いのちのものがたり外伝 老師編7
「日暮れ前に、ここを立とうと思います」
「そうか、では一つ質問していいかね、あなたはここへ来る時、若い頃のわしに出会っただろう」
「ええ」
「なぜそれが分かった」
「瞳です」
「ははは、わしに出会う前に、なぜそれがわしの瞳だと分かったのだ」
そう言われて、私は言葉に詰まった。
なぜ会ったことも無い老師の瞳が分かったのだろう。
「わかりません、ただ、わかっていました」
「そう、人は答えを求めて紛争するがの、真実というものはただわかっているものだ。それ以外は幻といえよう」
「だとしたら、幻によって人は右往左往しているのですね」私は答えた。