駅前

駅前の 歩道橋で 五十前の 知らん人が
でかい声で 俺たちの生きる意味を否定してる
歓楽街の暗い路地で二十すぎの知らん人が
細い糸を手繰るように往く道を探している

帰り道は住宅街の排水の川を寄り添う道で
公園の縁にオシロイバナの見慣れた花が咲いている

幼い僕なら種を探しただろう
けど今のぼくは赤い花に見蕩れていた

駅前の噴水の傍で 学生服の若い人が
空の向こうに消えてしまった 大事なものを見上げている

下り電車の人いきれは 両隣の知らん人が
同じリズムで体を揺らす違う言葉の同じメロディ

醜いぼくの恨み言も皮肉も
あの子の誰にも聞こえない鼻歌も

ラララ

駅前の歩道橋の五十前の知らん人が
歓楽街の暗い路地の二十すぎの知らん人が

ラララ

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