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なごやを学ぶ「まちなか寺子屋」と「まち歩きなごや」のディープなまち案内が面白い
インターネットがあれば、そのまちのほどんどのことを知ることができる今、“わざわざ”足を運んでその土地の歴史や文化を再発見していくのはなぜか。その魅力は一期一会であり、知的好奇心をくすぐるから。やっとかめ文化祭DOORSという場でしか起こらないコラボレーションや味わえない一度きりの体験が、毎年まちの人を惹きつけています。
今回は、「まちなか寺子屋」と「まち歩きなごや」と、学びにフィーチャーした企画について。それぞれの特徴や、今年の見どころ、一般的なまち案内との違いについて、ご紹介します。
お話を伺ったのは、まちなか寺子屋の企画を担当する伊藤さん、まち歩きなごやの企画を担当する齊藤さん、両方のディレクターを務める近藤さんです。
共通するのは知る楽しみ
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ーー早速、まずは担当の伊藤さんから「まちなか寺子屋」について、教えていただけますか?
伊藤さん(以下、伊藤):江戸時代の寺子屋に倣って、まちなかのいろんな場所を「学びの場」に見立て、名古屋について多様な角度から学ぶ講座です。歴史に限らず、伝統文化や建築、食、あるいは最近のトピックスも取り入れ、名古屋の文化にゆかりのある場所で学び、体験できる機会となっています。
例えば、和菓子に関する講座や、香道体験など、毎年開講する人気講座もありますが、基本的には毎年イチから企画を立てるので新しい講座がほとんどです。
ーーでは「まち歩きなごや」についてもお聞かせください。
齊藤さん(以下、齊藤):まちなか寺子屋が座学メインなのに対し、名前の通り、まち歩きなごやは外でガイドさんと一緒に名古屋のまちを探索するツアーです。歴史にまつわるコースもあれば、少しマニアックな建築ツアー、路上観察など、一人で歩いて見つけられないようなものをガイドさんに案内いただきます。
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近藤さん(以下、近藤):まさに『ブラタモリ』のイメージに近いですね。世の中には、他の人が知らない、ものすごく深いけれど、広く役に立たないような知識をお持ちの方っていらっしゃるじゃないですか。歴史や文化だったり、その土地の石ころ一つだったり、そういったディープなことを知っているガイドさんと観光地や住宅街を歩き、面白い視点を教えていただけるツアーです。なのでいわゆる観光ツアーとはまた別のものとなっています。
ーー興味深いですね……!
近藤:どちらにも共通しているのは「知る楽しみ」ですね。10〜20代は勉強や仕事であっという間に時間が過ぎてしまいますが、30歳を超えるとだんだんと知的好奇心が出てくると思うんです。例えば、「もっと勉強すれば良かった」とか、今まで知らなかったことを知る楽しさって、歳を重ねていくと徐々に芽生えてくる。そんな知的好奇心を刺激する講座やコースにしています。きっと、やっとかめ文化祭に来ないと体験できない内容だと思いますし、毎年ツアー内容を変えているので、毎年ハマってお越しくださる方もいますね。
ーーつまり、教え手となる講師やガイドの方の腕の見せ所となりますね。
齊藤:まち歩きなごやでは、ガイドさんの説明が面白くて、毎回感動します。どこで話すのか、どうやって一緒に歩く人を共感させるか、ポイントを掴んでいらっしゃいますし、単に歴史や地理の教科書をなぞって話すのではなく、見えないものを見つめ、思いを馳せていく時間を過ごさせてくれます。
近藤:8割はちゃんとした真面目な話で、2割は雑談や自分自身のエピソード、ちょっとふざけた話。そのバランスが取れてる方は、参加者の気を引くのが上手だなあと思いました。ツアーの最後に、拍手が起こったこともありましたね。
ーー教え手となる“人”ありきの企画なんだとあらためて実感しました。教え手となるのは、どのような方ですか?
近藤:大学教授や講師を生業としている方以外に、個人活動として研究をしている方もいらっしゃいます。私たちの裏テーマとして、参加者を増やすことだけじゃなく、講座やガイドになっていただく教え手を増やすのも一つの目標です。地域にこんなに知識がある文化人がいるのに、話す場がないなんて勿体無いですよね。
やっとかめ文化祭DOORS「ならでは」の学びの場とは?
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ーーまちなか寺子屋とまち歩きなごや、それぞれの企画で特徴となる部分はなんでしょうか?
伊藤:まちなか寺子屋の講座の中には、ただ「教わる」のではなく、受講者の方と一緒に、あるテーマの過去と未来を考えるなど、答えのないことを考える回もあります。例えば、2022年度の講座だと「名古屋的デザインってなんだろう?」とか、「和菓子で振り返る過去と未来」など。自明なことを高名な方からお聞きして終わるのではなく、自分で考える時間や、その先につながるきっかけをつくることも、まちなか寺子屋の意義だと考えています。
ーーそういう一緒に思考するって機会があるのは素敵ですね。まち歩きなごやはどうでしょう?
