シャドールプレイング理論詳説 2022ver.
こんにちは。Nです。
2年ほど前に「シャドールプレイング理論詳説」というnoteを書いたのですが、今回はその2022年ver.を書こうと思います。
というのも、流石に2年も経つと情報が古くなっていたり、あの当時はまだ「影依の偽典」が出たばかりで使い方の説明があまりできていなかったりしていたためです。
また、最近はマスターデュエルの影響でシャドールに触っている人が増えたという事情もありますので、この辺で追記しておこうと思い至りました。
以下、前回のnoteの記載内容をもとに修正・追記しましたので、何かの参考になる情報が1つでもありましたら幸いです。
(全体的に細かく修正していますが、内容が一新しているのは6章以降です)
注意事項
・今回も「シャドール」というギミックを回す上での理論についてですので、特定の構築や展開例などは基本的に出てきません。
・各カードの効果の説明はしていません。
・繰り返しを避けるためにカード名の略称や以下の呼称を用います。
下級シャドール:メインに入るシャドールモンスター
融合シャドール:エクストラに入るシャドールモンスター
NS:通常召喚
SS:特殊召喚
EX:エクストラデッキ
cip効果:召喚・特殊召喚時の効果 (Comes Into Play)
pig効果:墓地に置かれた時の効果 (Put Into Graveyard)
1. シャドールの基礎
シャドールをシャドールたらしめるパワーカードとして、以下の5種類が挙げられます。
① 影依融合
② 神の写し身との接触
③ エルシャドール・ミドラーシュ
④ エルシャドール・ネフィリム
⑤ 影依の偽典
まずはこれらのカードの強みや注意点をよく理解し、使いこなすことがシャドールの基礎となります。
① 影依融合 (シャドール・フュージョン)
デッキ融合の条件を満たせば、これ1枚でNS権を使わずに融合シャドールを展開しつつ、そのcip効果と素材2体分の効果を一度に起動できる破格のパワーカードです。
また、「1ターンに1枚しか発動できない」というテキストであるため、発動を無効にされても2枚目が使えることも強みの1つです。
加えて、融合シャドールのpig効果によりこのカードを回収し、何度も打ち込んでいけることがシャドールというテーマの大きな強みです。
一方で、いくつか注意点もあります。
まず、影依融合は発動無効には強いのですが、「発動」が通ってしまうと2枚目は使えないため、効果のみを無効にする灰流うららが致命傷になりやすいです。
また、発動にチェーンしてデッキ融合の条件が満たされない状態になる(EXからSSされたモンスターが相手の場からいなくなる)と、手札融合の強要あるいは最悪の場合不発になりうることにも注意が必要です。
② 神の写し身との接触 (エルシャドール・フュージョン)
何の制約・コストもなく、通常の融合と同様に手札・場から融合可能な速攻魔法であるこのカードも文句なしのパワーカードです。
その使い方は多岐に渡り、例えば
・セットしておき相手ターン中にcip効果持ちの融合シャドールを出すことで妨害として使う
・バトルフェイズ中に融合し、追撃する
・妨害や除去にチェーンし、所謂サクリファイス・エスケープをする
・雷神龍-サンダー・ドラゴンの破壊効果などのように、直接チェーンしなければ発動できない効果に割り込む
などなど、どれも覚えておいて損はない柔軟な動きを可能にする1枚です。
もちろんシャドールネームなので、融合シャドールのpig効果で使い回せることも強みです。
また、影依融合とは異なり、うららによる妨害を受けません。
こちらも「1ターンに1枚しか発動できない」テキストです。
③ エルシャドール・ミドラーシュ
特殊召喚を1ターンに1回までに制限する強力な制圧効果を持っているにも関わらず、なぜか相手の効果で破壊されない意味不明なパワーカードです。
相手のSSにチェーンして出すことで実質的にSSを封殺することができ、戦闘で処理されなければモンスターを用いた展開をほぼ完封できます。
たとえ戦闘で処理したとしてもpig効果で後続の融合魔法を回収されてしまうため、相手からすると非常に厄介なカードです。
