いのちのものがたり外伝 老師編14

「そういうこと、だったのですね」と弟子が言った。

言葉が要らないのは、良いようで詰まらないな、と思いながら私は返事をした。

「ええ、この先はそれぞれが解放されていくでしょう」

弟子は不意に振り返り、私を抱きしめた。

「ありがとう、あなたも解放されてください」

ほのかな百合の香りが衣服からした。

どこかで嗅いだことのある懐かしい匂いだった。

「乳飲み子は母の香りがするのですよ」

その言葉を聴きながら、私は巡るいのちを思った。

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