いのちのものがたり外伝 老師編11

その香りを嗅いだ瞬間、不思議なことが起きた。

私の意識は別の空間に飛んだ。私はどこかの宮殿の冷たい床の上で舞っている。

それは、見る者のない舞で、空間と溶け合う様な踊りだった。

「どうされた、何かを思い出したかね?」

「はい、どこかの宮殿で舞っている姿が見えました」

「君は仕える者だったのかい?」

「いいえ、私はただ舞う者でした」

「そうか、やはりあなたは超越した人だ」

そう語る老師は、何か言いたそうだったが、決して口には出さなかった。

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