シャドールにおけるミドラーシュの役割はあまりにも多岐に渡るため、詳しい使い方は後述します。
「ミドラーシュをうまく使えるか」が「シャドールをうまく回せるか」に直結していると言っても過言ではありません。
④ エルシャドール・ネフィリム
服役中は「ネフィリム返しておじさん」が大量発生するほどシャドールには欠かせない元禁止のパワーカードです。なぜ今3枚使えるのかが謎です。
簡単に強さを挙げるだけでも以下のような点があります。
・cip効果でデッキ内の全てのシャドールカードに触れるため、シャドールの動きの起点となる
・対SSモンスターとの戦闘ではほぼ無敵であり、シャドールの突破力を担う
・「光属性」である
→光属性には墓地で強力な効果を発揮するカードが多いため、デッキ融合でこれらを落とせるネフィリムは存在自体が強力
(例:妖精伝姫-シラユキ、黄金郷エルドリッチ、閃刀姫-ロゼなど)
・ATKが2800ある
→3回のダイレクトアタックでライフカットできる
注意点としては、破壊効果が強制であるが故に、発動タイミングを選べないことがあります。
雷神龍の破壊耐性を起動してアドを稼ぐためのエサとされてしまったり、ミラーマッチではシェキナーガでネフィリムを攻撃して処理するという方法が取られたりしていました。
⑤ 影依の偽典 (シャドールーク)
墓地リソースを使って相手ターンに融合可能なインチキカードです。
なぜか融合シャドールと同じ属性のモンスターを対象を取らずに墓地に送る効果も持っているため、妨害・除去・リソース確保が1枚で簡潔している超パワーカードです。
また、この手の強い永続カードは除去の的になることが多いですが、このカードはシャドールネームであるため、除外しない限りは融合シャドールのpig効果で何度も回収可能な点も意味不明なほど強いです。
ただし、メインフェイズでしか発動てきないこと、出した融合シャドールは直接攻撃できないためライフカットには貢献しにくいこと、効果発動に除去をチェーンされると融合そのものができなくなることには注意が必要です。
このカードは他のシャドールギミックとは扱いが異なるため、詳細な使い方を別途書くことにします。
2. 融合時の妨害・誘発のケア
シャドールを使う上で最も基本的なプレイングの1つとして、融合時の下級シャドールのpig効果と融合シャドールのcip効果でチェーンを組むことで妨害・誘発をケアする動きがあります。
しかし、チェーンの順番は常に同じでよいわけではなく、自分のリソース・盤面・公開情報などからケアすべき妨害を考え、適切なチェーン順を選ぶ必要があります。
例として、ファルコン素材でネフィリムを融合召喚する場合を考えます。
ケアできる妨害・誘発とチェーン順の組み合わせは以下の通りです。
・幽鬼うさぎをケア
(他に盤面の手数がなく、ネフィリムを失うことが致命的である場合)
チェーン1:ネフィリム、チェーン2:ファルコン
・屋敷わらしをケア
(ファルコンを通さないと後続のリソース確保が難しい場合)
チェーン1:ファルコン、チェーン2:ネフィリム
・灰流うららをケア
(ネフィリムのcip効果でタッチしたいカードがある場合)
チェーン1:ネフィリム、チェーン2:ファルコン
※影依融合が通っている場合、そもそもうららは持っていない可能性が高いですが、接触で融合した場合や公開情報に影依融合以外の融合魔法がある場合はうららの有無が判断できないため、ケアを考える必要があります。
このように、状況に合わせてケアするべき妨害に適したチェーン順を組み、致命的な妨害を避けるという細かいプレイの積み重ねも重要です。
塵も積もれば山となります。
他に使用頻度が高い妨害として、エフェクト・ヴェーラーや無限泡影があります。
これらは効果の発動に直接チェーンする必要がないため、チェーン順ではケアすることができません。
このことから、見えない妨害を警戒する場合、cip効果は妨害を踏みやすいことを覚えておくとよいと思います。
例:リザード素材でネフィリムを融合召喚。相手の手札にうらら、ヴェーラーがある場合
チェーン1:ネフィリム、チェーン2:リザード
→両方の効果が妨害されうる。
チェーン1:リザード、チェーン2:ネフィリム
→ネフィリムだけが妨害を受ける。
