スランプに陥った作家が人生を取り戻す新感覚スリラー
Finlay Donovanは2人の幼い子供を育てるシングルマザーで、本が全く売れず危機的状況にある犯罪小説作家です。
元夫は長年不倫関係にあった不動産業を営む美人と同棲するために家を出ただけでなく、Finlayが雇っていたナニーを「お金の無駄使いだ」と勝手にクビにしてしまうような、どうしようもない人。
夫とナニーを失ったFinlayに残ったのは、元夫の浮気を知り激怒した時に壊した車の賠償金とマックスドアウトして使えなくなった大量のクレジットカードの請求書だけ、という金銭的にも危機的状況に落ち入ります。
そんな状況下で、Finlayはヘアカットに失敗しダクトテープを頭に巻いたままの4歳の娘を学校に送り出し、どうにかエージェントとのランチに漕ぎ着けます。
一行も書けていない殺人小説のプロットについて説明していると、偶然、隣に座っていた女性が「プロの殺し屋が”問題のある夫”を始末する仕事依頼だ」と誤解。
その女性は、自分の夫の殺人依頼と巨額の報酬を書いたメモをFinlay に渡し、その場から消えます。
作家としてもシングルマザーとしても崖っぷちのFinlayは好奇心と巨額な報酬に釣られて、殺人ターゲットの顔を見に行ってしまうのですが…。
プロの殺し屋が殺人を行うというドラマチックな事件ではなく、誰もが思っているような、誰もが考えているような人生のスランプともいえる状況をプロの殺し屋と誤解されたことで突破し、執筆活動のスランプからも抜け出し、人生そのものを自力で取り返していくFinlay。
特に素敵だなぁと思ったのは、誰も彼もが友人との写真を部屋に飾るだけでは飽き足らず、snsで拡散し承認欲求を満たすのに忙しい世の中で、ナニーとFinlayは雇用関係ではあるものの、Finlayは「2人で撮った写真を飾る必要などないから」私たちはお互いに気の置けない友人関係なのだ、と気が付くシーン。
「友情とはこうでなければならぬ」「家族とはこうでなければならぬ」「人生とはこうでなければならぬ」というのは、実は自らの思考であり、それらを解き放てばより良い人生が待っている、と思える良い小説でした。
まさにFinlay Donovan is killing it.
(Finlay Donovanはよくやってる)