齊藤:まちなか寺子屋にも通ずることですが、とにかくニッチで、あるテーマをとことん深掘りしていけるのは、やっとかめ文化祭ならではだと思います。
『名古屋スリバチ学会』って知っていますか?谷や窪地など高低差のある「凸凹地形」を歩いて楽しむ会で、地形から名古屋のまちの成り立ちを探る回があったり、「瓦女子」と呼ばれる、瓦が好きすぎる女性がひたすら瓦への愛を語る回があったりして、皆さんすごくニッチなことに本気だから面白いんです笑。
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ーー偏愛が詰まっていて、タイトルだけ見ても興味がそそられます!
近藤:そうそう、タイトル決めは結構しっかり考えています。参加の前の申し込みの段階で、「おっ」と思わせる言葉にして、興味関心を湧かせていけるように、「〜〜の歴史を学ぼう」みたいなタイトルよりも、もっと具体的な特徴を入れるなど、かなりこだわっています。
ーー1つのタイトルを考えるだけでも大変なんですね……!
齊藤:でも大変って思ったことはあまりないですね。まち歩きなごやの下見が真夏なので、暑さがしんどいくらいで笑。
伊藤:私も大変で辛いと思ったことはなくて、全体的に楽しんで企画しています。強いて言えば、まちなか寺子屋の会場探しです。講座のテーマにゆかりのあるところを会場としているので、講座内容と関連するような場所を見つけるまではハードですね。でもなんだかんだ、やってる側が一番楽しんでるかもしれません。
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ーー皆さんが細部までこだわりを持って作っていることが伝わってきました。企画する上で、大切にしていることを教えてください。
伊藤:企画を立てる段階で、「なぜやっとかめ文化祭でやるのか」を提案者である自分がしっかり話せるようにと、責任を持ってやっています。それと私自身、伝統や歴史などの専門知識に長けているというわけではないので、率直に「知りたい」って欲が強いというか。なので講師の方にも「私のような人間に教えてください」とお伝えして、一緒に学び、楽しみながら、講座を作っています。
齊藤:まち歩きなごやの企画も同様に、やっとかめ文化祭でやる意義は大事にしています。あとガイドさんそれぞれ個性があるので、一対一でのコミュニケーションを心がけていますね。ガイドさんと「一緒に作っていく」立場なので、実際に提案いただいたコースを歩いて、一緒にブラッシュアップして、最後まで伴走しています。
深めるだけでなく、新たな角度を広げていく
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ーー最後に今年のプログラムの見どころを、それぞれお聞かせください。
齊藤:まち歩きなごやは、人気テレビ番組にも出演していた、全国のからくり時計を調査している3人組をお呼びして、大須・伏見エリアのからくり時計を案内いただくコースや、かつて巨大な貯木場だった熱田白鳥の歴史を深掘る、白鳥貯木場跡地のコースがおすすめです。
伊藤:まちなか寺子屋では、毎年ご協賛いただいている愛知学院大学の教授さんの講座に加え、今年は名古屋市立大学のゼミ生さんがコーディネーターとなって研究調査してできた講座や、東海中学の生徒さんとのトークセッション、中京大学文学部アクティブ・ラーニング研究会さんによる短歌合戦など、若い方と一緒に講座を作り始めました。
近藤:あと今年から初めて金曜の夜をはじめ、平日にも開催する講座が三つあって、その一つが、熱田神宮の御神体である「草薙剣」とヤマトタケルの物語を、ミヤズヒメとの恋物語という視点で学ぶ講座です。大学教授と小説家さんの2人が教壇に立ち、それぞれが持つ“眼鏡”という視点を借りて、まちを見ることができると思います。
伊藤:何より平日だと私たち運営側も他の講座やコースと被らないから行きやすいのもいいですよね笑。
近藤:そうなんです。私たちもまだまだ知らないことばかりで、まちなか寺子屋やまち歩きなごやを体験することでまちの見方が変わるんですよね。皆さんにも「名古屋ってこんな面白さがあるんだ」と、ある専門分野から新しい視点を増やしたり、知識を深めるだけでなく、新しい角度でまちを見るきっかけになったらいいなと思っています。
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話を伺えば伺うほど、マニアックで興味深い企画を知ることができ、今からワクワクしてしまいました。そんな今年のまちなか寺子屋とまち歩きなごやのプログラムの詳細と申し込みについては、下記よりご確認ください!
▼「まちなか寺子屋」公式ページ
https://yattokame.jp/2023/terakoya
▼「まち歩きなごや」公式ページ
https://yattokame.jp/2023/machiaruki
執筆&撮影:fujico