今回は下級シャドールと融合シャドールの効果を例としてチェーン順について考えましたが、下級シャドール2枚についても同様の考え方をします。
他にも、先攻でアプカローネを融合召喚する場合、チェーンの最後にアプカローネ自身を対象としてcip効果を使用することで、上記と同様の誘発ケアができることは覚えておいて損がないと思います。
(もちろんアプカローネの戦闘耐性は消えますが)
無効系とは別種の妨害として、原始生命態ニビルや増殖するGがあります。
まず、Gのケアについて考えてみます。
融合素材によりいくつかのパターンがありますが、基本的には融合シャドールSS時の1ドロー+αで止まることができます。
いくつか止まり方の例を挙げました。
① 偽典 or 接触を構えてエンド (素材:リザード、ヘッジホッグを含む)
ネフィリムを融合して偽典 or 接触を墓地に送る
→リザード or ヘッジホッグからビーストをサーチ
→ビーストをセットして偽典 or 接触を回収
とすることで、1ドローのみで相手ターンミドラーシュを構えられます。
② 偽典 or 接触を構えてエンド (素材が弱い)
ネフィリムを融合して偽典 or 接触を墓地に送る
→グラビティ・コントローラーをリンク召喚して偽典 or 接触を回収
とすることで、2ドローで相手ターンミドラーシュを構えられます。
③ 偽典 or 接触を構えてエンド (素材:ウェンディを含む)
ウェンディ効果でヘッジホッグSS + ネフィリム効果で聖選士を墓地に送る
→聖選士の墓地効果でヘッジホッグをリバースする
→偽典 or 接触をサーチ
とすることで、2ドローで相手ターンミドラーシュを構えられます。
④ ミドラーシュを融合してエンド
そもそもミドラーシュが融合召喚できる素材のセットであれば、ミドラーシュを着地させて1ドローのみでターンを返すことも可能です。
ただし、泡1枚で簡単に突破されるため、基本的には偽典か接触を構えることを目指した方が強いです。
次に、ニビルのケアについて考えてみます。
シャドールはリンク召喚を絡めた複雑な動きをしない限り、テーマ内でモンスターを横並びさせることが難しいため、展開の途中でアポロウーサなどの妨害モンスターを出してニビルをケアすることは困難です。
現代遊戯王では烙印や勇者の台頭でニビルを踏むことはほぼなくなりましたが、マスターデュエルではライフカットを狙った展開の途中でニビルを踏む可能性は大いにあるため、以下のような無効以外の方法でケアする必要があります。
① メインフェイズに出すモンスターを4体までに抑える
当たり前のようですが、メインフェイズにモンスターを4体までしか出さなければ隕石は墜落しません。
バトルフェイズ中の接触による融合から打点を追加することでライフカットに届くのであれば、極力そうした方が安全でしょう。
② ミドラーシュを利用する
ミドラーシュ存在下では、自身とトークンで2回のSSが必要なニビルはそもそも発動することができません。
そこで、ミドラーシュを5体目のモンスターとしてSSすることで、ニビルをケアしつつこちらはもう1体モンスターをSSできるため、実質6体までモンスターを展開可能になります。
③ 偽典で妨害を構える (先攻時含む)
偽典を墓地に準備しながら融合シャドールを展開することで、隕石が墜落したとしても融合シャドールのpig効果で偽典を構えることができ、次の相手ターンをミドラーシュでやり過ごすことができます。
シャドールの先攻展開は基本的には偽典を構えることをゴールにしているため、隕石が墜落しても上記と同じ状況になるだけで特に被害はありません。
④ トークンを融合素材にする
隕石が墜落しても光属性のトークンは残るため、融合魔法と素材に余力があればそこからネフィリムを再展開できます。ニビル本体はネフィリムで問題なく処理可能です。
ネフィリムって強いですね。
3. 先攻展開について
2章でも述べましたが、シャドールが基本的に先攻で目指すのは偽典 or 接触を構えてターンを返し、相手ターンのSSにチェーンしてミドラーシュを成立させることです。(+テーマ外出張で置ける妨害)
自分ターンにミドラーシュを成立させた状態でターンを返すのは、泡や壊獣などで簡単に返されてしまうほか、相手に自由なSSを1回許してしまうため明確に弱いと言えます。
