように弾をこめて戸口の脇に掛けておきます。本当に自給自足とは「自分の身を守ることまで自給自足」なんだなとローラも身に染みて感じていたことでしょう。 そしてお父さんは仕事を終えると、バイオリンを弾きながら歌ってくれます。12歳の時には既に一人前に働いていたというお父さん、いったいいつどこでバイオリンを習ったのでしょう??それが不思議だ!!恐らくロクに学校にも通えず、でも自分たちを守り抜く腕と知恵、暮らしを楽しむ最高の教養を持っている家族だな。。。と本当に敬服してしまいます。
 ・・・と書いているとキリがないので、あとは皆さん、読んで楽しんでくださいね。僕もこの本から参考になることがないかな、とあれこれ考えて楽しんでいます。とりあえず「地下の貯蔵庫」いいな。どんな風につくっているのかな、手掘りでやってみたいな。 ぺピンの街まで片道11kmか。じゃ、うちからユニクロやモスバーガーまで歩いて行けるな。おっと、お父さんは街に毛皮をしこたま担いでいって物々交換して素敵な布地とかローラのためにキャンディとかを持ち帰ってくるんだった、ユニクロに行ってる場合じゃない。
 終わりの解説で評論家の俵萌子さんが今の便利な世の中とローラの時代を比較しています。「いったいどちらがしあわせなんだろう。たぶん、人間が人間らしく生きるためにはもう一度ローラの時代に戻る必要があるのでしょう。でもそれは可能でしょうか。とっくに失ってしまったものへの郷愁だけにするのか、ここからなにかをとり戻すためのバイブルにするのか。それは、私たちが決めていくことなのです。(注:原文を中略、編集してあります)」
 僕はこのくだりに少々不満です。「私たちが決めていくこと」と書いて終わり、じゃなくて、「私はこれを実行していく」と書いてほしかったし、僕自身がそうありたい。日本人1億総評論家ではローラも浮かばれません。評論している暇があったらコツコツ日々の暮らしを描いていきたいな、と思います。

 物語の最後。ローラがベッドに入り、お父さんが静かにバイオリンを弾き、「いごこちのよい家、父さんや母さん、そして暖炉の火や音楽」に囲まれて、胸の中でつぶやきます。「これが、いまなんだわ」・・・思わずジーンとしてしまいました。本当のしあわせって、「いまを味わうこと」なのかもしれませんね・・・。

(※タイトル写真は、原作中の「霜のジャック」から連想した厳冬の朝の凍った窓ガラスの模様。東成瀬村在住時の2003年1月に撮影。)


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