【SynthV】スペイン語音素→日本語化辞書を作ってみた(配布あり)

こんにちは、八歌です。
Synthesizer V (SynthV)のスペイン語音素について調べていたら、面白かったので紹介します。何卒よしなに。



1. ダウンロード


さて今回は、スペイン語音素で日本語を歌わせる辞書を配布します。拙くはありますが、楽しい時間のお手伝いとなりましたら幸いです。ダウンロードはこちらからどうぞ。

配布物内にも当記事と似たようなことが書いてありますので、どちらか一方を読めば大丈夫です。

 

2. 導入


導入まではざっくりとだけ触れます。詳しくは公式マニュアルをお読みください。


辞書の入れ方


配布zipを解凍すると、「dicts」フォルダーが入っています。これを、「Dreamtonics>>Synthesizer V Studio>>以下」に入れてください。「dicts」が見つからないときは、「Dreamtonics」でPC内検索すると、探しやすいかもしれません。
 

ユーザー辞書は以下の場所に保存されます。
Windows:C:\Users\<ユーザー名>\Documents\Dreamtonics\Synthesizer V Studio\dicts
macOS:/Library/Application Support/Dreamtonics/Synthesizer V Studio/dicts

「Synthesizer V Studio ユーザーマニュアル 06 発音辞書」より引用
こんな感じ。ダウンロードした「dicts」フォルダーを、ここに入れます。
「dicts」が見つからないときは、「Dreamtonics」でPC内検索すると、探しやすいかもしれません。

 

辞書の選び方


  1. ひらがなで歌詞を入力します。

  2. 歌声タブから、トラックの言語をスペイン語にします。

  3. 辞書タブから、辞書「ES2JP」を選びます。

こうして……。
できた!

この操作でうまく変換されない(一部の子音が欠落する)ときは、ノートの言語がスペイン語になっているかを確認してください。日本語とスペイン語は母音が同じなので、パッと見では分かりづらくなっています。

トラックの言語がスペイン語でも、ノートの言語が日本語だと、うまくいきません。


3. 参考資料


音素はSynthV同梱テキストを参考にしました。現在は公式サイトからも確認できます。

■スペイン語音素一覧
母音 a e i o u
半母音 U I y ll
破裂音 b B d D g k p t
液音 l rr r
鼻音 m n N J
摩擦音 f s C sh x
破擦音 ch

※Synthesizer V Studio Pro v1.11.0b3 同梱テキスト「spanish-xsampa-phones.txt」参考

スペイン語については、主に下記サイト様を参考にしました。ありがとうございます。より詳しく知りたい方は、下記サイトをご参照ください。



4. 調声TIPS


以下、スペイン語について調べたこと、触っていて気付いたことです。とりあえず、太文字の説明を抑えておけばOKですが、余裕があれば他もお読みください。
 

■母音

母音の音素表記は日本語と同じです。例えば「ま」なら「m a」と書きます。

■発音の再現

  • スペイン語音素には「h/w/ny/z/j」がないため、代わりに「x/U/J/C/ll」を使いました。

  • Cはよく英語のthに近いと言われます。

  • 小文字Lのllは地域差のある発音で、SynthVでも、じゃ行、りゃ行、や行のいずれかになります。じゃ行にならないときは、そこだけ英語や日本語に置き換えてください。

  • その他の無い音素は [k y a] [t s u] のように、子音を組み合わせて再現します。(もたつくときは子音の長さを短くすると◎)

■摩擦音BDとシ

  • さ行に近いシ [s i] 、摩擦音バ行 [B] 、摩擦音ダ行 [D] を使うと、スペイン語っぽい、流れるような早口になります。

  • 反対に、しゃ行に近いシ [sh i] 、破裂音バ行 [b] 、破裂音ダ行 [d] を使うと、日本語の発音に近付きます。

  • スペイン語では、基本的にBDを使いますが、以下の例外があります。

    1. 発音はじめのバ行は破裂音のbになる、m直後のバ行も同様

    2. 発音はじめのダ行は破裂音のdになる、lとn直後のダ行も同様

  • SynthVでは、BDも破裂音に分類されています。ただ、日本語のNも母音扱いなので、便宜上の分類かと。あまり気にしなくていいです。

■ら行

  • 巻き舌ら行 [rr] は、歌唱モードと併用してください。特に子音が平坦なピッチだと失敗しやすいです。

  • ら行は3種類あり、巻き舌ら行 [rr] 、Lら行(小文字LのI)、日本語に近い弾き音ら行 [r] があります。

  • より正確性を求めるなら「語頭にrrは使わない」というルールがあります(が、日本語歌わせてる時点でスペイン語じゃないので、気にし過ぎなくても良いとは思います)