逆に言えば、シャドール自体の先攻展開は融合素材を準備しつつ偽典 or 接触を構えれば完了ということになるので、自分ターンの動きとしては簡単な部類に入ると思います。
どちらかと言えば相手ターンのどのタイミングで何を融合するのかの方が重要であることが多いため、以下に注意点を3つほど挙げておきます。
① チェーンに乗らないSSを無理にケアしようとしない
リンク召喚などのSSを何が何でもケアするために、モンスターのNS成功時にミドラーシュを成立させるのはあまり強くない場面が多いです。
(もちろん必要な場面もあります)
1回自由にSSできる権利を相手に与えると、突然何らかの融合魔法などが飛んできてミドラーシュを簡単に処理されてしまい、想定していた制圧能力が発揮できない可能性があります。また、迂闊にメインフェイズに下級シャドールの効果を使ったりすると無駄に三戦の才を踏んでしまい、ミドラーシュを寝取られてリンク素材にされる可能性もあります。
② 必ずしも偽典 > 接触ではない
ツインツイスターやコズミック・サイクロンなど、フリーチェーンで魔法・罠を除去できるカードを持たれていた場合、偽典ではそもそもミドラーシュが成立しません。
また、偽典はメインフェイズにしか発動できないため、烙印開幕や緊急テレポートのようにスタンバイフェイズで展開できるカードを持つデッキには接触の方が有効な場合があります。
相手のデッキタイプに応じて、偽典と接触のどちらの方が有効かを考える必要があります。
③ 必ずしもSSにチェーンしてミドラーシュを立てるのが最善とは限らない
①と③で矛盾することを書いているようですが、これは発動タイミングのことを言っているのではなく、偽典の役割の違いのことを言っています。
確かに相手のSSにチェーンしてミドラーシュを立てれば、それ以降SSされなくなります。
しかし、偽典からミドラーシュを出す行為はリソースが発生していません。
また、ミドラーシュは自分のSSも制限するため、返しのターンでうまくリソースを伸ばしながら展開する手段がなければ、ただミドラーシュを出して1ターン貰っただけになってしまいます。
もちろんそうせざるを得ない場面もありますが、せっかく偽典には「SSした融合モンスターと同じ属性の相手モンスターを墓地に送る」効果があるので、この効果+α (下級シャドールのpig効果やアプカローネのcip効果) で妨害が十分な場合には、ネフィリムやアプカローネを出すことでリソースの確保を狙うことも念頭に置いておいた方がよいでしょう。
4. 後攻の盤面捲りについて
シャドールは一般的に「捲り性能が高いデッキ」だと言われますが、それを支えているのは影依融合です。
デッキ融合が通った場合の圧倒的なパワーは1章に書いた通りで、単純に考えても、
チェーン1:ドラゴン、チェーン2:アプカローネ、チェーン3:ウェンディ
とすれば、影依融合1枚から2500のモンスター+直接チェーン不可の魔法・罠1枚破壊+盤面1枚無効+下級シャドールのリクルートが成立します。
また、影依融合からネフィリムを出すことで、素材とした光属性モンスターの墓地効果やリンク召喚を絡めて容易にワンショットキルが可能です。
このように、通るだけでゲームエンドと言っても過言ではないパワーカードをテーマ内に擁しているため、如何に影依融合のデッキ融合効果を通すかが盤面を捲る上では重要となります。
1章で書いた注意点を考慮すると、後攻でデッキ融合効果を通すためには、
・影依融合の発動回数が相手の妨害回数を上回る状況を作ること
・影依融合を撃つ前に可能な限りうららを踏んでおくこと
・効果解決時にEXからSSされたモンスターがいなくならない状況を作ること
(サクリファイスエスケープ効果を持つカードを予め使わせる・無効にする)といった点が重要です。
暴走魔法陣や烙印融合がよくシャドールと組み合わせられているのは、それらに相手の妨害やうららを踏む能力があるからというのも理由の1つです。
(もちろんこれらは1枚初動であることも大きな理由ですが)
加えて、シャドールを使い慣れている人からすれば当たり前のプレイかもしれませんが、意外と見落とされている以下のようなプレイもあります。
