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映画「パーフェクトワールド」 自分にとって「完璧な世界」の意味を考える

「おおぉ...。今観ても良い映画。いや、今観るとまた良さがある映画。」

そんな感想を持った映画が「パーフェクトワールド」。最近見直して、学ぶところが多い映画だと感じました。

タイトルに込められた意味もなかなか深いです。この作品の素晴らしさについて、整理したいと思います。

映画「パーフェクト ワールド」とは

1963年アメリカ合衆国テキサス州。刑務所から二人の男が脱獄した。テリーとブッチ。逃走途中に民家へ押し入り、8歳の少年フィリップを人質に逃亡する。追いかけるのは警察署長のレッドと心理学者のサリー。人質に取った子供フィリップと凶悪犯ブッチには次第に奇妙な信頼関係が生まれる。徐々に追いつめられる二人が最後にとった行動とは・・・。

この映画は1993年の映画。今から27年前の作品です。「27年!」そんな前だったのかと驚きですが、当時のケビン・コスナーもまだ若いです。監督はクリント・イーストウッド。当時からイーストウッドはロードムービーの撮り方が非常にうまいですね。「ミリオンダラーベイビー」「グラントリノ」など丁寧に人間ドラマを描くのがうまい、素晴らしい監督ですね。

この映画はケビン・コスナー扮する脱獄犯ブッチと、人質の子供フィリップの友情を描く異色のバディムービーです。フィリップは父親がおらず、女性ばかりの家族で暮らす貧弱な少年。そのため、フィリップは次第にブッチに「父」の存在を感じていきます。

そしてブッチが逃亡の先に目指すのは父親がいるというアラスカ。 彼が思い描くのは父親と幸せに暮らしたいという、かつて実現しなかった「パーフェクト・ワールド」です。

ブッチとフィリップはお互いに「父」の存在に飢え、ブッチはフィリップの「父」になっていく。ワイルドなブッチと貧弱なフィリップは真逆の性格で描かれながらも、「父と子」という普遍の絆で繋がる二人に次第に感情移入していきます。

果たしてそれぞれが考える理想の世界、パーフェクトワールドにたどり着けるのでしょうか。


「パーフェクト ワールド」のここが素晴らしい

この作品ではキャラクターそれぞれに理想とする信念や目指す場所といった個別の「パーフェクトワールド」が描かれています。

クリント・イーストウッド扮する捜査官レッドは経験豊かであるがゆえに自分の捜査手法をゆずらないスタイルで、彼が長年信じて来た「パーフェクトワールド」を追求します。

そして誘拐された少年フィリップの母親、一緒に脱獄したテリー、道中で車を貸してくれるお父さん、道中家に招き入れた子どもに厳しいお父さんなど、登場人物はそれぞれ「信念」を持って描かれています。キャラクター描写にブレがない。

それぞれが信じる「パーフェクトワールド」があるということ。そして、それを信じている人の行動はシンプルです。良いか悪いかは別にして迷いがない。

特に主人公ブッチは凶悪犯で脱獄犯ですが、「子供のことを軽視する大人」に異常なまでの怒りを覚えます。意味なく叱りつけ叩く親。親の勝手な宗教上の理由で子供がハロウィンをすることを認めない親。子供がこぼしたジュースで車が汚れたことを怒る親。こうした親に怒りの鉄槌を下します。ブッチの中に流れる価値観は極めてまっとうで、観ている側はブッチの中身は善人であると気づきます。そこに観客は少しずつ惹かれて行きます。

犯罪は許されることではありません。そこのけじめはしっかりとつけることになりますが、劇中子供想いのブッチに心を許していくことになるので、観客は善と悪の間でゆさぶられることになります。最後には「逃げ切って、パーフェクトワールドまでたどり着いてくれ」と応援している自分がいます。

仮ではありますがブッチとフィリップの「父と子」が交わす言葉はユーモアがあり、あたたかい気持ちになります。誘拐と逃亡というプロセスの中で、善・悪、逃げる・捕まる、追う・追われる、という対比の緊張感を独特の優しタッチで描く、異色のロードムービーといえます。


「パーフェクト ワールド」はどこにあるのか?

ブッチは父のいるアラスカを目指し逃亡を続けます。そこがブッチにとってのパーフェクトワールドだから。しかし、最後は厳しい現実が待っています。

そこで、観客は最後に気付きます。パーフェクトワールドはどこだったのかを。それは紛れもなく、フィリップと共にした逃避行の道中であり、過ごした時間、交わした会話であると。それはブッチにとっても、フィリップにとっても。

もちろん、そのプロセスで2人はそのことには気づきません。観客も。最後に気づくのです。「欠けがえのない世界だった」と後からわかるのです。

人は完璧な世界、言わば「理想」を追い求めて生きています。しかし、その完璧な世界は今目の前にあることに気づいていないだけなのかもしれません。

親の宗教上の理由で抑圧されて育ったフィリップはハロウィンもカーニバルも経験したことがありません。そんなフィリップにブッチは「アメリカ人は綿菓子とローラー・コースターを楽しむ権利がある」と話します。道中で盗んだお化けのキャスパーの恰好をしたフィリップは、ブッチの協力でハロウィンを経験し、車の屋根に乗ってローラー・コースターを経験します。フィリップにとって夢の時間です。

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このシーンはとても心にグッとくる素敵なシーンです。観終わった後に、振り返るとより輝きを増す素晴らしいシーンだと思います。

「パーフェクトワールド」はこうした些細な日常の時間や会話にあるということだと思います。「パーフェクトワールド」は目指すものではなく、気づくものなのかもしれません。

まとめ

この映画は「凶悪な犯罪者」と「貧弱な少年」という真逆の世界の二人が偶然出会い、心を通わせ、パーフェクトワールドを経験していくお話です。人と人が心を通わせるのに理由などいりません。

人種差別の問題や多様性の重要さを最近よく見聞きしますが、この映画を観ても、その人の価値は生まれや、生い立ちでは測れないということを理解できます。

自分にとっての「信念」という「心の中のパーフェクトワールド」を持つことは行動原理をシンプルにし、分かりやすく人生を歩む原動力になります。さらに、「時間や空間としてのパーフェクトワールド」はいつかどこかにたどり着くものではなく、実は目の前にある世界(時間や会話)が既にパーフェクトワールドなのかも知れません。それに気づける自分でありたいと思います。

この映画を観ると、「小さな幸せの大切さ」を感じます。

改めてこの映画に触れ、タイトルである「パーフェクトワールド」という言葉の意味を自分なりに考えてみてはいかがでしょうか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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やわらかメガネりょう
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