■大文字の半母音

音節主音の後に使う半母音として、イ(大文字iのI)と、ウ [U] があります。これらは子音扱いになり、「いぇーい(y e I)」のように使います。UTAUの尾母音のようなものです。

■I、l、llの違い

イの半母音の「I」は大文字のiで、それ以外の「l」は小文字のLです。

左がll(小文字L)、右がイの半母音(大文字i)

■しゃ行、ざ行

一部地域では、しゃ行、ざ行がなく、すべてサ行で通じるんだそう。日本語化において、これらの発音をどうするかは好みの問題です。 

 

5. 辞書の仕様


上記を踏まえて、4種類の辞書を作りました。これは実際に触ったほうが分かりやすいかもしれません。

 

📕辞書1「ES2JP」

~外国語訛りが聞きたいときに~
デフォルトでは、日本語離れした発音(摩擦音ダバ行、巻き舌ら行、さ行に近いシ等)が多く登場します。最も訛りが強く、流れるような早口が特徴です。早口言葉のように、流して歌う早口の曲と相性が良いです。
(任意ですが、発音はじめのダバ行は曖昧になるため、破裂音(d,b)に置き換えると、聞きやすくなります)
 

📘辞書2「ES2JP2_esdb」

~もうひとつの選択肢~
基本的には辞書1と同じですが、ダバ行が破裂音になったことで発音がハッキリとし、スタッカート気味になります。曲によっては、日本語DBと相性が良いことがあります。休符や破裂音の無音が多い、リズミカルな早口の曲と相性が良いです。
 

📗辞書3「ES2JP3_jprr」

~巻き舌を生かした日本語調声に~
日本語風の発音に、巻き舌ら行を加えた辞書です。例えばこの辞書で一度再生し、巻き舌の気に入ったところだけスペイン語として残し、残りをネイティブ日本語で歌わせる……みたいな使い方ができます。
 

📙辞書4「ESJP4_jp」

~あえて日本語っぽくしてみた~
最も日本語に寄せて歌う辞書です。外国語感はあまりないですが、「日本語に変換する」という本来の役目は最も果たしているといえます。 辞書1と真逆の状態なので、辞書の改変はしやすいかもしれません。余談ですが、日本語歌声DBに使うと、ネイティブ言語と非ネイティブ言語の違いが分かりやすいので、面白かったりします。
 

📚辞書2~4はどこにある?

辞書2~4は「すべての辞書」フォルダーに入っています。お手数ですが、任意で導入してください。辞書は「Dreamtonics>>Synthesizer V Studio>>各言語ネイティブ歌声DB用のフォルダー>>以下」に入れてお使いください。

  • 日本語DB:japanese-romaji

  • 英語DB:english-arpabet

  • 中国語DB:mandarin-xsampa


📚どれを使ったらいい?

辞書の数字が大きくなるほど日本語に近付きます。最初は辞書1「ES2JP」で再生し、合わなければ、2、3、と数字を上げていくと良いと思います。
 

📚おまけ機能

各辞書は、「ら2」「らrr」のように入力すると、発音差分が使えるようになっています。詳しくは同梱テキストをお読みください。

 

5. 利用規約


  • 良識の範囲でお使いください。

  • 当辞書の作者名を、偽ることはできません。

  • 当辞書を使用したとき、クレジット表示は任意ですが、紹介があると喜びます。

  • 当辞書を参考にした辞書やツールを配布するときは、当辞書の配布URLと、作者名 (八歌) を表示してください。

  • 当辞書の商用利用は、事前にご相談ください。(書き出した音声は自由にお使いください)

  • 当辞書の作者は、利用時に生じた不利益の責任を負いません。

  • 趣味の延長で作成したものですので、予めご了承ください。

連絡先

作者名:八歌
メイン連絡先 (X・Twitter) : https://twitter.com/yauta7577
サブの連絡先 (メール) : yauta0909◆gmail.com(◆=@)
配布URL : https://note.com/yauta7577/n/n34cad1473174
(リンク切れのときは「 https://yautau.wixsite.com/0909 」を表示してください)

 

スペイン語といえば巻き舌が有名ですが、他にも個性的な音素がたくさんあって面白いですね。 個人的には「s i」の発音が好きです。

それではみなさん、よいSynthVライフを!
 


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