・接触、超融合、シャドール以外の融合ギミックでネフィリムを出し、cip効果で影依融合を墓地に送る→ネフィリムをリンク素材にして影依融合を回収し撃ち込む
・相手の妨害を踏んだ後、モンスター2体で捕食植物ヴェルテ・アナコンダをリンク召喚し、効果で影依融合の効果をコピーする
まとめると、シャドールの後手捲りを支えているのは影依融合ですが、相手の妨害を順番に踏んでいって最後に影依融合を撃ち込む以外にも、展開の途中で落とした影依融合を回収して撃ったり、展開の最後にアナコンダから撃ってリソース差を広げて捲っていくこともできる、ということです。
※追記
2022年4月からアナコンダは禁止になったので、OCGでこの動きはできなくなりました。
5. ミドラーシュの使い方
先述の通り、シャドールにおけるミドラーシュの役割はあまりにも多岐に渡ります。
効果で破壊されないSS封じ能力を持つ制圧モンスターとしての役割のほか、pig効果で融合魔法を使い回したり、デッキ融合時に闇属性モンスターを墓地肥やししたり…と、テキストを読むだけでも色々な役割を持っていることが分かります。
そんなシャドールの要であるミドラーシュですが、「破壊耐性と制圧能力を持つ置物」としての役割以外にも、重要な使い方があります。
1. 相手のバトルフェイズを消費させる
効果破壊耐性持ちのミドラーシュをSS回数1回で除去するのはそう簡単なことではありません。
そのため、ミドラーシュの突破は基本的に戦闘を介したものになります。
遊戯王はルール上、1ターンに1回しかバトルフェイズを行えないので (当たり前)、「ミドラーシュを戦闘で突破される」ということは、「そのターンそれ以上戦闘によるライフカットはされない」ということを意味します。
この特性を活かすと、ミドラーシュを利用して相手のライフカット速度をコントロールすることができます。
また、効果破壊耐性を持っているため、アクセスコード・トーカーによる問答無用の破壊からのワンショットも止めることが可能です。
ライフカット速度をコントロールすることで、「リソースは十分残っていたのにワンショットされて負けた」という状況を減らし、相手をこちらが意図したゲーム速度に引き込むことができます。
このように、相手のバトルフェイズを流すのもミドラーシュの使い方の1つです。
2. 相手ターン中に再構築して制圧能力を押しつける
他のデッキが使う制圧モンスターと比べると、ミドラーシュのステータスは正直低いです。
神光の宣告者は2800、未来龍皇ホープは3000なのに対して、ミドラーシュは2200しかありません。
そんなミドラーシュですが、相手ターンでも簡単に複数回出せるという制圧モンスターとしては珍しい性質を持っています。
例えば、壊獣で除去されてしまった宣告者や、泡で効果を無効にされた未来龍皇を相手ターン中に再度成立させることは非常に困難です。
一方ミドラーシュは、接触・偽典・聖選士などによりフリーチェーンで簡単に成立させることができます。
この性質を活かし、ミドラーシュを成立させる手段を2通り以上用意しておくことで、無理にミドラーシュを戦闘や除去から守らずとも、処理された後の相手の展開に合わせて2体目を成立させることで、強力な制圧能力を押しつけることができます。
繰り返しになりますが、バトルフェイズは1ターンに1回しか行えないので、バトルフェイズを消費した後に出したミドラーシュは非常に処理されにくく、その制圧能力を十分に活かすことができます。
6. 影依の偽典の特徴と使い方
影依の偽典は他のシャドールカードとは少し異なる特徴を持つカードです。
1章で述べたように、このカードは1枚で妨害・除去・リソースが完結しているパワーカードであるとともに、墓地のモンスターを除外することで融合するというこれまでのシャドールにはない効果を持つカードになっています。
他のシャドールギミックは基本的に手札・場・墓地でリソースを回す構造になっており、除外する=リソース管理の外に出す行為です。
一応、エリアルで除外ゾーンを利用できないこともないですが、リバース効果の起動には大きなタイムラグがあり、これをもって「除外ゾーンもリソース内」と主張するのは現実的には厳しいです。
そんな「除外」という行為を伴う効果を持つ影依の偽典ですので、シャドールギミックに対する理解とは別に、影依の偽典自体のメリット・デメリットと注意点も整理しておきます。
(1章と重複する内容はなるべく省略します)
メリット
・先攻展開の明確なゴールになった
シャドールは手札によって目指すゴールが変わることが動きを複雑にしミスを生みやすくしている点でしたが、現在は墓地に融合素材を溜めつつ偽典をセットすることで強力な妨害を構えるというのが目指すべき明確なゴールになりました。
・融合シャドールのpig効果で聖選士や2枚目の融合を回収する余裕ができた
これまでは融合シャドール1体につきpig効果で回収できるカードは1枚であったため、毎ターン融合はできても融合回数を増やすことはできず、出力を出しにくかった点が解消されました。
また、聖選士を回収する余裕ができたため、リソース確保もかなり楽になりました。
・下級シャドールを手札・場にキープする必要がなくなった
これまではあまり活用できていなかった「墓地に落ちた下級シャドール」を素材として融合するため、素材用の下級シャドールを常にキープしておく必要がなくなりました。
すなわち、ネフィリムで必ずしもヘッジホッグやファルコンを落とさなくてもよくなったということであり、動きの幅が大きく広がりました。
デメリットと注意点
・融合魔法なしで融合シャドールを出せてしまう
ネフィリムのcip効果で影依融合を落としておくなど、墓地に融合魔法を準備しておかなければ、融合シャドールのpig効果で回収するものがなく、墓地リソースだけ吹き飛んでリソースが枯れるという事態に陥ります。
・融合可能回数を大きく消費する
効果は毎ターン発動できるものの、何も考えずに毎ターン撃ち続けるとすぐにEXの融合シャドールが枯れてしまいます。
多くの場合、偽典を構えるために1枚、相手ターンの妨害で1枚、自ターンの展開で1枚融合シャドールを消費しているため、EXの融合シャドールの残基を考えておかなければ長期戦ができなくなります。
・ミドラーシュを出したいが…
相手ターンの妨害として最もよくやるのが、偽典からミドラーシュを立てるプレイだと思います。
しかし、偽典からミドラーシュを出す行為はこちらのカードが増えず、相手のカードが減らない行為であることが多く、後続確保ができていません。
また、ミドラーシュで相手の行動を制限する=影依融合のデッキ融合条件が満たされていない状態でターンが返ってくることが多いため、影依融合1枚からリソースを確保できることも少ないです。
そのため、ミドラーシュを出したはいいもののこちらの後続がなければ、一瞬で息切れしてしまいます。
・デッキ内の下級シャドールのリソースも減る
偽典で往復2回の融合をするためには、墓地に素材となるモンスターを4体準備する必要があります。
そこで墓地肥やしを担うのが、多くの場合リザードだと思います。
しかし、リザードは墓地肥やしの性能が高い一方で、デッキ内の下級シャドールのリソースを2倍消費するカードでもあるため、必要以上にリザードを経由しすぎるとデッキ融合したいときにデッキ内の下級シャドールが枯れているという事態に陥ります。
○ 決着までに融合魔法をx回使いたい
○ 直近では偽典をy回使いたい
→リザードをy回経由し、デッキ内にx枚以上の下級シャドールを残しておく
というプレイが必要になります。
(必ずしも偽典の起動回数とリザードの経由回数は一致しません)
・墓穴の指名者のケア
墓地に下級シャドールが1枚しかない状態で偽典を起動する場合、墓穴をチェーンされて下級シャドールを除外されると事件が起こる可能性があることに注意が必要です。
また、墓穴により墓地の同名融合シャドールを除外することで、出てきた融合シャドールのcip効果を無効にされることをケアするために、偽典の効果で出したい融合シャドールを墓地から除外しておくなどのプレイも重要です。
逆に、相手の墓穴に偽典をチェーンすれば墓穴を避けることも可能です。
7. リソース管理について
シャドールはリソースの鬼のように思われることも多いですが、竜輝巧やエルドリッチのように墓地が手札ということはなく、手札と場が全て吹き飛べば基本的にリカバリーは困難です。
また、サンダードラゴンの雷龍融合のようにデッキのリソースを回復するカードもないため、考えなしに融合を連打すると簡単にリソースが枯れてしまいます。
盤面のリソースを回す手段として、聖選士とネフィリムで無限リソースを組むことは可能ではありますが、罠が絡むため自ターンでの能動的なアクションが難しく、墓穴1枚でサイクルが崩壊することから、リソースを一任できるほどのギミックではありません。
そのため、シャドールはデッキ・EXのリソースの総量を管理しながら、それを少しずつ切り崩して戦っていくことになります。
2020年に書いたnoteではこの部分が正直分かりにくかったので、シャドールのリソースを適切に回す上で重要なことを箇条書き形式でもう少し噛み砕いて書いてみました。
① 自分のデッキで可能な総融合回数を把握する
② 各融合モンスターや下級シャドールの効果で生み出せるリソース量と処理できる相手のカードの量を理解する
③ 1つのプレイでリソースの総量のどの程度を消費し、その結果どれぐらいのアドバンテージを得られるか、相手の盤面・リソースを削れるか、ライフカットできるかのバランスを考えながらプレイする
もっと簡単に言えば、「無駄遣いをしない」「出し惜しみをしない」プレイを意識することで、シャドールのリソースを最適に回すことができます。
8. ゲームメイクについて
さて、シャドールを使う上でのゲームメイクについての話です。
うまく伝わらない文章になってしまっていたらすみません。
シャドールを使っていて最も難しいと感じるのが、「どうやって勝つかを考えること」です。
シャドールは1枚1枚の使い方の幅が広く対応力が非常に高い一方で、除去や展開力に優れたテーマではありません。
なので、例えば「ここまでで妨害を踏んで除去を終え、あとはヴァレルソード+モンスターでワンショット」や「アップデートジャマーを食わせたアクセスコードで盤面を取りながらワンショット」といった明確な勝利パターンがないということになります。
そのため、
・相手がどんな盤面で、自分がどんな手札であればワンショット圏内なのか
・ワンショットできない場合、相手に対してどのような制圧をかければ勝勢になるのか
・制圧をかけるのが難しい場合でも、どの程度のリソース差を作り、どういう状況に相手を追いやれば勝勢になるのか
を理解し、相手に合わせて最適なゲームプランを選択することが必要です。
そこで、相手のデッキは何か、初手5枚は何かという情報を基に、
① リスク覚悟で相手の隙をついてワンショットを狙う速いゲームプラン
② 融合シャドールを横に広げていき、アド差で相手を詰ませる中速のゲームプラン
③ 半無限リソースを構えて、相手のリソースをエリアル等で削ることで相手のリソースを枯渇させる低速のゲームプラン
④ ミドラーシュを立てる手段を複数準備し、制圧効果を押しつける制圧型のゲームプラン
といった取り得るプランを考え、相手のデッキに対してどれが最も勝率が高くなるかを最初に検討する必要があります。
このゲームメイクを間違えると、例えば、
「速いゲームを想定して動いたのに遅いゲームになった結果、リソースが枯れて負けた」
「遅いゲームを想定して無限リソースを構えにいったら、妨害が不十分でワンショットが通ってしまった」
などの事件が起こり、不本意な負け方をしてしまいます。
また、シャドールというデッキはその性質上、プラン毎にデッキ内の別のカードを使うのではなく、同じカードをプラン毎に異なった使い方で使うため、ゲームの途中でのプラン変更が困難です。
例えば以下のように、同じカードでもプラン毎に使い方が異なります。
・シャドール・ファルコン
「速いゲーム:2回素材になる下級シャドール」
「中速以下のゲーム:リソース」
・エルシャドール・アプカローネ
「中速以上のゲーム:捲りとサーチ要員。偽典の素材で除外してもよい」
「低速のゲーム:繰り返し蘇生し、無効と下級シャドールの効果を使い回す」
・影光の聖選士
「速いゲーム:ワンショットのために墓地効果を展開用に使う」
「中速以下のゲーム:回収可能な蘇生札という無限リソースとして使う」
そのため、シャドールで適切なゲームメイクをするためには、
① 自分の構築で取り得るプランを把握する
② 各プランにおける下級・融合シャドールの役割を理解する
③ 各相手に対して、どのプランを取ると勝率が高いのかを整理する
これらのポイントが重要になります。
このあたりは一朝一夕にはいかず経験から身につく部分も多いので、やはり相応の練習は必要かなと思います。
9. 各対面への有利不利 (おまけ)
最後におまけとして、2022年3月現在のOCGおよびマスターデュエルの各環境デッキに対する有利不利を簡単に書いておきます。
本当は細かく注意すべきプレイなどを書いた方がよいのですが、
OCGでは
先攻:勇者きつい。烙印融合からミラジェイド+偽典かミドラーシュ+偽典までいけば大体勝ち。
後攻:影依融合通せば勝ち。通らず烙印融合もなければ基本的に負け。
マスターデュエルでは
先攻:偽典構えて勝ち。
後攻:誘発で止めて融合して偽典構えれば勝ち。誘発なくても影依融合通れば勝ち。どちらもなければ負け。
みたいな記述ばかりになりそうだったので割愛しました。
OCG環境 (2022年3月 抜けも多いと思います)
OCG環境の有利不利はサイドチェンジ込みで記載しています。
・勇者デスピア 4:6 微不利, ミラジェイドが影依融合を透かしてくる点に注意。
・天威勇者 6:4 微有利, 先攻取れば勝てる。サイド後でなければ後手は基本的に無理。
・LL鉄獣戦線 7:3 有利, シュライグが要のカードに直撃するようなプレイを避ければ負けない。結界像は無理なことが多く、LL鉄獣だと6:4ぐらい。
・幻影騎士団 7:3 有利, 先攻取れば勝てる。
・竜輝巧 7:3 有利, 先攻取れば勝てる。サイド後でなければ後手は厳しい。
・プランキッズ 8:2 有利, 基本的には負けない。
・punkセリオンズ 2:8 不利, 相手の練度に大きく依存するが、シャドールをよく知っていれば勝つのは難しい。
・ふわんだりぃず 0.5:9.5 ガン不利, 無理。烙印融合ないとお話にすらならない。焼き鳥にしてやろうか。
マスターデュエル環境 (2022年3月, Season3)
・電脳 5:5 互角, 青龍が厳しいがVFDが直ちに負けにならないので互角ぐらい。当然先攻有利。
・エルドリッチ 6:4 微有利, 偽典や超融合でネフィリムを出せる点が非常に楽。エリアルで執拗にエルドリッチを除外していれば勝てる。
・鉄獣戦線 7:3 有利, 基本的には先攻有利なものの、純鉄獣であれば後攻でも有利がつく。LL鉄獣は結界像が厳しく5:5でコイントスゲー。
・竜輝巧 5:5 互角, コイントスに勝ちましょう。
・幻影騎士団 5:5 互角, コイントスに勝ちましょう。
・プランキッズ 8:2 有利, 基本的には負けない。
・閃刀姫 8:2 有利, チューナーを使わないためワンショットされにくく、影依融合も通りまくるのでほぼ負けない。稀に誘発乱打で融合できなくなることがあるが、負け筋はそれぐらい。
・ドラゴンメイド 6:4 微有利, 比較的簡単にミドラーシュが突破され、影依融合も透かされる可能性がある一方で、相手の妨害もこちらの致命傷にはならないのでほぼイーブン。
・ヌメロン 9:1 ガン有利, ヌメロンを警戒した展開をしておけば、基本的には負けない。リミッター解除が嚙み合うと瞬殺される。
・サイバー 6:4 微有利, 先攻をくれるので有利ではあるものの、少しでも事故るとワンショットされる上にアナコンダとリミッター解除でいつでも死ねるので見た目ほど有利ではない。
・ミラー 5:5~10:0, 相手の練度次第。うまい方が勝つ。
・真竜 0.5:9.5 ガン不利, 羽根帚ないと負け。
さいごに
大変な長文を読んでいただきありがとうございました。
長々と書きましたが、シャドールの敗因のトップは「融合できないこと」です。
(シャドールを使っている人であれば皆さん分かると思います)
「融合魔法がない」「素材がない」のどちらの場合もあり、これはプレイを工夫しようがどうにもならないため、まずはなるべくそうした状況が起こらない構築を練るべきだと思います。
その上で、ここに書いてあることが何か1つでもご参考になれば幸いです。
また新しく書きたいことができたら順次追記します。
おわり
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